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徽宗皇帝のブログ

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日本で弁護士需要が無い理由
「株式日記と経済展望」から転載。
特に緊急性は無い話題だが、これも大きな社会問題の一つである。特に、これからどの大学のどの学部に行こうかと悩んでいる受験生には、こういった「その仕事の社会的ニーズと所得水準」は是非とも知りたい情報だろう。だが、学校の先生も塾の進路指導担当者も案外、こういう知識に疎いことが多いようだ。
私自身、塾の講師をしていた頃には法学部を目指す子供を何人も教えていたし、彼らの針路に疑問を呈したことは一度も無かった。あの頃、将来はこのように弁護士余り状態になるとは予想していなかったのだ。むしろ、日本も米国並みに裁判事件が増えるだろうから、弁護士の需要はもっと多くなるだろう、と予想していたくらいだ。
そもそも、裁判費用を払える庶民などほとんどいないような「総貧乏人」国家になるという予想をしていた人間などほとんどいないだろう。
小泉以来の格差社会化が、実は「一億総貧乏人国家」化でもあったわけだ。

貧乏人が大企業を相手に訴訟を起こしても、まず勝てない。相手はエリート弁護士を抱え、場合によっては裁判所まで左右する力がある。米国のように、貧乏人対大企業では貧乏人が勝つことが多い社会とは話がまったく別なのである。
では、貧乏人が貧乏人相手に訴訟を起こすか? 裁判に勝ってもカネは取れない。訴訟費用だけは確実に獲られる。(本当は「取られる」だろうが、イメージ的には「獲られる」であり、「盗られる」だろうwww)そんな裁判を誰が起こすものか。
金持ちと金持ちは仲間同士だから、揉め事は「紳士協定」で解決し、裁判などしない。

つまり、日本では、(今の状況では)弁護士需要は無いのである。
子供を指導していたころに、こういう知識(むしろ社会の現実に対する判断力、つまり知恵と言うべきか)があれば、自分からドブに飛び込む子供たちを救えたのに、と思うと慚愧の念に堪えない。




(以下引用)

日弁連がまとめた『弁護士白書2015年版』によると、2006年に
1200万円だった弁護士の年収は、2014年には600万円と半減。

2016年8月22日 月曜日

32歳弁護士 毎食カップ麺でコンビニおにぎりがご馳走 8月22日 NEWSポストセブン


 日弁連がまとめた『弁護士白書2015年版』によると、2006年に1200万円だった弁護士の年収は、2014年には600万円と半減。電機メーカーの平均年収730万円より下だ。この荒波に立ち向かう4人の現役弁護士が一堂に会すると、『弁護士白書』にも書かれていない弁護士たちの悲哀の声が噴出した──。



 ひまわりを象ったバッジを胸に集まったのは自分で開業せず、他の弁護士の事務所に籍を置く居候弁護士、いわゆる「イソ弁」のA氏(42)、イソ弁として1年間働いたのちに自宅を事務所として開業した「宅弁」のB氏(35)、法律事務所への勤務経験なし、弁護士バッジを手にして即座に独立した「即独弁護士」のC氏(32)、そして昨年から自分の事務所を構え、今年から新卒のイソ弁2人を抱える「ボス弁」のD氏(49)である。



イソ弁A:イソ弁って法律事務所勤務ではあるんですが、社員契約ではなく「業務委託」であることが多い。事務所の名前を借りて仕事をしているだけだから、あくまで「個人事業主」なんです。サラリーマンのような雇用関係はないため、社会保障費は全額自己負担しなければなりません。



宅弁B:事務所から給料をもらえても、それはあくまで「業務委託に対する報酬」ですからね。業務委託契約が切られれば、収入は突然ゼロになる。極論をいえば明日仕事があるかどうかもわからない。つまり、何の保障もないんです。



 大手事務所なら1年目から1000万円超えの給料がもらえるらしいのですが、そんなところに入れるのはエリート中のエリート。5度目でようやく司法試験に受かった僕なんて、箸にも棒にもかからなかった。



即独C:それにひきかえ、どこの事務所にも所属せずに、すぐ独立した私なんて、年間で手元に残るのは100万円ちょっと。独り身なので家賃5万円のアパートに住んで節約しているんですが、毎月支払う弁護士会費(*)の負担が大きくて、生活はかなりキツい。



【*東京弁護士会所属の登録5年目の弁護士で月額4万8700円の負担だが、弁護士会によっては年間で100万円以上を支払わなければならないこともある】



宅弁B:私がかつてイソ弁だった時代は毎月35万円の給料をもらっていたけど、そこから社会保障費を支払って、さらに毎月5万円の弁護士会費を払っていて、手元に残るのは20万円ちょっと。安定している分、新卒サラリーマンの方がまだマシです。



ボス弁D:弁護士ではなく、我々から会費を取って安定した給料を得ている弁護士会の職員になりたかった、と思うことさえあるよね(笑い)。



イソ弁A:ウンザリすることはまだまだあります。私たちは、“自由業”という扱いだから住宅ローンの審査も通りにくい。



宅弁B:最近は弁護士の貧乏事情がバレつつあるのか、大手航空会社のCAと合コンしても「イマドキの弁護士さんって大変なんでしょ?」と同情されるばかりで、全くモテません。



即独C:僕はお金がなくて合コンすらいけませんよ! 毎食カップラーメンで、たまにコンビニのおにぎりをつけるのが、ご馳走です。ただ、ストレス発散のための寝る前に飲む缶チューハイはやめられない(苦笑)。



ボス弁D:司法制度改革を契機に、弁護士が転機を迎えたのは間違いないね。



(私のコメント)

司法試験は国家資格の中でも最難関の資格ですが、平成18年では1008名の合格者だったのが、18年以後の新制度になって合格者は毎年2000名を超えるようになった。最近の法改正には訳の分からないものが多く、司法試験合格者の激増にはどういう意味があるのだろうか?

法科大学院や裁判員制度などは、意図が不明であり十分な説明も無いままに行われた。弁護士が足らないからというのなら分かりますが、現状は増えすぎてしまって弁護士では食えないような低収入弁護士が誕生している。法科大学院制度も訳の分からないものであり、法務省役人の天下り先の為の制度だろうか。

テレビのコマーシャルでは「過払い金バブル」と言われるほど仕事が増えて、弁護士事務所のCMが目立ちますが、若い弁護士にはそのような恩恵はまだないようだ。弁護士では食えないと言うような評判が立っては弁護士を目指す若い人はますます減る一方だろう。

弁護士の仕事はほぼ一定なのに、弁護士の数が倍増しては仕事にあぶれる弁護士が出てくる。確かにアメリカに比べれば弁護士の数や比率も低いのでしょうが、アメリカは弁護士の数が多すぎて訴訟天国になってしまっている。ダメもとで裁判に訴えて来るくらい、弁護士の仕事は奪い合いになっている。

司法試験に限らず、国家資格の合格者を需給バランスが崩れるほど合格者を増やせば仕事にあぶれる事務所が増える。司法試験に合格して弁護士になったとしても、医者と同じで実務経験を積まないと腕利きの弁護士にはなれない。だから司法試験の合格者の激増は弁護士の質の低下にもつながるだろう。

昔なら弁護士になれば一生安泰であり、年収も1000万円以上が当たり前であり、社会的な地位も高かった。司法試験に合格すれば弁護士だけではなく裁判官や検察官にもなれますが、それらには採用試験があるから合格すれば成れるわけではない。

だから裁判官や検察官が一定なのに、弁護士ばかり増えては力関係や社会的な地位でも差が出て来るだろう。最近ではおかしな判決を出すおかしな裁判官が増えて来ていますが、司法試験の制度改正と関係があるのだろうか? 裁判官と検察官は裁判所などでいつも一緒に仕事をしていますが、弁護士は裁判よりも示談交渉の方が多い。

離婚沙汰にしても相続争いでも、裁判で争う事よりも当事者同士の話し合いの交渉役になる事が多い。アメリカのように何でも裁判で争うやり方は日本では馴染まない。実際にも裁判が起こされても判決まで行く事は少なく途中で示談で解決される事が多い。

確かに日本の裁判は時間ばかりかかって非常に長引く事が多い。ならば裁判官や検察官を増やすべきであり、一人の裁判官が抱える裁判の数は非常に多い。一人で200件から300件も抱えていては裁判も長期化するわけだ。弁護士がダブついているのに裁判官や検察官は殺人的な忙しさであり、法務省は何を考えているのだろうか?


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コメント

1. 無題

私は、ロースクール大学院ブームが最も罪深く、多くのワープア弁護士を産み出した元凶だと感じています。
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