「イタリアが最も助けを必要としていた(感染拡大の)初期段階で、我々は支援できなかった。全欧州を代表して心から謝罪する」。4月16日、欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、欧州議会の総会で異例の謝罪を述べた。
わずか3カ月ほど前、この場所では、英国の欧州連合(EU)離脱に際して議員たちが肩を抱き合い、涙を流しながら「蛍の光」を合唱していた。それが一転、新型コロナ対策のため出席する議員もまばらで、閑散としていた。
イタリアは2月から新型コロナウイルスの感染が急拡大し、患者が病院の受け入れ能力を超えるような「医療崩壊」が起き、死亡者が急増する危機的な状況に追い込まれた。同国はEUに医療防護具などの支援を求めたが、「EUのどの国も応じなかった」とイタリア出身のマッサーリEU大使は言った。フォンデアライエン委員長は全面的に非を認め、公の場でイタリアに謝罪した。
当時はEU各国でも感染が広がり始め、イタリアを支援する余裕がなかったのは確かだ。ドイツやフランスはマスクなど医療防護具の禁輸措置を取るなど、自国民の保護を最優先していた。
実際、スウェーデンのヘルスケア会社、メンリッケがフランス経由でイタリアとスペインの医療従事者にマスクの供給をしようとしたところ、フランス政府から輸出を禁じられ、マスクを押収されたという。同社はフランス政府を非難している。その後、問題は解決したが、フランスとスイスの間でも同様の問題があった。(関連記事:欧米のマスク評価が新型コロナで急上昇、WHOは布マスクも否定せず)
欧州委員会はEU各国に禁輸を撤回させ、マスクや呼吸器などの共同備蓄制度も発表したが、イタリアなどに支援が行き渡るまでに時間がかかった。3月に実施されたイタリアの世論調査では88%が「EUの支援が不十分だった」と答えており、こうしたイタリアの反応を各国も見ている。フォンデアライエン委員長は結束の重要性を訴えるものの、失った信頼を取り戻すのは簡単ではない。
欧州各国は今、感染拡大のピークが過ぎ、第2波を警戒しつつもロックダウン(都市封鎖)の解除に動き出している。そして焦点は経済の復興に移りつつある。欧州委員会は結束を強めるために前例のない経済支援を模索するが、ここでもEUの分断があらわになっている。
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