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なーんて冷笑している場合じゃない。こういうブコメがつくのも、共産党が国民に広く自分の立場をこれまで知らせてこなかったという「問題」でもあるのだろう。知らないのは、国民のせいではなく、当該政党の努力の問題じゃ、ということ。
共産党の自衛隊に対する方針(ざっくり簡単に)
日本共産党の自衛隊への態度とはつまるところ、こういうことだ。
その根拠(共産党は本当にそんな方針なのかという根拠)
根拠を見てみよう。
1.と2.は共産党の基本方針である「綱領」に明記されている。
自衛隊については、海外派兵立法をやめ、軍縮の措置をとる。安保条約廃棄後のアジア情勢の新しい展開を踏まえつつ、国民の合意での憲法第九条の完全実施(自衛隊の解消)に向かっての前進をはかる。
2.の後半は、今から20年以上前(2000年)の第22回党大会で決めている。
自衛隊問題の段階的解決というこの方針は、憲法九条の完全実施への接近の過程では、自衛隊が憲法違反の存在であるという認識には変わりがないが、これが一定の期間存在することはさけられないという立場にたつことである。……そうした過渡的な時期に、急迫不正の主権侵害、大規模災害など、必要にせまられた場合には、存在している自衛隊を国民の安全のために活用する。国民の生活と生存、基本的人権、国の主権と独立など、憲法が立脚している原理を守るために、可能なあらゆる手段を用いることは、政治の当然の責務である。
今でも共産党が全住民向けに配布しているリーフレットなどで繰り返し語られている。
3.は野党共闘が発展する中で、新たに対応を迫られて明らかにした問題である*1。例えば2020年に志位和夫は次のように表明している。
自衛隊についても、われわれは憲法違反という立場ですけれども、一致しませんから、政権として自衛隊は合憲という立場で対応する。
ちなみに、もう少し詳しく言えばこうなっている。
野党連合政権にのぞむ日本共産党の基本的立場――政治的相違点にどう対応するか/幹部会委員長 志位和夫
「違憲」のものと共産党はどう付き合うのか
「違憲のものと共存する」という考えをどう見たらいいのだろうか。
共産党が「違憲」と思うものはたくさんある。たとえばこういうものだ。
- 政党助成金。国民の思想信条の自由を侵す強制献金だ。
- 生活保護の現在の水準。とうてい「健康で文化的な最低限度の生活」は満たさない。
- 大学の高学費。教育を受ける権利、機会均等を破壊している。
- 公務員のストライキ権剥奪。「勤労者の団結する権利」を奪っている。
などなどである。キリがない。
共産党はそもそも綱領で革命(民主主義革命)の目標を「憲法の完全実施」においているくらいだから、今の日本社会は「違憲だらけ」という現状認識がある。
「憲法どおりに政治をしろ!」というのが革命のめざすところだというわけだ。
ところが、現在の自民・公明政権は現状が「憲法違反」だなどとは微塵も思っていない。当たり前である。政権が「憲法違反」だと思って運営していたら訴えられてしまうからだ。
つまり今の政府は森羅万象一切のものを「合憲」として運用しているが、共産党としてみれば「違憲」である現実は無数にある。これが共産党にとっては革命によって改革されるべき課題そのものだ。
しかし、これらの違憲の現実は、共産党が参加する政権ができたからといってすぐに解消されるわけではない。
例えば政党助成金。
仮に立憲民主党と組んだ政権ができたとしよう。
助成金廃止の合意など簡単にはできない。
だとすれば、共産党としては「違憲」だと思っている政党助成金を出す政権が長く続くのである。共産党はそこに閣僚として参加せねばならず、国会で認識を問われれば「合憲です」と答弁せざるを得ないのだ。
連立政権とはそういうものである。
そして、共産党はどこまでいっても単独政権はめざさないことを基本方針にしているから(必ず連立・連合政権)*2、こういう「自分は違憲だと思うけど、他の党や国民はまだそんなふうには思っていないもの」がたくさんある。
この「たくさんある違憲のもの」と共産党は長く「共存」し、付き合っていかないといけないのだ。それは選挙のたびに「これを変えたいのですが…」と公約し、一つ一つ、国民と他党の合意を取っていくしかないのである。
粘り強いおつきあいが必要なのである。
(以下省略)
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