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徽宗皇帝のブログ

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オスマン帝国の見直し(帝国と「帝国主義」の区別)
ロジャー・パルバースと四方田犬彦の対談『こんにちは、ユダヤ人です』の中で、四方田犬彦が非常に面白い事を言っている。私自身、帝国の分裂や解体は「いいこと」だと思っていたのだが、彼のこの発言には虚を突かれた。
たとえば、映画『アラビアのロレンス』を見ると、我々は自然に自分の身を主人公の英国スパイ(と言うか、アラブとの交渉役)ロレンスの立場に置き、オスマントルコを悪の帝国だと思うようになる。そういう意味では、この映画もアングロサクソンのプロパガンダ映画ではある。その、オスマン帝国への偏見に四方田氏の言葉は気付かせてくれた。
バルカン半島におけるオスマン帝国の領土喪失がバルカン半島の小国家分立と民族紛争を産み、大セルビア主義の青年による、セルビアの新宗主国オーストリアハンガリー帝国皇太子の暗殺事件を産み、それが第一次世界大戦を産み、さらにオスマン帝国の解体が第二次世界大戦の一因(欧米の戦争目的のひとつ)となり、さらに現在の「テロとの戦争」の舞台がオスマン帝国の跡である、という事実は非常に面白い。
まあ、要するに、帝国と帝国主義を我々は混同し、そのすべてを悪だとしていないか、ということだ。帝国であるから悪なのではなく、多民族が融和的に生きている帝国のメリット面も見直す必要がある、というのは、オスマン帝国解体後、そしてソ連解体後の状況の悲惨さを見れば頷けるだろう。とにかく、「分家」するやいなや、他の分家と戦争を始めるのがほとんど必然であるのは奇妙なほどである。



(以下引用)

四方田「昔はエンパイアといえば帝国主義だから、絶対にそれぞれの民族が独立するのが正しいと思っていましたが、中東のことを考えると、今世界中の多くの問題がここから始まっている。イスラエル、パレスチナ、コソヴォ、ユーゴスラビア、チェチェン、グルジア、イラク、アフガニスタン。ほとんどすべてオットマン帝国(徽宗注:オスマン帝国、オスマントルコ)ですね。オットマン帝国のときは何も起きなかったんです。」
パルバース「オーストリアハンガリー帝国もそうです」
四方田「大きな帝国で多民族でやっているからいいかげんでよかった。『宗教は好きなようにしなさい』と。ところがヨーロッパで民族=国家というネーションステートという考えが流行し出すと、オットマン帝国が1918年くらいに手足を切り離されて、そこからいろいろな厄難が起きた」
パルバース「それでウクライナも独立した。モルドバもそうです」
四方田「独立することは、ある意味では民族のためにはいいと言うけど、その後に必ず起きるのが独裁政治です」




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