記事後半は、いかにも職業ビジネスコンサルタント的な、学術理論めかしてはいるが内容の無い話なので、省略した。興味のある人は元記事を読めばいい。
前半(引用部分)で書かれたことは、これからの日本経済を考える上で、または日本の政治を考える上で、ある種の示唆になるものがあると思う。
アメリカではビジネスは闘争のイメージで捉えられている、と私は思っている。つまり勝つか負けるかだ。勝者は常に正しく、負けた者はどんな理由があろうが負け犬だ。そして、社会の底辺にいる貧乏人は、怠け者の役立たずだ、というのがアメリカにおける貧富の概念だろう。つまり、金持ちは金持ちであるだけで尊敬され、庶民は庶民でいるだけで軽蔑(あるいは軽視)される世界だ。
これは、今の日本(明治以降の日本)でも蔓延している精神の病だと私は思うのだが、そういう発言は、アメリカでも日本でも痩せ犬ならぬ負け犬の遠吠え扱いされるだろう。
言うまでもなく、闘争で勝つのは努力ではなく武器の有無による。ビジネスで言えば資本だ。努力したからと言って、素手の人間が刀やピストルを持った相手には勝てないのと同様、最初から資本を持っている相手に無資本の人間は勝てない。そこで、たいていの人間は奴隷階級、つまり労働者、被雇用者、貧乏人階級の人間として生きることになる。これは、本人の無気力や怠け根性のため、というよりも、最初につけられたハンディがあまりにも大きい、ということによるものと言うべきだろう。これが資本主義の根本のアポリア(難題)だ。
自由経済は、放っておくと、力のある者(金のある者)がすべての富を吸収し、貧乏人がいっそう貧乏になっていく、そういう性格を本質的に持っているわけである。
それを是正するのが、言うまでもなく政治の役目であるが、このことはこれまで何度も書いてきたので、今は措いておく。
ともあれ、アメリカにおいてすら新自由主義的経営への見直しが出始めているとすれば、(それが本当かどうかは分からないが)、世界の未来にも少しは希望が持てるのではないだろうか。
なお、日本的な「商い」とアメリカの「ビジネス」は、もともと性格が違うのではないか。下に書かれた「思いやり」と「謙虚さ」は、もともと日本的な「商い」では、ある意味常識的なものだったのではないか。それは、落語に出てくる商売人の描写などを見ればよく分かると思う。
(以下引用)
アメリカ型経営がリーダーに「思いやり」と「謙虚さ」を求め始めた
■社員に優しい会社が勝つ理由とは
日本でしか出版されていないリーダーシップに関する本が、グーグル本社で注目の的になった。これは弊社の木蔵シャフェ君子が、グーグルが会場を提供して開かれた、あるセッションに参加したときのこと。集まったのは組織開発の専門家や精神面の指導者、研究者など多彩な顔ぶれ(もちろんグーグルの社員たちも)。
このとき木蔵がリーダーシップ論に言及するなかで取り上げたのが、『リーダーシップ3.0 ―― カリスマから支援者へ』(小杉俊哉著 祥伝社新書)だった。
「その本は英語になっていないのか?」「翻訳版が出る予定は?」・・・。
注目を集めた背景には、グーグルや他のアメリカ企業で働く多くの人々が、行き過ぎた資本主義に嫌悪感を抱き始めていることがあるようだ。
ライバルを叩きのめして、売って売って、勝ちまくる組織。それを支えるのは、高い地位と金と名誉を手にするために、激しく働くエリートたち。
そんな価値観を絶対的なものとして浸透させ、組織の風土形成に絶大な影響を及ぼしてきたのが、(小杉氏の言葉を借りれば)トップダウン型のリーダー(リーダーシップ1.0)や、ジャック・ウェルチ、スティーブ・ジョブズなどに象徴されるカリスマ型のリーダー(リーダーシップ2.0)である。しかし既に、以前のようには結果が伴わなくなっている。
小杉氏は著書のなかで、現在成果を残している組織にみられるリーダーシップを分析し、そのタイプを「支援型リーダー」と名づけている。リーダーシップ3.0という概念は、ここから生まれてきた。これは単なる精神論ではない。社員に優しい会社のほうが、儲かり始めたという事実がベースにある。
■日本が切り拓くリーダーシップ3.0
日本における「いい会社」の代表格として、伊奈食品工業、未来工業、ネッツトヨタ南国といった企業が挙げられる。これらの「いい会社」には、それぞれ際立った特徴がある。
例えば、伊奈食品工業は、約50期連続で増収増益を続けている。未来工業は、上場企業の中で年間の休日数が最も多く、かつ、労働時間が短いにも関わらず、業界で利益率No.1を誇る。また、ネッツトヨタ南国は、トヨタのディーラーのなかで、突出して顧客満足度が高く、長年顧客満足度1位を維持しており、ほとんどのディーラーが大きく業績を下げたリーマンショック時に、逆に売上をのばしたという逸話を持っている。
このような日本の「いい会社」にしか投資をしないことで、好成績を出し、注目されている投資信託会社・鎌倉投信の鎌田社長は、「いい会社」を率いる経営者には、5つの特徴があるという。
その特徴を挙げると、1)非常に謙虚、威張っている人がいない、自然体 2)志が高い、使命感が強い、3)人に対する興味関心が高い 4)現場主義、率先垂範 5)勉強熱心 である。
■思いやりと謙虚さを鍛える
鎌田社長の挙げる要素のうち、2~5は従来型の成功しているリーダーにも多く見られる。唯一、特徴的なのは1だろう。奇しくもこれは、世界でビジネス書のバイブルとされる『ビジョナリー2 飛躍の法則』(原題:GOOD TO GREAT)のなかで、著者のジェームズ・C・コリンズが述べている「第5水準のリーダーシップ」と重なる。
コリンズが提唱する有名な「第5水準のリーダーシップ」は、個人としての謙虚さ(Humility)と、職業人としての意志の強さ(Ambition=野心、志、成功願望)の両面を必要とするものだとしている。そして、これらを両立させているリーダーのいる組織は、好業績を長期に渡って維持していることを、膨大な調査データで示した。
このコリンズの名著に欠けているものがあるとすれば、そうした最高のリーダーを増やすための方法論だ。前述したような日本の傑出したリーダーの話を聞いても、やはり「こんな人に、どうしたらなれるのか」という問いに対する、十分な答えは得られない。
ではどうするか。この難題に一つの解を示すのが、筆者らが教えをいただいているチャディ・メン・タン氏だ。
(以下略)
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