丸山知事の言うのはどこからどう見ても正論だが、こういう「言われてみれば当然」の話が、マスコミにはほとんど出て来ないし、政府主催の「有識者会議」では十年一日のごとく的外れの大馬鹿コメント(意図的誤誘導コメント)が垂れ流され、それがまたマスコミに載って国民を洗脳するわけである。つまり、こうした会議は政府の責任逃れの手段であるわけだ。
(以下引用)
財界人や学者らの有志で作る「人口戦略会議」(議長、三村明夫・日本製鉄名誉会長)が、全国の744市町村を「消滅可能性自治体」と位置づけて話題になっている。
国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が公表した「日本の地域別将来推計人口」をもとに、2020年から2050年までの30年間で、出産適齢期の20~30代の女性が50%以上減少する自治体を「消滅可能性自治体」と分類したのだ。同会議の副議長、増田寛也・日本郵政社長(元岩手県知事、元総務大臣)は10年前の2014年、座長を務めた有志グループ「日本創成会議」でも同様の分類を行い、896市区町村を「消滅可能性都市」と発表した。
こうした動きを現場の知事はどう見たのか。人口戦略会議の発表(2024年4月24日)後、その週のうちに定例記者会見があった都道府県から知事発言の内容を拾った。
最も激しい反応を示したのは、島根県の丸山達也知事だろう。
「メディアの皆さん含めて学習能力がちょっと足りない」
「根本的なアプローチの違和感というか問題は、市町村ということで捉えると何個消滅するとかショッキングな話になりますけど、都道府県単位では東京以外は全部人口が減るわけでしょう。つまり、国の問題だということです。日本全体の問題を自治体の問題であるかのようにすり替えて言われているのは根本的に間違っている」などと、発表内容そのものをバッサリ斬り捨てた。
そして、メディアの報道の仕方についても「消滅可能性自治体がこんなにあったら、国が滅びるということとして捉えなきゃいけないのに、相変わらず消滅可能性自治体とかいって、首長の話を聞くなんて愚かなことを繰りかえしているところが、すいません、メディアの皆さんも含めて学習能力がちょっと十分じゃないんじゃないかと思います」と苦言を呈した。
熱い主張で知られる丸山節は止まらない。
「出生率が高いところもあるけど、総じてどこも下がっていて、我が国の傾向なわけですよ。そうすると国の政策とか、日本社会全体の問題を解決しないといけないのに、自治体ごとに取り組まないといけない課題であるかのように、誤った世論誘導をしているところが問題」
「大きな会社の社長さんとか会長さんとかが(人口戦略会議に)お集まりであれば、日頃パーティーで会ってる時に茶飲み話みたいなことをするのではなくて、政府や国政に携わる方々に対して、きちんと問題提起をされた方がいいんじゃないかと、私は思います」
会見では舌鋒鋭く指摘が続いた。
今回、消滅可能性自治体とされた島根県内の自治体は4。10年前の発表からだと12も減った。そのことは人口戦略会議が発表したレポートでも特筆された。
それでも4自治体が「抜け出せない」ことについて記者が質問しようとすると、さえぎって熱弁が始まる。
「だから私が言っているように、市町村単位に置き換えること自体がナンセンスだと思いますよ。市町村の努力が足りないからと押しつけていますけど、じゃあ東京都がすごい頑張っているから人口増えているの? そんなことないでしょう。合計特殊出生率(1人の女性がおおむね生涯で出産する子の数)は都道府県で最低だよ(1.04)。よそから人を吸引できる恵まれたポジションに社会構造上あるから、そうなっている」
丸山知事の指摘は止まらない。
「自治体に転嫁していくレベルの問題ではない」
「分かりやすいのは東京一極集中だけど、私からすると三大都市圏とそれ以外の地域との格差構造を是正しなければ、こんなの(人口減少)どんどん進むに決まっていますよ。一生懸命に出生率を上げて子育て環境を整備したとしても、大学・専門学校への進学、就職という段階で、子供さん達が地方に残れない構造です。
それは市町村単位でも、県単位の問題でもなくて、どちらかというと三大都市圏とか、東京に人が集中していくという構造を放置している日本全体の政策、これは経済界も含めてですよ、日本社会のありようが引き起こしている現象だと捉えるべきでしょう。消滅可能性自治体がどうだこうだというふうに自治体に転嫁していくレベルの問題じゃないということであります」
都市部への人口集中は、企業の集中が原因の一つだと見られており、矛先は経済人へも向かう。
「なぜ東京にでかい本社を構えないといけないのか。アメリカのように(分散立地)できないのか。それは分かりませんよ。銀座で酒を飲むのが楽しみだから、銀座から離れたくないとか。(大阪の)キタの方がいいからとか。ススキノじゃだめだからとか。博多じゃだめだとか。そんなことなのかどうか分かりませんけども、少なくとも、大きな経済主体が最適だと思っている選択の積み重ねが、日本社会としては最悪の事態を招いている。
なぜならば、国の成り立ちは領土と主権と国民の三つ。そのうちの国民がいなくなってしまうかもしれないという意味での、日本という社会のサスティナビリティ、持続可能性が問われているのが人口減少問題の本質です。日本という国がなくなってしまうかもしれませんよという話なわけでしょう。その問題に対して、市町村に○×をつけて物事を見るというのは、正しい見方じゃないと申し上げている。市町村長だけじゃ何ともしようがない話で、島根県知事でも何ともしようがない。東京都知事だけが頑張っても、東京都の出生率は上がらないでしょう。もうちょっと大仕切りで直さなきゃいけないと私は思います」
島根県の出生率は47都道府県の中で4番目。その理由は…
島根県の合計特殊出生率は2022年の最新データで1.57。47都道府県では高い方から4番目だった。
なぜなのか。丸山知事は「私見」と断ったうえで、三世代の同居や近居が多いことがプラスに働いているとの見方を披露した。
だが、安心してはいられない。
「子育てがしやすい、近親者の助けを得やすい、というのが大都市との違いだと思われてきましたけど、実際には高齢者雇用が進んでいますので、おじいちゃん、おばあちゃんが年金受給世代になったからといって、家にいてくれるわけじゃない。保育や学童保育を充実していかないと、アドバンテージ(有利であること)がどんどん薄まるのは明らかなので、市町村と一緒に公的サービスの充実に取り組んできました」と語る。
それでも人口が減っている現状に変わりはない。
「社会が維持できるか分かりません。バスが減便になる。学校がどんどん統合されていく。部活動の種類が制限されていく。いろんな弊害がでているので、消滅可能性自治体に指摘されたところと、されていないところを分けて考えても、本質的な議論ではありません。(人口戦略会議の)経済人の皆さんも、10年前の試算の時とあまり前頭葉の思考構造が変わっておらず、相変わらずですなという感じなので、そこを変えなきゃいけない」などと、独自の論理で危機を訴えた。
〈 「東京は人を吸い込むブラックホール」人口の一極集中に対して全国の知事が抱いている“複雑な心境” 〉へ続く
(葉上 太郎)
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