世界経済を大混乱に陥れているトランプ政権の活動には、一定のビジョン、規範、哲学が存在するのだろうか?
 就任から5カ月を迎えて、トランプの暴走ぶりに対する一定の評価が出てきた。
 「トランプには哲学が存在しない」
 と、二期当選後に言ったのは、かつての腹心、極右政治家のボルトンだ。

 https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-11-06/SMJ73HT1UM0W00
 【トランプ氏の世界観を最もよく捉えているのは、トランプ政権で国家安全保障担当補佐官を務めた悪名高きタカ派、ジョン・ボルトン氏だ。
 トランプ氏には「哲学も政策もない」とボルトン氏は言う。トランプ氏の国家安全保障に関する決断は完全に取引であり、「論理や重要性、結果といった線で結ばれていない点の連なり」のように地図上に広がっているとボルトン氏は記述している。

 トランプ氏のアプローチを楽観的に解釈すれば、かつてリチャード・ニクソン氏が外交政策の要とした「狂人理論」の進化版ということになろう。

 しかし、狂人理論はコンパスと心象地図を持ち、戦略的目的地へ向かうために戦術的に時折錯乱を装うリーダーを想定している。トランプ氏にはコンパスも地図もない。同氏の外交政策が支離滅裂で狂気じみているように見える場合、それは見せかけではないかもしれない。実際に米国はトランプ氏が描く点の連なり、つまり世界で漂流することになるかもしれない。】

 いまだにトランプが世界の救世主の如く持ち上げて絶賛している評論家もいるのだが、その声は、もはや聞き取れないほど小さい。
 あれほど、トランプを賛美し、囃し立てていた木村太郎、櫻井よしこ、渡辺哲也、フィフィ、川口恵美たちは、今やトランプについて、ほとんど触れなくなった。
 トランプの正体を思い知らされたからだ。ただ、これまでのトランプ支持発言を、まだ反省、自己批判していない。

 トランプは、二期当選後、デンマークのグリーランドや、カナダをアメリカに併合すると発言した。おまけに武力の使用も厭わないとしたので、同盟国を侵略すると公言したに等しく、欧州カナダは激怒した。
 日米安保やNATOの解体も臭わせ、まるでロシアの代理人であるかのようにふるまった。
 https://www.cnn.co.jp/usa/35227631.html

 1月20日の二期就任後、トランプは怒涛のように根無し草=理論的根拠のない関税政策、移民政策を繰り出した。これは世界を仰天させた。
 
【随時更新】トランプ氏が大統領令に続々署名 一目で分かる政策一覧 2025年1月21日 朝日新聞
 https://www.asahi.com/articles/AST1L1T17T1LUHBI009M.html

日本に対しても、日米安保は、日本の米国防衛義務が含まれておらず、不公平だとし廃止を臭わせた。
 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250307/k10014742081000.html
 この発言の真意は、日本にGNP比5%、現在の20倍の防衛費負担を求めるディールだといわれている。これを日本政府が受け入れるなら、消費税20%大増税が確実にやってくる。財務省は大喜びしているかもしれない。

 ただトランプは、一期目から尖閣諸島の安保発動には否定的だった。トランプは、独裁権力が大好きで、プーチンや習近平を賛美していたので、孔明の行った「天下三分の計」、つまり米中ロの会議で世界を支配する計画を持っていたようだ。

 トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極時代」の幕開け 4/1
 https://news.yahoo.co.jp/articles/de3bf589145184df884979e99a530bf1644035c2
 トランプの、中国に対する超高額関税は、結局、ブラフのディールにすぎないことになり、現在は、中国政策を次々に緩和している。
 
トランプ氏、対中関税「大幅」引き下げ示唆-中国は全面撤廃求める 2025年4月24日
 https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-04-23/SV6D3ODWX2PS00

 https://www.fnn.jp/articles/-/870741 5月13日

 結局、トランプは、中国共産党の利権、権益を剥奪するつもりはなく、台湾や尖閣軍事侵攻を阻止する意思もない。これで事実上、トランプの支援を受けた中国共産党の台湾・尖閣への軍事侵攻は避けられないものとなっている。

 ロシアに対しても、トランプの三回の破産が、すべてプーチンFSB(ベイロック社)の支援を受けて立ち直っているので、事実上、トランプはロシアの工作員の役割を見事に果たしている。
 https://blog.goo.ne.jp/goo221947/e/e701cf37d4f44ec044e13f7adf9f36db

 アメリカの独立系メディアでは、哲学のない、場当たり的なトランプ政策は、すでに世界経済を破綻に追い込み、それを回復させることは不可能だと指摘している。

 【分析】トランプ関税の混乱、すでに経済に打撃 修復には遅すぎる可能性 2025.04.24 CNN
 https://www.cnn.co.jp/usa/35232232.html

 ニューヨーク(CNN) トランプ米大統領が経済に関する過激な姿勢を一部後退させたようだ。トランプ氏は政権の看板である関税政策でまたも方針転換しつつあり、場当たり的な手法がすでに経済に深刻な打撃を与えたとの懸念が再燃している。

 トランプ氏は22日、ウォール街の悪夢となっていた二つの重要な問題について立場を軟化させた。対中関税の緩和に前向きな姿勢を示唆し、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長を解任する「考えはない」と表明した。

 だが、この唐突な姿勢の変化は、ホワイトハウスに端を発する混乱が米国のみならず、他国の経済まで景気後退(リセッション)へ追い込む可能性を改めて浮き彫りにした。

 関税そのものより深刻なのは、ホワイトハウスが生み出した不確実性だ――。米ブルッキングス研究所のウェンディ・エデルバーグ上級研究員はCNNとのインタビューでそう語り、「方針がぶれている状況は終わっていない。むしろ、今回も新たなぶれにすぎない」と指摘した。

 ここ数週間の落ち込みの後、米国株は22、23両日に急騰した。145%の対中関税は持続不可能との経営者や側近の警告に大統領が耳を傾け始めた、という安堵(あんど)感がウォール街に広がった兆候だ。
 22日に行われた大統領執務室での取材でも、トランプ氏はパウエル氏への攻撃を手控えた。(最近のトランプ氏はパウエル氏を「負け犬」と呼んでおり、自制するのは異例だ。23日夜には再び威圧的な口調に戻り、「電話するかもしれない」と述べた)

 とはいえ、米国株はトランプ氏の1月の大統領就任時点から11%下落したままだ。背景には世界貿易を根本から変え、経済成長に急ブレーキをかけかねない関税方針をめぐり、ホワイトハウスがほぼ絶えず方針転換と矛盾した発信を繰り返していることがある。

 ファクトセットのデータによると、株価は最近反発しているものの、S&P500はわずか2カ月前の過去最高値から7兆ドル以上の時価総額を失った。

 現時点では、トランプ氏が関税を撤回したり、FRBの独立性を守る数十年来の慣例を尊重したりする兆しが少しでも見えれば、少なくとも一時的にはウォール街にとって勝利となるだろう。

 ミシガン大学のジャスティン・ウォルファーズ教授はCNNに対し、「市場はトランプ氏が愚かなことしでかすのではないかと恐れているし、へまをしなければ大喜びする」と指摘した。

 一方で、ウォルファーズ氏ら経済学者は、すでに発生した損害について懸念を示した。

 「経済が減速するのは明らかだ」とウォルファーズ氏は述べ、「問題は減速の程度だ」としている。

 専門家はおおむね、年内に景気後退入りするリスクが高まっており、その確率はおそらく50~70%に上ると指摘する。トランプ氏が絶えず関税政策を変更しているため、可能性は流動的というのがほぼ全員に共通する見方だ。

 ペンシルベニア大学ウォートン校のケント・スメッターズ教授によれば、仮に「トランプ関税2.0」が今日すべて解除されたとしても、政策の不確実性だけでGDP(国内総生産)の少なくとも1%が失われる見込みだ。「すべての関税が実施されれば、最終的にGDPが5%下落すると予測している」という。

 ただ、これは明確にしておきたいが、トランプ政権は他の関税の解除については一切公に言及していない。これだけでも極めて攻撃的だ。
 トランプ氏によれば、対中関税は下がるかもしれないが「ゼロにはならない」。10%の一律関税と、自動車や鉄鋼、アルミ、一部のメキシコ・カナダ製品への25%の関税は依然として残る。

 ホワイトハウス高官が米紙ウォールストリート・ジャーナルに語ったところによると、現在145%の対中関税は「およそ50~65%」の水準に引き下げられる可能性がある。
 それでも、大きな混乱は避けられないだろう。

 トランプ関税がもたらす悩みは財政上のコストだけにとどまらない。明確な方針が示されないため、企業経営者だけでなく、米国の一部の主要同盟国や貿易相手国も身動きが取れなくなっている。
 「米政権の場当たり的な関税政策は信用の危機を招いた」。EYのチーフエコノミスト、グレゴリー・ダコ氏は23日の報告書でそう指摘した。

 失われた信用の回復には時間がかかるとみられる。特に米国の関税はいつ上下するとも分からず、多くの場合ほとんど、あるいは全く予告なしに実施されるだけになおさらだ。

 「企業は暗中模索の状況だ」とエデルバーグ氏。FRBの調査で75%の企業が「今後半年間、設備投資を増やさない」と回答したことを指摘し、「どの政策が明日の法律になるか分からず、皆が息を潜めている」と語った。

 こうした不安は23日に発表されたFRBの地区連銀経済報告(ベージュブック)にも表れている。業種を問わず多くの企業が、状況が明確になるまで採用を停止あるいは減速していると報告した。

 一方で、米国ブランドは国内外で打撃を受けている。米国の一部の主要同盟国や貿易相手国でさえ、トランプ氏の貿易戦争に合理性を見いだせずにいる。
 「米国とカナダの貿易関係は深刻な打撃を受けた。永遠に修復不能だろう」「カナダが米国寄りの姿勢を取ることは政治的に不可能になった。損害はすでに確定している」(ウォルファーズ氏)
****************************************************************
 引用以上