先日閉幕した東京オリ・パラのために、東京都が約1,400億円をかけて新設した6つの恒久競技施設のうち、5つの施設が今後赤字運営となる見通しであると報じられたことが、大きな波紋を呼んでいる。


取沙汰されているのは「東京アクアティスクセンター」「有明アリーナ」「海の森水上競技場」「カヌー・スラロームセンター」「大井ホッケー競技場」「夢の島アーチェリー場」の6施設。そのうち、各種スポーツ大会にくわえてコンサート会場としても活用できる「有明アリーナ」を除いた5施設が、今後の赤字化が見込まれているという。

ただ、黒字が見込まれる「有明アリーナ」に関してだが、コロナ前に行われた試算のため、予測通りの需要があるかは不透明な状況だという。

負の遺産化に「知ってた」の声

五輪の各施設が今後“負の遺産”となり、東京都の財政を圧迫し続ける可能性が……そんな報道に対して、ネット上では「知ってた」との声が多数。


当初は“コンパクト五輪”を標榜していた東京オリ・パラだったが、いざ開催してみればその経費は総額1兆6,640億円という、夏のオリンピックとしては過去最大規模の費用がかかる結果となっただけに、「始めからわかってじゃん」「東京だけは大丈夫とでも思ったんだろうか」と、辛辣な意見が多くあがる。


もちろん開催後の活用に関して暗礁に乗り上げているのは、都が作った施設だけでなく、メイン会場として1569億円を投じて建設された新国立競技場も同様だ。

五輪後は、球技専用に改修する方針を一度は固めていた政府だが、その後陸上トラックを残す方向となるなど、その活用法を巡って迷走していた新国立競技場。維持管理費が年間で約24億円もかかるとあって、大会終了後は民間に運営権を売却して国費の負担を軽減するつもりだったが、設備が競技場に特化されているためにコンサートなどのイベントでは使いにくいとあって、手を挙げる民間業者は今のところ無しと、目論見が大きく外れる格好となっている。


ただ、そのいっぽうで東京オリ・パラ開催後に解体される予定だったスケートボード競技などの仮設競技会場に関しては、日本人選手が大活躍したことも後押しになり、再整備されて存続されることに。こちらは、存続に対して歓迎する声が多く聞かれるレアなケースだが、東京都の立場からすれば新たな荷物を背負いこむ格好となったとも言えそうである。

約2兆3,713億円の赤字との試算も

今回の報道を受けて、取沙汰される競技施設の今後だが、マイナースポーツの灯を絶やさないためにも残すべきだという意見も当然ながら多い。特に「海の森水上競技場」に関しては、公営競技のボートレース場として活用できるのではといった声も、根強い状況だ。


ただ反面で、今後負う傷を少しでも浅くするためには、いっそのこと爆破・解体するのが良いといった意見も。いささか過激すぎる意見にも思えるが、長野五輪のために作られたボブスレーやリュージュなどの競技施設が、まさに“負の遺産”となっていることを考えれば、そういった声が都民からあがるのも当然だろう。


今回の東京オリ・パラは、ほとんどの競技が無観客となり、期待のチケット収益がほぼゼロに終わったことから、赤字となることは確定的。問題はどれほどの赤字になるかだが、これは来年4月以降の大会組織委員会による決算で判明するようだ。


ただ、とある大学教授が試算したところによると、組織委員会・東京都・国の支出の総額は、なんと約2兆3,713億円の赤字になるとのことである。


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比較的潤沢とされていた東京都の財政も、飲食店への協力金などのコロナ対策により、1兆円近くあった「財政調整基金」が大きく目減りするなど、一転して危機的状況に。基本的にオリ・パラによる発生した損失は開催地、すなわち東京都が負担することになっているが、上記のような赤字額が現実のものとなれば、到底払いきれないのは目に見えており、都としては国と負担を分担すべく、協議に持ち込む構えだという。


多くの人々に夢と感動を与えて閉幕した東京オリ・パラだが、その後始末は始まったばかり。都民や国民へのしわ寄せはほぼ確実な状況だが、その負担を納得させるためには、まず大会全体の正確な収支の開示が求められるところだろう。


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