英国の与党・保守党は5日、党首選の決選投票の結果、エリザベス(リズ)・トラス外相(47)がリシ・スナク前財務相(42)を破り、新党首に選ばれたと発表した。英国では現在、保守党が下院の過半数を占めており、トラス氏が新首相に就任する。
ボリス・ジョンソン現首相(58)は6日に辞任し、その後トラス氏がエリザベス女王(96)から首相に任命され、組閣に着手する見通し。トラス氏はサッチャー、メイ両氏に続き、3人目の女性首相となる。
ジョンソン氏は新型コロナウイルス禍の行動規制中にパーティーに参加した一連の不祥事を受け、7月7日に辞任を表明した。後任を選ぶ党首選は下院議員の投票でトラス氏とスナク氏の2人に絞られ、その後は約17万人の党員を対象としたオンラインや郵便による投票を7月下旬から実施。トラス氏が8万1326票を獲得し、6万399票のスナク氏を退けた。
ロシアによるウクライナ侵攻で欧州の緊張が高まり、エネルギー価格高騰で英国民の生活が苦しさを増す中、トラス氏は減税を進め、国民の負担軽減に取り組むとしている。外交・安全保障政策はジョンソン氏同様、引き続き対露・対中強硬姿勢を維持する方針。
欧州連合(EU)との関係改善も課題だ。英国のEU離脱(ブレグジット)は2020年末に完了したが、英国とEUは現在も通関ルールなどを巡る対立が消えていない。トラス氏は当初はEU残留派だったが、後に強硬な離脱派に転じており、EUとの関係を懸念する声もある。
新党首選出の発表後、トラス氏は「私は減税と経済成長のための大胆な計画を実行し、エネルギー危機にも対処する」と述べ、英国民の最大の関心事だった物価高対策に取り組む姿勢を示した。そのうえで「24年に保守党に大きな勝利をもたらす」と訴え、24年までに予定される総選挙での勝利を誓った。
トラス氏は英オックスフォード大卒。石油大手ロイヤル・ダッチ・シェル(現シェル)勤務などを経て10年に下院議員に初当選し、司法相、国際貿易相、外相などを歴任した。
一方、首相を退任するジョンソン氏は引き続き下院議員にとどまるが、英メディアでは「将来の首相復帰を狙っている」との観測も絶えない。
エリザベス女王による新首相任命は通常、ロンドンのバッキンガム宮殿で行われるが、女王は現在、高齢で歩行が困難になっているため、6日は静養先のスコットランドのバルモラル城で行う。ロンドン以外での新首相任命は在位70年で初という。
新政権の主要閣僚候補として、トラス氏の盟友のクワーテング民間企業・エネルギー・産業戦略相の財務相就任が有力と報じられている。外相にはクレバリー教育相の名が挙がる。ウクライナ危機の中、元軍人で国民に人気の高いウォレス国防相は留任する見通し。【ロンドン篠田航一】
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