非常に面白い記事である。川口マーン恵美という作家(?)の名前は前から知っていたが、どうせ欧米人と結婚して精神まで欧米化した売国奴だろう、と思って、一度もその文章を読まなかった。べつに、「マーン」だから嫌いなわけではない。(笑)私は女性を「マーン」と言って蔑視する2ちゃんねる人種は反吐が出るほど大嫌いである。
駄弁はさておき、この記事でアイスランドとギリシャの違いを読み、その二つを比較しながら考えることで、政治にとって何よりも大事なのは実は社会福祉政策である、という前々からの私の主張の正しさが確認できたようだ。
社会福祉とは、端的に言えば、恵まれた人々から少し金を譲ってもらい、恵まれない人々を死や病気や貧困から救うということだ。こういう、人間として当然の「惻隠の情」に基づく政策に反対する人間が存在すること自体が私には信じがたい気がするのだが、アメリカの共和党などはこうした社会福祉政策を「共産主義だ」と言って全否定するのである。私から見れば、彼らこそが拝金主義の豚でありエゴイストであり、弱肉強食の獣の思想を持った悪魔である。
まあ、何はともあれ、アイスランドがなぜ経済危機から脱したかを知れば、ギリシャも同じ道を歩むことは可能であることも分かる。IMFなどからの借金は踏み倒せばいい、という私の暴論も、アイスランドは実行したようだ。(笑)当然のことである。借金したのは国民ではなく、過去の政府や政商的金融業者なのだから、国民がそれを負担して苦しむいわれはない。
(以下引用)
『経済政策で人は死ぬか?』最新研究が示す不況下の緊縮財政という鬼門 早期に金融危機を脱したアイスランドと瀕死のギリシャの
http://www.asyura2.com/15/hasan93/msg/816.html
2015年02月25日(Wed) 川口マーン 惠美
面白い本を読んだ。一言でいうなら、“不況下で緊縮経済を敷くと、国民の健康に何が起こるか?”がテーマだ。「不況下で緊縮財政」という事態は、ギリシャで現在進行形で起こっていることでもある。
この本の著者、デヴィッド・スタックラーとサンジェイ・バス(前者は公衆衛生学と政治社会学、後者は医学の学者)は、経済危機と国民の健康状態との関係に興味を持った。そして、過去の厖大なデータや報告書を分析した結果、経済政策はどんな薬よりも、手術よりも、個々の医療保険よりも、国民の健康に影響を与えるという結論に達した。
不況下で国民が健康になった国、死者が増えた国
『経済政策で人は死ぬか? 公衆衛生学から見た不況対策』(デヴィッド・スタックラー&サンジェイ・バス著)
同著は、それらの論文を一般の人にも分かるように書き下ろしたものだ。しかし、素人向きとはいえ、中身は十分科学的で、しかもショッキングで、これを読むと、ギリシャの人々が過酷な緊縮財政に抗議して立ち上がった理由もよく分かる。
一般的には、不況はうつ病や、自殺や、アルコール依存や、感染症などを引き起こすと考えられている。しかし実際には、ひどい不況でも、国民の健康状態や死亡数に変化のない国もある。
それどころか、そういう国では、お金がないのでお酒や煙草が買えないことが幸いして、アルコールやニコチン由来の疾患が減ったり、あるいは、車を売って歩くようになったため、国民がより健康になったりということさえ起こっている。
この差は、ひとえに経済政策の違いからくるという。国民の健康状態の良し悪しには、いろいろな要素が関わっているが、この2人の学者が発見した確かなことが一つある。それは、経済危機にも関わらず、国民の健康状態が悪化せず、自殺も増えなかった国というのは、福祉厚生という貧者へのセーフティーネットを死守した国なのだ。
その反対に、厳しい緊縮財政を敷いて、銀行は救うが、貧者へのセーフティーネットは取り払うという政治的選択をした国では、ただでさえ不況でダメージを受けている国民は大変悲惨な目に合う。
経済政策と国民の生死は、私たちが思っているよりもずっと密接にかかわっているらしい。
同著はまず第1章として、1930年のニューディール政策を採り上げている。アメリカのウォール街から発した大恐慌は、アメリカを不況のどん底に突き落とし、4人に1人が失業者となった。労働者は失業、貧困、飢えに苦しみ、デモが続発、社会は混乱した。
そんな中、32年、ニューディール政策を公約としたルーズベルト大統領が当選し、大々的な建設事業が始まった。また、様々な福祉も実行され、ローンを返せなくなっていた人も救済された。
こうして、最低限の医療と食料と住居が保証され、低所得者も予防接種が受けられるようになったことで、大人の死亡率だけでなく、小児死亡率も低下した。そして33年より、自殺率も下降に転じたのである。大恐慌のときのアメリカ人は、以前よりも健康になった。
そして、ここが重要なのだが、公衆衛生への投資は、国民の命を救い、生活の質を向上させるだけでなく、経済にもプラスに働く。見返りは投資額を上回るもので、費用対効果が優れている健全な投資と、著者は言い切る。
第2章はソ連崩壊後のロシアの話だ。死亡率が急激に上昇した。それも半端な上昇率ではない。死亡は生産年齢(15歳から64歳)に集中し、ロシア人男性の平均寿命は、1991年(ソ連崩壊)年から94年の3年間で、64歳から58歳に縮んだ。
戦争も飢餓もなかったが、社会主義経済から市場経済への移行の中、経済の大混乱と相まって、社会福祉システムが崩壊した。その付けを、多くの国民が命で償ったともいえる。
金融危機を4年で乗り越えたアイスランドは何をしたか
第3章はアジア通貨危機について、第4章はアイスランドだ。2008年、アメリカのリーマン・ショックで、アイスランド経済は完全に崩壊した。海外からの巨額の投資による、実体のない高リスクの好景気で、その前年、アイスランドは世界で5番目に豊かな国だったという。
しかし、一度バブルがはじけると、破綻は早かった。にっちもさっちもいかなくなったアイスランド政府は、IMFに助けを求めた。するとIMFはいつも通り、融資の条件として厳しい財政緊縮を求めた。一般国民が犠牲になる経済政策である。
しかし、莫大な富を操っていたのは一般国民ではなく、一握りの金融界、実業界の人たちだった。一部の金持ちが手を染めたギャンブルまがいの投資は、果たして国民が責任を負うべきものなのか。
アイスランド、外国人預金者保護を否決 英・蘭は反発
破たん銀行の外国人預金者を公的資金で救済する法案を否決した国民投票結果に喜ぶアイスランドの人々(2011年4月10日撮影)〔AFPBB News〕
国民は抵抗し、デモをした。抗議の声が大きな流れを生み、政権の交代が起こった。中道左派の新政権は、金融機関の尻拭いに公的資金を投入するかどうか、国民投票に問うた。
その結果、93%がノーと答えた。さらにアイスランドの国民は、IMFの緊縮策も退けた。そして、その後、新政府は、国民の健康と福祉だけは死守する政策を採ったのであった。
アイスランドは、その後の国民投票で、民間銀行の抱えた負債の公的資金での返済も拒否した。政府は銀行より国民を優先し、金融崩壊の原因を作った銀行幹部を逮捕した。
その結果、この国は、最悪の金融危機に直面したにもかかわらず、貧困世帯の数は増えることなく、しかも、2012年には、経済が3%の伸びを示した。国民自身のイニシアチブが、国を救ったと言える。
緊縮財政で医療崩壊、エイズ感染者も激増したギリシャ
さて、その正反対の道を進んでいるのが、第5章のギリシャだ。ここでは、私たちが思っているより、ずっと悲惨で理不尽なことが進んでいるようだ。
ギリシャが凋落に向かった状況は、アイスランドのそれと似ている。外国資本が流れ込み、銀行が危うい投資でギャンブルまがいのことをしていた。ごく一握りの人間が国の資産を操って、金もうけをした。そして、破産の瀬戸際でIMF、EU、そして欧州中央銀行が入った。
ギリシャの国民も、初めはデモをした。そして、国民投票を求めた。しかし、IMFはそれをさせなかった。ギリシャ政府は、腐敗で有名でもあった。国民の味方になる政治家はいなかった。
過酷な緊縮政策は国民の生活を破壊し、失業者が増え、ホームレスが増え、自殺者が増えた。医療費は40%削減され、国民は医療を受けられなくなった。しかし、製薬会社は病院や医者に多額の賄賂を贈り、医療制度の崩壊にも関わらず、利益を出した。
今、ギリシャには、「国境なき医師団」が入っている。途上国ではない。EUの加盟国、ギリシャの話である。
ギリシャについての記述で一番インパクトがあったのは、エイズの話だ。2011年、ギリシャではエイズ感染者が前年同時期より52%も増えた。エイズはヨーロッパでは頭打ちになっている。WHO(世界保健機構)が各国と実施していた「注射針交換プログラム」が機能していたからだ。
ところが突然ギリシャで感染が増えたのは、予算不足のためこのプログラムを維持できなくなったからだった。麻薬常習者が注射針を使い回し、感染者が急増したと思われる。
そこで何が起こったかと言うと、政府は、売春婦のエイズテストを本人の同意なしに行えるように、急遽、法律を変えた。そして、強制的に検査し、陽性とわかった29人の売春婦の写真を公開し、「不衛生な爆弾」、「人々に死をもたらす罠」と血祭りに上げた。
ただ、病院が閉鎖され、薬が無くなったギリシャで増えたのはエイズだけでなく、感染症一般だ。2008年から3年間で幼児死亡率が40%、治療を受けられなかったための死亡が47パーセントも上がった。
そして、これらの原因は、移民になすり付けられた。彼らが社会福祉詐欺を行っているために、医療制度が壊れてしまったのだと、政府は説明した。
ギリシャ国民の一縷の望みを託された新政権の行方は・・・?
ギリシャで数万人が反緊縮デモ、債務交渉前日
ギリシャ・アテネの議会前で行われた反緊縮デモで、ドイツのショイブレ財務相の面をかぶり「緊縮」と記された注射器の模型を手に参加した人〔AFPBB News〕
それでも、IMFは緊縮財政の手を緩めなかった。IMFとEUはギリシャに莫大な資金を投入し続けた。
しかし、ギリシャ経済は一向に回復しない。それもそのはず、注ぎ込まれた資金は、ギリシャを経由して、イギリス、フランス、アメリカ、ドイツの債権者たちに戻っていくからだ。
つまり、ギリシャとEUとIMFは、ギリシャバブルを作った銀行を救済した。そこが、アイスランドとの大きな違いで、それは、ギリシャ国民にとっては、文字通り、致命的な違いとなった。
ここまで読めば、続きは勝手に見えてくる。なぜ、左翼のチプラス政権ができたかということだ。国民投票という手段を奪われた国民は、総選挙で意思を表明したのだ。新政権が債務の全額は返済できないと言った途端、IMFもEUも態度を硬化させているが、アイスランドも返済しなかった。
新しい政権の財務大臣は、「私たちは新前の政府だ。しかし、少なくとも腐敗政権ではない」と言う。国民は、まさにそこに望みを託したのだと思う。ギリシャの金融問題を、ここ4年間フォローしてきたが、同著を読んで、今までわからなかったことが、少し理解できた気がする。
しかし、破産寸前のギリシャにとって現実は厳しい。20日、ユーロ加盟国の第4回目の財相会議において、18対1で圧倒的劣勢に立っていたギリシャ新政府は、ついにねじ伏せられた。新政府は、前政府の約束した緊縮政策の70%を拒否していたものの、結局、100%実行するという約束なしには、びた一文お金は出ないことが確実になったからだ。
意地と根性だけではどうにもならない。お金がないということは、惨めなことである。ギリシャの命は、これで4カ月伸びたが、チプラス首相とヴァロファキス財相の表情には悲壮さが漂っている。
21世紀、私たちは歴史の真っただ中にいる。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42964
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