徽宗皇帝のブログ

私が、世界史上の「政治の最高の実現」の一つと考えているのが、GHQによる日本改革である。これは、軍国主義の旧日本を解体し、民主平和国家に改造しようという「歴史的実験」であった。と同時に、もちろん、「アメリカにとって都合のいい国」にしようという意図もあったことはあっただろう。現在は、後者の「アメリカの悪意」を強調する視点の論者が多く、前者の「善意による日本改造」を言う論者は滅多にいないようだが、私は、その両者が存在した、と見る者である。その前者の例が「日本国憲法」である。これによって日本は民主平和国家として新たに誕生した、と思う。
新憲法策定以前に、「戦争責任者処分」という大問題がGHQにはあった。特に、昭和天皇の処分（処遇）が一番の難題だった。最大の戦争責任者として昭和天皇を死刑にする、というのがおそらく米国政界の意思と米国一般国民感情に合致した、一番簡単な方法だっただろう。
だが、マッカーサーはそうしなかった。天皇の日本国民への影響力を利用することを選んだのである。これは、簡単にそういう決断ができたはずはない。ほとんどすべての米国民感情に反する決断であり、米国民の感情に媚びる米政界に「ノー」と言う行為だったからである。マッカーサーの「英断」によって昭和天皇と日本の皇室は救われた。（後述するように、「日本」自体も。）
なぜ「英断」と私は言うのか。おそらく、天皇という「中心（あるいは重心）」を失った日本は史上空前のアモラル（無道徳）な国となり、敗戦のニヒリズムによって、暴力と破壊が吹き荒れ、現在のイラクやリビアのごとき状況になっていただろうからだ。私は社会主義者だが、共産主義者ではない。当時の世界の状況から見て、天皇を処刑した場合の日本では共産主義革命が起こっていた可能性は高い。そして、米軍による革命軍弾圧（鎮圧）によって日本は今のシリアのようになっていただろう。
もちろん、そのような「急激な滅亡」の代わりに、７０年かけて日本はゆっくりと腐敗し、滅亡しつつあり、それは「敗戦処理」の誤り、「天皇免責」のためだ、という論者もいるだろう。だが、少なくとも日本は７０年の平和と繁栄を得た。それは小さいことだろうか。
このあたりのいきさつが見事に描かれた映画がある。「終戦のエンペラー（原題『emperor』）」である。おそらく、脚本のほとんどは（主人公の恋愛部分を除いて）公式記録に則って書かれていると思う。真摯な映画である。（天皇に関する「陰謀論者」から見れば、不満も多いだろうが。）日本の戦後の出発点であるGHQの「終戦処理」に興味のある人は一見の価値のある映画だ。


（以下引用）



2015年12月25日18:13