しかし、この記事のように「同じような貧乏人だがホームレスではない人々」から不満の声があがるのではないか。「蜘蛛の糸」のカンダタのようなものだ。自分の同類は地獄に落ちて、自分ひとりが助かればいい、という「貧乏人同士の足の引っ張り合い」。
記事の最後に資本主義そのものへの疑念が書かれているところが、経済誌には珍しい。
(以下引用)
日本人が知らないハワイの意外な「ウラの顔」 観光客は気が付かないかもしれないが・・・
東洋経済オンライン / 2017年5月1日 7時0分
(前半略)
ハワイでは「ハウジングファースト」という公共プログラムが導入され始めている。ホームレスの人たちにアパートを無償で提供し、薬物依存や精神疾患から立ち直るための支援体制を整え、生活基盤を作ることで社会復帰を促すものだ。通常、シェルターには、薬物依存症やアルコール依存症の人たちなどは治療を受けることに合意しなければ入居できないが、ハウジングファーストは無条件でアパートに住むことができる。その後、仕事に就くことができたときに、可能な範囲で家賃を支払う必要があるが、最大でも収入の30%に制限されている。
ハウジングファーストの効果はいかほどだろうか。カナダのサイモンフレイザー大学健康科学部助教授で、聖ポール病院薬物使用研究主任の林神奈氏に話を聞いた。
■家があれば薬物問題が解決するという話でもない
「カナダでは実際に、ハウジングファースト導入によって、社会コストが減り、1人当たり年間4万2000ドル(約460万円)のコストができたというデータがある。また、ホームレスの人たちは、寝ている間に盗難やレイプのリスクから身を守るために覚醒剤を使って起き続けていることも多いので、住む場所が確保できれば薬物の使用頻度が減る可能性はあるかもしれない。ただ、ホームレスの人に家を提供すればドラッグの問題が解決するかというと、そういう簡単な問題ではない」
住民からはハウジングファーストに反対する声もあった。「ホームレスたちは甘えているだけだ。自分たちは必死で働いているのに」と話すのは、アラモアナショッピングセンターで働く30代の男性Kさん。勤務する店ではマネジャークラスだが、1人暮らしをできるだけの収入がなくルームシェアをしているという。
「今の時代、大卒くらいではいい給料がもらえないので、キャリアアップのために大学院を目指している」と話し、仕事後に睡魔と戦いながら勉強するために薬物を使っていると明かした。病院で偽って、ADHD(注意欠陥多動性障害)の薬を処方してもらい、残ったものは人に売って生活費の足しにしているという。「そうでもしないと自分がホームレスになりかねない」という。
ハワイの生活費は全米で最高レベルの高さであり、最低賃金は現在、時給9.25ドル(約1020円)。最低賃金で働く人が、無理なく平均的な2ベッドルームの部屋を借りるには、週に180時間も働く必要がある計算になるという。ハワイでは多くの人が仕事をいくつも掛け持ちして、ギリギリの生活をしながら生きているのだ。
正直なところ、「ハワイが隠したいダークサイド」は目をそらしたくなる現実だった。しかし、国が発展し富が生まれる一方で、社会的弱者を生み出しているこの現実はしっかりと受け止めておきたい。
また、薬物は富を得た人たちにもはびこる問題だ。敗者も勝者も、大きなストレスを抱えて生きているに違いない。戦い続けなければいけない資本主義社会で、富と引き換えに何か大事なものを置き去りにしているのではないかと、感じずにはいられなかった。はたして、この資本主義は誰に幸せをもたらすシステムなのだろうか。
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