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徽宗皇帝のブログ

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低位サービス産業のグローバル化は起こらない
時々さしはさまれる軽口が、頭の固い人々には不快感を与えそうだが、書かれている内容は実に見事な国際経済論で、大学教授あたりでも、これだけ明晰に国際経済の本質を理解している人はいないのではないか。
最後の「昇給の原資? 知るかよ」にしても、紙幅(ネット記事サイズ上限)の都合で切り上げただけだろうと私には思える。これくらいの知性と教養の持ち主なら、この問題の回答は出せるだろう。
私が言おうか。
経営陣の給与や報酬を削り、社内留保を必要以上にしないことで、一般社員の給与を上げればいいだけだ。つまり、「社内格差の縮小」であり、それはひいては国内の経済全体での格差縮小でもある。
格差拡大が景気低迷の根本原因であることはもはや誰の目にも明らかな事実であるはずだが、経済界首脳や政治家だけがそれを認めない。そりゃあそうだ。誰が、自分の財布のカネを減らす話に同意するものか。

なお、今回の記事タイトルで「低位サービス産業」と書いたのは、サービス産業の中には金融業などの「金持ち職業」も含まれるからで、そういう職種には国籍を問わず誰でも参入するからだ。それらは「高位サービス産業」ということにしておく。職業に貴賤ありwww (「低位」と「高位」のどちらが真に社会的に意義があるかはこの際論じない。ここで「貴賤」と言ったのは金儲けの面からだけの話だ。倫理的に「貴い」「賤しい」ではない。)秒単位で億というカネを稼げる人間は5000円で他人の頭を刈ったり洗ったりはしない。まあ、私のような貧乏人には2000円の散髪代でも高いのだが。




(以下引用)

 

「努力しない若者は年収200万を受け入れろ」←うるせぇ



<年収200万で僕らは自由に生きていく>


 ファーストリテイリング(ユニクロ)の柳井会長が「努力もできない若者は年収200万を受け入れなさい」と発言したとして、SNSなどで賛否を呼んでいるようで。賛否を呼んでるっつーか、賛が1割の否が9割ぐらいなんだけども、SNSにありがちな「賛成派の暴言が気に食わねえ」「反対派のぬるい意見が納得いかない」という、元発言からかけ離れた所での空中戦が繰り広げられている。空中戦といえば「パンツじゃないから恥ずかしくないもん」でお馴染みですが、そのパンツがユニクロだったということですね。なに言ってんだ。


 そもそも、元の発言は3年半も前のインタビューで「ユニクロは離職率が高くブラック企業との指摘もあるが、どう受け止めているか。また、今後どのように人材を育成するのか」という問いに答えたもの。デフレ経済を追い風に労働強化の進んだ、いわゆる「ブラック労働問題」の是正にいち早く取り組む上での現状分析だったりして、正直、その後も飲食店から広告会社まで連綿と続くブラック労働問題を考えると、割とバランスのとれた分析だと感じたりもすんのよね。だってあんた、居酒屋さんは「ウチみたいに夢のある会社がブラックと呼ばれる意味が全く分からない」とか言ってたんよ?牛丼屋さんとかもバイトがワンオペ拒否のストライキやるまで動かなかったし。


 大金持ちなのに自社製品を着ているので金持ちなんだか貧乏なんだか分かりにくい柳井会長がインタビューで言うには、「採用時期を固定化せず通年採用にし、新卒も既卒も受け入れているが、新卒と中途が競う形になると苦しむ人も出て来る。グローバルな経営を掲げても、長年地域密着で地道にやってきた熟練の社員も尊重しなければならない。新入社員は早く店長を目指せとハッパを掛けたが、それをやるとプレッシャーになるし、技術や知識は充分でも早く出世しすぎると苦しいものだし……」。まぁ、なんとなーく頷ける内容かなー、と。



<悲惨な未来は現実化するのか>


 さて、元の発言を炎上狙いで改変したスレッドのタイトルは、「努力しない若者は年収200万を受け入れろ」という内容だった。しかし実際の発言を見てみると「優秀な労働者が国境を飛び越えて来る中、日本国籍であるというアドバンテージだけでは競争する上で不利である」という当然の内容。要は炎上狙いの釣りタイトルが狙い通りに炎上したという2ちゃんあるあるなのだが、そもそも、この前提が正しいのかどうかを考える必要もありそうな気がするんよ。


 年収200万って「月17万・ボーナスなし」ぐらいなので、割とあるケースだと思うんですが、柳井会長が言っているのは勤労者の平均値。いま400万程度だが200万になっちゃったりするかもよ……と。イケダハヤト御大は、かつて大著:『年収150万円で僕らは自由に生きていく』において、ジブン社会性ゼロなんでブログで信者商売しか出来ないっすと自由に生きる素晴らしさを語ってらしたのですが、その割にブログが「儲かった、すげぇ儲かった」「今月こんなに儲かった」「儲かる秘訣を知りたきゃサロンに入れ(有料)」「儲かるブログ塾をやります(有料)」みたいな話とトマトの話ばかりで、最終的にホメオパシーとEM菌に辿り着いていることから察するに、やはり年収が低いのも色々と大変。グル・イケダハまでもがそんな有様だとすれば、我ら凡百の民草はどうすれば良いのでしょうか。ナノ銀でしょうか。


 


 


<企業の論理と経済力の移転>


 そもそもですねぇ、我ら平民がいくら「おちんぎん、おちんぎん沢山欲しいのぉっ!」と叫んでも、おいそれと「ふふふ、コイツが欲しいのか!」といただけるもんではなくて、会社が儲かってないと増やすことができないわけです。会社が儲かっても増えないケースはあるんですが、会社が儲かってないと増やせないのは事実。じゃあ会社がどうやって儲けるかって話なんですが、出来ることって「たくさん売る」「経費を削る」の二種類だけなんですね。


 となるとですね、ま、国外で売ったりするじゃないですか。客は1億2000万人よりも65億人の方がいいから、そうしますよね。国外にお店を作って現地労働者を雇って。


 で、国外で作ったりするじゃないですか。日本人を雇うよりもコストカットできたほうがいいから、そうしますよね。国外に工場を作って現地労働者を雇って。


 もう日本人いらないわ……ってのが、いわゆる「産業の空洞化」問題。企業にとってみれば、作る人も売る相手も誰だっていいから、日本に軸足を置く必要が無いんです。


 ユニクロやトヨタは儲かってる、海外の工場で安く作って、海外の店でたくさん売ってる、日本企業の業績は絶好調、だが日本人労働者はどこ…? これは歴史上何万例もある現象で、一般論として経済力は熱やら水やらに似て「高いほうから低いほう」にうつるんです。吉田戦車。




<古代ローマ以来の宿命・空洞化>


 ローマ帝国の絶頂期、ローマ人は裕福で「賃金の安い仕事なんかやりたくない」とワインづくりをしなくなり、もっと高収入を狙える建築家とかになるわけです。ワインを作るのは賃金の安いガリア人やイスパニア人。彼らは貧しいがゆえに低賃金で良く働き、高給取りのローマに「輸出」する。そして豊かなローマ人のカネは、ガリアやイスパニアに流れていく……という。余計分かりにくくなったな。


 ま、要は「100円ショップに並んでる安物を日本人が汗水たらして作っても割に合わん。中国やベトナムあたりで作らせろ」って話です。日本のカネは国外に流れる。中国やベトナムは豊かになる。しかし日本人は「もっと儲かる仕事」をやっている(はず)なので、100均のガラクタを作るより経済効率良いでしょ……という話なんだけども、これは、人に比べモノやカネが動きやすいからそうなんのよな。


 もうちょい簡単に言いましょう。


 「年収500万のあなた!年収550万出すからミャンマーに移住しないか?」とか「台湾なら生活費は15%OFF!生活苦の日本人は移住しましょうよ!」と言われても、なかなか人は動かんでしょ。言語や文化などが障壁になるので。だから、柳井さんは「国境を超えて労働者が行き交っている」と言うけれど、実際、そう簡単にビュンビュン労働者を飛ばしまくることって出来ないんです。


 また、日本人労働者に「おまえらの給料、明日からベトナム人並みな!」と宣言する社長が居たら、速攻で生春巻きにされますわな。ベトナムの物価と違うんだからベトナム並みの賃金で暮らせるわけがない。


 でも、工場を海外に立てて、そこでモノ作ったり、日本からカネを投資したりするのは簡単でしょ?ゆえに「日本人労働者を全員ベトナムに飛ばす」ではなく「ベトナムに工場を作りベトナム人労働者を雇おう」という話になる。これが空洞化。




<実際は、そんなキレイに行かんよね>


 が、しかし。


 経済が「高いほうから低いほうにうつる」ってのは確かなんだけども、これは紙の上の計算に過ぎず、実際は、モノやカネすらも自由に飛び交っているわけではない。アフリカで作って日本まで運んだら輸送費たいへんだし、「国産!」「日本製!」がブランド価値もってたりもしますやん?関税の関係もあるし、労務管理も国により異なるし、なんだかんだで「人件費の安い国に全ての生産が流出する!」なんてことはないんよ。そうじゃなかったら、世界中の工場がタンザニアとかに行ってしまう。


 ましてや、今の日本で最も多いのはサービス業。Tシャツ作って980円で中国人に売るより、日本人相手に5000円で床屋やってる方が儲かる。Tシャツは中国人に作らせて980円で買えばいい。そして多くのサービス業は、言語と場所の制約(Web上のサービスは例外)を受けるので、「とにかく新橋に、日本語の通じる床屋を作って。そしたら5000円のカットにニーズあるから」って話になる。つまり、生産を移転できないのね。


 日本の床屋が5000円、中国の床屋が500円だとした時、「日本の床屋は中国の床屋の10倍優れている/10倍の速度でカットする」というわけではない。こりゃ単に「購買力のある顧客が多い地域で、購買力のある顧客のニーズ(日本語など)に応えられるサービス」だから、そうなっているだけ。上海に安くていい店があったって、日本から客が行かないもの。


 


 


<外国人労働者は低賃金に甘んじない>


 こうした「サービスを提供する人や場所は工場やカネと違って移転しにくいから、日本で商売やる限りはそこそこの価格で出来ます」って構図を突き崩すのは、「自分、500円でもやるアルよ!」と意気込む外国人労働者の存在だったりするんだけども、その人らも日本で働く=日本で生活する以上、「日本での生活費を補えるおちんぎん」もらわないと暮らせないですやん。だから下限はあるよね、と。レタスづくり奴隷みたいな「研修生」に誰もが納得するなら話は別だけど。



 また、もう一つの問題として、「顧客のニーズを満たせる技量を外国人労働者が身に着けた場合、その外国人労働者は低賃金に甘んじているだろうか?」って点がある。


 典型的なのがインドネシア人介護士。人手不足で悩む介護業界を支える力として外国人労働者に着目し、「日本語を覚え、日本で介護士の資格を取り、日本の介護施設で働きませんか」と募集して、実際に結構な人数が来日・合格したものの、バンバン帰国してしまうのだ。当たり前である。日本の高い物価に苦しみながら低賃金の介護業界で働くよりも、インドネシアで「日本語通訳」として大企業に就職した方がいいからだ。なんか、本国に帰って企業に就職すると月給8万円ぐらい貰えるらしく、日本で介護やって手取り12万よりインドネシアの8万のほうが絶対いいよなと。帰国しない系の技能を持った外国人ってのは、要するにインド人SEとかシンガポール人の為替ディーラーみたいな連中なので、そら高給を要求する。


 とか考えていくと、生産拠点の国外流出はある程度しかたない、サービス業の場合は生産拠点(店とか営業所とか)を国外移転できないし、労働者の移転も起きにくい。日本の場合は言語的に孤立しているので英語圏よりもハードル高いし、仮に労働者が移転した場合は、彼らも「日本の生活費を補うために充分な給与水準」を必要とする。


 じゃあ、サービス業主体の産業構造である以上、同業他社との競争における過剰サービスゆえの労働強化はあるけれど、外国人労働者と職を奪い合う意味での「低賃金合戦」は起きにくいよね…って言えると思うんよ。


 もちろん(もろちん)、「海外の優秀な人材により、高給取り職種を独占され、日本人は低賃金労働しかない」というケースはあり得ます。ネクタイ締めて高級スーツを着たジェームズ・チャンさんが作業着の山田一郎さんに命令したり、丸の内のオフィスに座るソムサックさんが店舗の鈴木良子さんに命令したり。


 まあ彼らが、わざわざ日本語を覚えて国境を超えて、日本企業のような激務薄給ワールドの社畜を選ぶかどうかは知りませんが、その辺への警鐘って意味では、柳井発言はわからんでもない。わからんでもないけど、それよりは「日本自体がデフレ脱却できず、アジア諸国がどんどん豊かになって差が縮まり(時に逆転し)、外国人労働者自体が日本企業に来なくなる。来るとしても、きわめて例外的なグローバル企業のホワイトカラーで、それはもう博士号を持った技術者とかハーバード出たコンサルタントみたいな、プロ野球の助っ人外国人的なごく一部の高給取り」みたいなケースの方が濃厚なんじゃねぇかなーと。


 


 


<とにかく賃金上げろ、話はそれからだ>


 日本人であるというだけで他国に比べて高給が約束される時代は確かに終わった。しかし日本国内で日本人顧客を相手にする場合、そう簡単に労働者を賃金の安い外国人に挿げ替えることはできない。その技能のある外国人労働者は低賃金に甘んじるわけがない。


 相対的に日本人が「外国人と比べて特権的な富裕層」であることは出来ない未来が待っているが、おそらく、その時は、日本経済全体が沈没している時であって、日本一のトップセールスマンもカンボジアのトップセールスマンぐらいの利益しか上げられないし、日本一の料理人もミャンマーの最優秀シェフと同じぐらいの利益しか上げられないので、「努力すればいい生活ができる」って話でもない。カンボジアのトップセールスマンやミャンマー最優秀シェフぐらいの給料だ。


 これを避けるためには、日本全体を浮揚させるしかないのだから、無能なヤツは10%、優秀な奴は30%、全員の賃金あげりゃいいのだ。日本人の購買力が健在なら、日本人相手の商売で充分やっていける。日本人が購買力を無くせば、日本市場なんて乾いた雑巾のように絞っても何も出てこない「儲からない貧乏国」になるのだから、労働者の国籍がどこだろうが、どんなに努力しようが、儲からんし稼げない。ルワンダで床屋やるより日本でやったほうがいいよね、という話。


 とにかく日本の消費者を豊かにすりゃいいのよ。だから給料ばらまけ。



 昇給の原資?


 知るかよ。





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