『<税金逃れ>の衝撃』において、富める者ほど税金を払わない
矛盾を指摘しています。「パナマ文書」により露見しつつあります
2016年4月20日 水曜日
◆パナマ文書は、大英帝国「最後の敗戦」である 「英王室領=タックスヘイブン」の重い意味 4月20日 山田俊浩 東洋経済オンライン
――『<税金逃れ>の衝撃』において、富める者ほど税金を払わない矛盾を指摘しています。この不平等の構図が、世界の政治リーダーの間で広がっていることが、「パナマ文書」により露見しつつあります。
率直に言って、今回のリークには、かなり驚いた。出てはいけないものが出てしまった、というのが率直な感想だ。1970年代から2016年初めまでに作成した合計2.6テラバイトもの膨大な文書が流出したということは、すべての取引明細が流出したと考えていい。しかも、今回流出した法律事務所「モサック・フォンセカ」は、この種の事務所としては第4位の規模。1~3位の事務所からも流出したら、さらに驚くべきことがわかるだろう。
今回、何が明らかになったのかといえば、税率の低い地域(=タックスヘイブン)を活用した莫大な金融取引が、きわめて日常的に、そして多くの企業、富裕層によって行われているという事実だ。
ナチスもスイスでマネーロンダリングをした
そもそも国境を越えて財産を秘匿する、マネーロンダリングを行う、という発想はヨーロッパで発達したもの。フランス革命の政治的混乱の中で、スイスは貴族の財産の逃避先として機能した。ナチスがオランダやベルギーの中央銀行から略奪した金塊が持ち込まれたのは、スイス中央銀行やバーゼルのBIS(国際決済銀行)だった。ユダヤ人から略奪した金などもスイスに持ち込まれた。こうした厳然たる歴史的事実を忘れてはならない。
とはいえ、過去においては国境を超えた金融取引で利得を得ていたのは、一部の政府、一部の富裕層に過ぎなかった。それが1970年代以降は商品化され大衆化したことにより、無邪気に課税逃れのスキームを使う富裕層や多国籍企業が急増した。その行き過ぎが各国政府の財政を悪化させ、戦後掲げられてきた民主福祉国家というものの持続可能性が危ぶまれる事態を引き起こしている。経済のグローバル化を推し進めてきた新自由主義から溢れ出た暗黒面。それがパナマ文書だ。
――今後の影響は?
まず、認識しておくべきは、すでに今の行き過ぎた、グローバル企業による租税回避、富裕層の相続税回避を是正する動きは始まっている、ということ。2014年12月にOECDはトリクルダウン理論(富める者から貧しい者へと富が滴り落ちていくこと)を否定する報告書を明らかにしており、富裕層優遇の税制の在り方を改める動きが始まっている。グローバル企業に対しても、英国ではスターバックスやグーグルなどの行き過ぎた税金逃れに対しメスを入れる動きが始まっていた。
今回のリークにより、もっとも手厳しい批判を受けたのはキャメロン首相だろう。スタバ問題で多国籍企業を批判し、サミット議長として租税回避の阻止を訴え、同時に国内で付加価値税の増税と福祉の切り捨てを行ったにもかかわらず、その首相自身がタックスヘイブン絡みで利益を受けていたのだから、国民の怒りは収まらない。
こうなると英政府はこれまで以上に大企業、富裕層優遇を改める姿勢を明確にせざるを得ない。5月に行われるサミットでも、中心議題になることは間違いないように思う。パナマ文書を契機に、タックスヘイブンを利用した租税回避を是正する動きが加速することが期待できるだろう。
大英帝国を支えてきた金融業
――英国が動く意味は大きい。
先進国における租税回避の司令塔はロンドンのシティとニューヨークのウォール街にある。製造業が衰退する中で金融業を花形産業に育て上げたのは、両国だ。
中でもカリブ海などの世界の英国領の島嶼国がタックスヘイブンとして機能している。例えば王室属領であるジャージー、ガーンジー、ケイマン、英領バージン、マン島などはもっとも有名なタックスヘイブンだ。大英帝国は第二次大戦後に完全に覇権を失ったわけだが、それらの島嶼国をシティーのオフショア金融と結びつけることで地下経済を拡大させ、英国王室も含めて富裕者の財産の回避地となることで、経済を維持してきたともいえる。
ところが今回、キャメロン首相の親族がパナマ文書に登場したことにより、英政府は租税逃れに対し、正面から取り組むことを約束せざるを得なくなった。キャメロン首相が国民の支持を得るためには、もはや相当に踏み込んだ形で課税逃れ対策をせざるをえないだろう。
シティが動くことで、ウォールストリートも影響を受けるはずだ。今回のリークを機に、今の世の中にも命脈を保ってきた大英帝国のシステムのひとつが崩壊するかもしれない。その意味では歴史的な出来事ともいえるだろう。
難しいが、目指すべき仕組みはある
――グローバル企業や富裕層の課税逃れに対し、あるべき仕組みとはどのようなものなのか。
まずグローバルに最低限の税負担の標準税を決めてしまえばいい。最低限の税を決め、どこの国に拠点があろうが、その分は最低、税負担が生じるようにする。そのためには世界レベルでの非居住者の預金情報の共有と詳細な地域別納税実態の把握が必要で、これに関する具体的な対策はすでにOECDが着手している。究極的には国際的な資金移動は全て監視下に置かれることになる。そのうえで、その税収を実態的な活動のある国に配分をしていけばいい。これは簡単ではないが、まずは第一歩として、これが必要なことだ。
さらに、いっそ、課税のやり方を変えることも必要かもしれない。課税には大きく分けて申告税と賦課税がある。申告税ではなく、外形標準課税のような形で外形に対して課すような賦課税の仕組みにすれば逃れられなくなる。赤字であっても税負担が生じるため理不尽なのだが、社会の公器としての役割を明確にするという意味において納得性がある。その点では、そのほうが良い可能性がある。
簡単に前進できるものではないが、パナマ文書問題の広がり次第では、山が動き出すかもしれない。パナマ文書問題は、その起点が「非合法」なものであるにもかかわらず、課税の公正、公平とはいかにあるべきかという倫理性を、「合法」の租税回避に突きつけているというまさに今日的な問題だ。今の世界経済の構造そのものが、ウィキリークスやスノーデンの時以上に大きな衝撃を受けることになるだろう。
(私のコメント)
熊本大震災を見ると、高速道路と新幹線や鉄道の寸断が大きな影響をもたらしているようだ。コンビニやガソリンスタンドなどは道路の寸断で配送が止まってしまっている。10万人規模の人が避難所で過ごしているから、食事や水やトイレなどの手配が大変だ。
このように国家のインフラには多額の費用がかかっており、国民はそれに頼って生活をしている。だから国家や地方に税金を払ってインフラは維持されなければならない。しかし大企業や富裕層は国家のインフラを利用して利益を稼いでいるのに、利益をタックスヘイブンに持って行ってしまって税金を払っていない。
そんなに税金を払うのが嫌なら、国内の資産を全部売り払ってタックスヘイブンに移住してしまえばいい。大企業や富裕層は税金が高いから日本から出て行くと言っているところもありますが、出て行かせればいい。しかし日本で稼いだ利益は日本に支払うように税制を変えるべきだ。
大企業や富裕層は複数のタックスヘイブンに子会社や口座を作って移し替えてしまえば、カネが何処に行ったのか分からなくなる。彼らはこれを合法的な行為だと言っている。一番多い例が香港に持って行って、そこからカリブ海あたりの銀行に預けてしまえば、税務当局は資金の流れは分からなくなってしまう。
タックスヘイブンの情報を公開させることが出来ればいいのですが、国際的な取り決めで決めなければならない。その中心にいるのがイギリスやアメリカであり、タックスヘイブンを使って金融立国を目指していた。とにかく世界中からカネを集めて運用して手数料を稼ぐだけで巨額な利益になる。
真面目にあくせく働くよりも電話一本でカネを動かしたほうが楽してカネが稼げる。その為には情報網を世界中にめぐらせて情報を管理すれば、世界中のマネーを動かして儲けることが出来る。アメリカは世界中のメールや交信を傍受していますが、政治家や経済界の首脳のメールを傍受すれば儲けの手段がとれる。
アメリカなどはドルが世界の基軸通貨だから、ドルの動きは逐一分かり、為替投機などに活用が出来る。中国などの外貨準備高もアメリカは正確に把握しており、ジョージ・ソロスなどは中国の人民元に対して投機を仕掛けているようだ。
イギリスのポンド危機もソロスが仕掛けたものですが、世界のカネの流れを正確につかんで為替投機すれば確実に儲かる。日本の円もプラザ合意で円高が決められましたが、為替投機筋は円を持っていれば短期間に倍に出来た。このような状況で為替金融取引に税金をかけるトービン税をかければ投機は止められますが、米英などの金融立国が受け入れるはずが無かった。
しかし、その結果世界各国は税収の減少に悩むようになり、アメリカやイギリスなどもグローバル企業の課税逃れによって税収の減少に悩むようになった。特にリーマンショックなどで年に数億円も稼いでいたファンドマネージャーが軒並み失職して税金を支払わなくなり生活するようになれば、国家の財政がパンクする。
巨額な資金を稼いだ大企業や富裕層たちはタックスヘイブンにマネーを貯めておいて、必要な分しか使わずにいれば景気が回復する事は無いだろう。トリクルダウンも起きるはずが無く、儲けた金はタックスヘイブンに行ってしまうからだ。しかし彼らは国内に豪邸を構えて国家のインフラを利用していながら税金は払わない。
大企業や富裕層が国に税金を払わないので、国家は税収不足に悩むようになり、日本では消費税を増税して賄おうとしている。消費税は大企業や富裕層にとってはへでもないが、貧しい貧困層にとっては重税感は増してくる。これでは景気対策を打っても消費は減る一方であり、これが税収に響いてくる。しかしタックスヘイブン対策には政府は関心が無いようだ。菅官房長官は「パナマ文書」は調べないと言っている。
タックスヘイブンはアングラマネーの温床であり、脱税したカネや犯罪がらみのカネが眠っている。そのタックスヘイブンの後ろ盾になって来たのが米英であり、日本などは手も足も出ない。イギリスなどは元々海賊国家だったのだから違法資金も適法資金も関係ないのだろう。税金は貧しい者が払うべきものであり金持ちたちは税金のかからない国にカネをもって行ってしまう。
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