(以下引用)
懲りない東芝経営陣、「大甘人事」に高まる不満 役員OB厚遇の制度はようやく廃止されるが…
「社友制度を6月末で廃止する」。こうした内容の通知が東芝の役員経験者の元に届いた。今年2~3月のことだ。
東芝の不正会計は、「上司の意向に逆らえない企業風土」が原因の一つだった。これを変えるため2015年12月、「新生東芝アクションプラン」の中で人事面の改革案を打ち出した。現役役員・従業員向けの施策を講じたほか、OBが対象の相談役と顧問の制度も廃止した。
OB厚遇の制度をようやく廃止
相談役は会長・社長経験者が対象で個室、社有車、秘書がつく。顧問は役員経験者が対象で、先述の3点はつかない。ただ、共に報酬があり、会社は彼らから経営アドバイスを“いただく”ことになっていた。有力OBの発言力が強すぎることがガバナンスを歪めたという反省の中で、両制度の廃止は当然だった。
だが、これでOB優遇がなくなったわけではなかった。西室泰三氏、岡村正氏、室町正志氏らトップ経験者の一部が名誉顧問、特別顧問として残った。さらに、顧問など全役職を退いた役員経験者が対象の社友制度も温存されていたのだ。
相談役や顧問と同じく、社友についても会社は報酬額を公表していない。が、東芝関係者からは「年間500万円」、「300万円台に減額されたと聞いている」という話も漏れ聞こえる。
「やっていられない」。巨額損失を計上し、希望退職や賃金カットを余儀なくされた従業員たちの批判の矛先は、社友制度にも向いた。
その社友もようやく、6月末に廃止となる。しかし、本社のある部長は「本当に廃止されるのか。副社長以上の経験者は例外といった抜け穴はないのか」と疑念を口にする。
会社側は「例外はない」と説明するが、そもそも制度の詳細を知らされていない従業員側の不信は根強い。問題なのは、社友制度は一例でしかないということ。不正会計に加え、米国原子力事業での突然の損失発覚などで、幹部でさえ経営陣を信用しなくなっている。
大甘人事に社内からは不満噴出
「今回の役員人事が東芝を変えるきっかけになると期待していたのに、がっかりだ」。本社の中核部門にいる50代社員はそう語る。
東芝は6月28日に開催する定時株主総会の案内に合わせ、総会後の経営体制を発表した。現在の取締役9人全員が留任する。もっとも、2017年3月期の決算がまとまっておらず、現体制は後日の臨時株主総会までの暫定体制なので留任は当然だ。この社員が指摘するのは、執行役人事である。
今年2月まで原子力事業のトップで会長だった志賀重範執行役など上席常務以下で8人が退任するものの、綱川智社長のほか、専務以上で退任はゼロ。逆に上席常務から専務へ2人が昇格する予定だ。社員の不満に共通するのは、「責任を取るべき人が取っていない」という思いだ。
秋葉慎一郎副社長は不正会計の関与者と認定されている。平田政善専務は不正会計が疑われる時期に米ウエスチングハウス(WH)の財務担当取締役だった。
執行役には、東芝を瀕死に追い込んだ案件の責任者も少なくない。
記者の手元に「極秘:印刷禁止」と書かれた2015年10月26日の経営会議の提案書がある。案件名は「米国におけるWH建設中案件のプロジェクト・スキーム変更」。後に1兆円の損失を生んだ、WHによる原発建設会社買収のことだ。
巨額損失案件の責任者が昇格へ
提案書の担当役員欄に名前があったのが、当時の電力システム社社長で、今回上席常務から専務に昇格する油谷好浩氏だ。火力事業出身の油谷氏は、2015年9月30日に電力システム社の社長に就いたばかりだった。
経営会議で承認した中では、直前まで電力社社長で、本社副社長だった志賀氏が引責辞任する。ただ前社長の室町氏、綱川社長、牛尾文昭専務、平田専務らの責任は問われていない。
具体的な案件で名前が挙がらないだけで、引責辞任したトップに従って出世した執行役がいることも従業員は知っている。そんな役員が企業風土改革の旗を振っても白けるばかりだ。
メモリ事業を売却できれば債務超過を解消できるかもしれない。だが、人心が荒廃すれば、新生東芝は絵に描いた餅になる。
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