最初の引用記事は「大摩邇」から転載。
予言しておくが、「化石燃料」「原子力」の時代はごく近いうちに終わるだろう。その次に来るのが「自然エネルギー(太陽光、太陽熱、風力、潮力、地熱、あるいは重力そのものなど)」と「自然素材(主にセルロース)」の時代である。
自然エネルギーは再生可能であること、自然素材は自然に分解し、プラスチックや金属などのような「永遠のゴミ」にならないことが、その大きなメリットだ。金属に比べて堅牢性がはるかに劣ることが、自然素材(木材など)の用途が非常に限られていた理由だが、ここに来て、ナノセルロースという形にいったん還元することによって、これまでの自然素材では考えられないほどの強度が得られ、利用範囲が飛躍的に広がってきた。近いうちに、これまでは鉄などの金属しか使用していなかった分野(自動車や飛行機その他)にもセルロース強化素材が使用されるようになるのは、ほぼ確実だと私は見ている。もちろん、硬度の必要な強化素材だけではなく、たとえばスーパーのビニール袋などもセルロース素材(今の紙袋より強度が高く、水に溶けにくいもの)に代わることで、焼却時の毒性ガスの発生を防げるだろう。
つまり、人類全体としての未来は、今後、今より良い方向に進んでいく。それは化石燃料と原子力の持つ負の側面の多くが解消されるからである。
もちろん、輸送機械に関しては、石油に勝る燃料は今のところ存在しない。しかし、「何よりもスピード優先」のキチガイ思想さえ克服解消できれば、今のような無茶苦茶な石油の使用は不必要になるだろうし、また、水素燃料(燃料電池)使用車などの実用化が進むということもあるだろう。
要するに、今後の世界は、より一層の「自然回帰」が進んでいく。これだけは断定的に予言していいと思っている。つまり、それは、化石燃料と原子力に依存した世界の政治経済の権力構造も大きく変化していくだろう、ということだ。
自然物に取り囲まれた文明の中では、人間性そのものも穏やかなものになっていくだろう。それを「3.11」のもたらしたものとしなければ、あの大きな犠牲は無駄になるしかない。日本はそうした新しい文明のさきがけとなりうる国である。
(以下引用)
2014年09月28日09:54 カテゴリ
るいネットさんのサイトより
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&t=6&k=2&m=295920<転載開始>
近年、燃料としてバイオマスが見直されている。しかし、注目されているのは燃料だけではない。
木材のセルロースが持つポテンシャルが注目を浴び、新素材の探求が盛んに進められている。そんな記事を紹介します。
また、この探求には、まさに自然と対置し・育み・ありがたく恩恵を受けてきた日本人が羅針盤となるのに適任である。と語っています。
引用 JP Press 矢野 浩之 より
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セルロースナノファイバーは、鋼鉄の5分の1の軽さで、その7~8倍の強度を有する幅4~20nm(ナノメートル)のナノ繊維である。
線熱膨張はガラスの50分の1。石英ガラスに匹敵する。
こう書くと極めて特殊な繊維のように思われるが、この地球上に1兆8000億トンあると言われている木質バイオマス資源の約半分を占める、とても身近な素材である。
木材や竹といった植物の細胞はセルロースナノファイバーが鉄筋となりリグニンがコンクリートの役割を果たしている。そのコンクリートを取り除いて、細胞一つひとつに解したものが、コピー紙の原料となるパルプである。
我が国では、年間2000万トン近い紙用パルプが流通しているが、それらはすべてセルロースナノファイバーの集合体である。
電子顕微鏡の開発によってナノの世界を見ることができるようになると、植物細胞壁が均一な結晶性のナノ繊維でできていることが知られるようになった。
京都大学の桜田グループによるX線解析からは結晶弾性率は鋼鉄の3分の2の140GPa(ギガパスカル)と見積もられた。カナダ・紙パルプ研究所のペイジ(Page)氏は、パルプを1本引っ張って1.7GPaの強度(自動車用鋼板の5倍)があることを30年も前に報告している。
同じ時期に、楽器用木材の研究では、細胞壁中におけるセルロースナノファイバーの配列(配向)が、用材としての好適を決めていることが報告されている。
しかしながら、それを木質バイオマスから抽出し、ナノ繊維として利用するという研究が盛んになったのはナノテクノロジーが言われ出した2000年代に入ってからである。ナノ素材としての研究の歴史は、まだ10年ほどと言ってよい。
しかし、この10年の動きは目覚ましい。軽量、高強度、低熱膨張といった優れた特性を示すセルロースナノファイバーは、次世代の大型産業資材あるいはグリーンナノ材料として注目され、2004年以降、論文発表や特許出願はうなぎ上りに増えている。
〇 透明基盤から自動車、人口血管まで用途が幅広い高機能素材
中心となっているのは、森林資源が豊かで製紙産業が盛んな北欧、北米、そして日本である。最近は、中国のキャッチアップも無視できなくなっている。
2011年からは、フィンランド、カナダ、米国の主導で国際標準化の議論も始まり、まさに国家レベルでの競争の様相を呈している。
セルロースナノファイバー、セルロースナノクリスタル(パルプやセルロースナノファイバーを高濃度の硫酸で処理して得るセルロース純度の高い結晶性素材)の、高比表面積、可食性、軽量・高強度、低熱膨張性、生分解性、生体適合性などの特徴を生かし、様々な用途開発が進められている。
可視光波長(400~800nm)に比べ十分に細いセルロースナノファイバーは可視光の散乱を生じないため、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの透明樹脂を、その透明性を大きく損なわずに補強できる。
高強度で低熱膨張、しかも自由に曲げることができる透明の繊維強化材料である。有機ELディスプレーや有機薄膜太陽電池の透明基板として研究開発が進んでいる。
TEMPO*触媒を用いた酸化処理により幅10nm以下にまで解繊したセルロースナノファイバーのフィルムは、それだけで高い透明性を示す。適度な透湿性を保ちながらPETやPVCの100分の1以下の酸素ガス透過性を示すことから、包装容器のコーティング素材として検討されている。
軽量・高強度繊維の特性を生かした構造用途への検討も進められている。ナノファイバーシートにフェノール樹脂を注入後、積層、硬化すると繊維率約90%で鋼鉄の5分の1の軽さで鋼鉄なみの強度の成形体が得られる。
また、化学変性したセルロースナノファイバーを熱可塑性プラスチックに10%混ぜると、強度は2~3倍向上する。目指す用途は、軽量、高強度の特性が求められる自動車など輸送機用の構造部材である。
そのほかに、紙の表面平滑化や紙力増強、食品・化粧品用添加剤、人工血管や人工腱といった医療用途、触媒等の担持体、フィルター素材、二次電池(蓄電池)セパレーターへの応用についても開発が進んでいる。
細胞壁中のリグニンとセルロースナノファイバーの相互作用や細胞構造をうまく利用することで、より高機能で安価な材料の開発も可能であろう。
日本人の「自然に対する感性」が強みになる先進的バイオ素材の開発
植物材料に基づくグリーンイノベーションは時代の要請である。セルロースナノファイバーには、それを可能にするポテンシャルがある。その際、植物が環境に優しいプロセスの中で作ってくれたものを、人間が使わせていただく、という姿勢が大事である。
すべての生き物を尊敬してその力を借りる、という姿勢である。言い換えれば、セルロースナノファイバーをはじめとする木質バイオマスの利用研究は、その作り手である樹木の力の借り方と言ってもよい。
どのようにこの材料を使うのが作り手の思いに添うのか、樹木はどうありたいと思ってこの構造を作り出したのか、ということを一生懸命考え、その機能を借り受ける。
その際、生物材料の構造や特性には、生物が長い進化の過程で作り出した必然があることを忘れてはいけない。その必然を損なうことなく材料の形を変えていくことで、省エネルギー的に高機能材料を製造することができる。
インターネットを通じて情報を等しく得ることができるこの時代、先進的バイオ素材の開発のカギを握るのは、自然に対する感性である。
日本人には、自然と調和したものづくりについて、西洋文明が入ってくるはるか昔から、長い時間をかけて培ってきた感性がある。豊かな四季折々の自然の中で、体に染み付いてきた独特な感性である。
それを大切にして、先進的バイオ素材を作っていくことで、日本のプレゼンスを世界に示すことができる。国土の7割が森林に覆われた日本には、そのための資源もあることも忘れてはいけない。
日本には資源も知恵もある。
<転載終了>
(引用2「日経ビジネスオンライン」から転載)
デンマーク サムソ島再生可能エネルギー100%で自給自足の島
1998年からの10年間で、島で使用するすべてのエネルギーを再生可能エネルギー(※)に転換させることに成功したデンマークのサムソ島。美しい自然と風車が調和するこの島の人々が力を注いできた取り組みの歴史と今を見ていきましょう。
※太陽光や太陽熱、風力、水力、バイオマスなど、自然の力によって繰り返し使うことができるエネルギー。
再生可能エネルギーを自給自足
豊かな自然と農地が広がり、夏にはキャンプや避暑に多くの人が訪れるデンマークの観光地、サムソ島。のどかな島が「再生可能エネルギー100%の島」となるきっかけは、1996年に政府が策定した「エネルギー21」という計画でした。計画には2030年までに国内のエネルギー消費量の35%を、電力では50%を再生可能エネルギーにするなどの画期的な目標が盛り込まれていました。
この目標を具体化するための実証実験として、政府は「再生可能エネルギー100%を目指す島」のコンペを開催し、全国にアイデアを募りました。これに5つの島が応募し、その中から選ばれたのがサムソ島だったのです。
応募するにあたって、島に住む人々が自ら計画を練り、100%再生可能エネルギーの島になることを選んだのがすごいところ。行政の主導ではなく、住民たちによって計画は進められたのです。プロジェクトの中心人物ソーレン・ハーマンセンさんは、島の中学校で環境学を教えていた教師でした。
島民には反対意見も多くありました。アイデアには賛同するも、大きな音を発することなどから、自分の土地には風力発電の風車を建てたくないという声もありました。しかし、ソーレンさんたちはあきらめず、2年かけて島民一人ひとりと対話を重ね、プロジェクトへの参加を促し、島の人々にとって最良のエネルギーのあり方を求めていったのです。
サムソ島のプロジェクトには、対話を重んじるデンマークの国民性が活かされています。それは小さなときから育まれる習慣ともいえるものです。小学校でも、子どもたちの間で意見が対立すると、自主的に集まって話し合い、違いを認めながらお互いに理解し合うことを促す教育が行われています。
住宅の屋根に設置された太陽光パネル。太陽光による発電用と、太陽熱による温水用の両方が利用される。写真提供:[左]©アマナイメージズ [右]Samso Energy Academy
島内では、石油を使った暖房を、ヒートポンプや木材ペレットのストーブ、あるいは暖炉に切り替える家庭が増えた。写真提供:Samso Energy Academy
小さな島の暮らしが世界のお手本に
サムソ島では、国などの補助だけに頼らず、「自分たちでお金を出して、風車を建てる」ことにこだわりました。自分たちで建てた風車が、自分の生活を支えていると分かれば、誰も風車を邪魔には思わないと考えたからです。実際、島の風車は個人が所有したり、複数の農家の出資で運営される協同組合が所有したりしているのです。
取り組みを始めてから10年、サムソ島は目標どおり「100%再生可能エネルギーの島」となりました。現在、島には15基の陸上風車と10基の洋上風車があり、電力を自給自足しています。
[左] 発電用風車と島の子どもたち。写真提供:Samso Energy Academy [右] サムソ島の取り組みを伝える絵本。日本でも発行されている。『風の島へようこそ(福音館書店)』アラン・ドラモンド 作 まつむらゆりこ 訳
島民の生活に必要な電力需要は陸上風車だけですべてまかなっており、余剰電力を電力会社に販売するほどです。洋上風車は年間約50万人の旅行客が使う電力をまかない、さらに車や本土と島を結ぶフェリーが使用する化石燃料の使用によって排出されるCO2を相殺するだけの電力もまかなっています。
また、冬の長いサムソ島では暖房のためのエネルギー消費も膨大ですが、熱エネルギーの約70%を再生可能エネルギーでまかなっています。島には麦わらを使ったバイオマス燃料プラントが3カ所、太陽熱と木質チップの燃料プラントが1カ所あり、地域の暖房や給湯などの熱を供給しています。
写真の太陽熱パネルと、木質チップのボイラーを組み合わせた地域熱供給プラントもある。写真提供:Samso Energy Academy
[左] バイオマス燃料にする麦わら。 [右] 地域熱供給プラント内の設備。写真提供:Samso Energy Academy
こうしてサムソ島は大きく変わりました。再生可能エネルギーが島の新しい主役となり、雇用も生み出しています。観光客も増え、街をうるおしています。もともと中世の古い風車や農家が保存されたエコミュージアムの島として人気がありましたが、「再生可能エネルギーの島」へと変貌をとげてからは、視察や体験学習の目的地としても大きく注目されるようになったのです。
住民の意識も高まってきました。サムソ島では、一人ひとりの行動が大きな目標を実現させ、世界をリードする立場になったのですから。「Think Global,Act Local」──北欧の小さな島に暮らしていても、世界的な視点でものを考え、地元で自分がどう行動するかが重要になるという考えが人々に行き渡っています。こうした大人たちの考え方は、未来をになう子どもたちにも受け継がれていきます。
ガラス窓と屋根に太陽光パネルが敷き詰められたサムソエネルギー環境事務所(写真左)では、環境教育の一環として子どもたちにソーラーカーや太陽熱を利用した調理などを体験してもらっている。写真提供:Samso Energy Academy
この記事は「SMA×ECO」(2012年12月6日発行号)に掲載されたものです。
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