中国政府による新疆(しんきょう))ウイグル自治区などでの人権侵害行為を非難する国会決議は、今国会でも採択が見送られることが20日、確実になった。先の通常国会と同様、自民、公明両党が党内手続きを進めなかったためだ。超党派を含む複数の議連が決議を求めて活動したが、自民、公明には、党として今国会での採択に対する熱意はなかった。
「タイミングの問題だ」
自民の茂木敏充幹事長は17日、決議を求めて党本部を訪れた古屋圭司政調会長代行らに対し、北京冬季五輪の「外交的ボイコット」をめぐる政府の対応表明を決議に先行させるべきだとの考えを示した。古屋氏らは「決議と外交的ボイコットは全く違う問題」と食い下がったが、茂木氏は首を縦に振らなかった。
ただ、茂木氏も当初は今国会での決議採択に否定的ではなかったという。古屋氏は今月初旬、複数の議連で作成した決議原案を茂木氏に示し、公明と調整を進めることに了解を得た。岸田文雄首相(党総裁)も14日に古屋氏らに、今国会での決議採択について「いいのでは」と容認する考えを示していたという。
対中批判に慎重な公明も10月の衆院選で初めて中国の人権状況への懸念を公約に盛り込み、姿勢に変化の兆しがあった。立憲民主党や国民民主党、日本維新の会などは今国会での決議を求めており、採択に向けた環境は整いつつあった。
古屋氏は公明の歩み寄りに期待し、14日、公明幹部に対応を求めた。これに対し、公明幹部は決議案の名称から「非難」を省き、中国当局による人権侵害を非難し即時停止を求めた部分を人権状況の説明責任を求める内容に変更するよう要請した。公明幹部はその場で、事前に用意していた修文案を示したという。
対中非難の意味合いを薄め、決議を骨抜きにする修正だが、古屋氏は「政治は少しでも前に進めることが大事」として受け入れた。
だが、与党関係者によると、この修正後の決議案は古屋氏らが茂木氏と面会した17日までに公明の石井啓一幹事長まで報告が上がっていなかったという。
「公明執行部はどんな決議でもやる気はなかったのだろう。古屋氏側が到底受け入れられないような修正を求めたが予想外に丸のみされ、公然と反対する理由がなくなった。公明の窮状を茂木氏が忖度(そんたく)(そんたく)して、泥をかぶったのではないか」
決議を目指した保守系ベテランはこう語った上で、再度の決議見送りについて「海外からの批判は確実だろう」と話した。(奥原慎平)
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