老後資金に1億円必要だ、とか馬鹿なことをマスコミは言っているが、サラリーマンの生涯年収が2億円も行かないだろうという時代に何を言うのか。まあ、平均年収が300万として、40年間勤めても1億2000万円である。そこから、どこをどうすれば老後資金に1億円が出てくるのか。そもそも、年収300万では、毎日の生活だけで給与のほとんどは消えていく。爪に火を点すように給与の5分の1くらいを貯蓄しても、年間60万の貯金、40年で貯まるのは2400万までである。子供の学資とか冠婚葬祭、社会的交際費その他、必要なカネを支出したら、給与の5分の1の貯蓄どころか、生活費だけでも足が出るのではないか。
では、株や証券でも買って投資するか、と言えば、そもそもその投資資金が無いわけであり、投資したら、手数料が最初に消え、さらに、投資が失敗したら、カネは雲散霧消する。
要するに、老後資金を過大に考えるのは、ストレスを増やすだけの話である。今のような1億総貧乏時代には、「生きていけるだけで幸福」と思わないと生きていけない。
下の記事の佐竹さんの老後生活は、マスコミの阿呆な言説とは異なる、現実性のある、そしてある意味幸福な「下流老人」の老後生活だろう。
(以下引用)
最低生計費付近で生活する佐竹さん
さて、どちらかといえば本書(上田本)に厳しいツッコミをしてきたが、本書のタイトルから予想されるような「自営業の老後のルポ」として一番面白いと思ったのは、3章の佐竹さんのケース紹介である。
佐竹さんは、フリーライター。65歳。
学生運動をして就職がうまくいかず、親のコネで労働金庫に入り、結婚・失職・離婚でフリーランスに。
単身のフリーライターの男性。
これだよ、これ。
こういうケースの具体的な収支、生活を聞きたかったんだ!
そしてそれが公開されている!
「自分の生涯収支は公開しないのに、佐竹さんのは公開するんだ。ゲスいな」とは先ほどぼくと一緒に本書を読んでいた某氏。
佐竹さんの収入の基盤は年金とアルバイト(配膳)の収入である。「月々の年金5万円+少々のバイト」(p.56)。ただしアルバイト収入が太い。繁忙期にかなり稼ぐが、安定分だけ見ると、生活保護的な最低生計費ギリギリだろうか。
フリーライターとしての収入は変動が大きくて書いてない。
つまり、経常的には最低生計費程度を稼ぎ、プラスアルファとしてライターとしての収入や繁忙期のプラス分がある、というようなイメージ。具体的な額は本書を実際に読んでほしい。
支出は、変動がいろいろあるようだけど、だいたいその収入を少し下回る程度である。
佐竹さんの1日も書いてあるが、午前中はジムで泳ぎ、午後は映画・DVD、原稿書き、そして夕食後に「仕事」(アルバイトなどだろう)か、読書。12時に寝ている。「ほぼ毎日このスケジュール」(p.62)。
佐竹さんの考えと生活は、ぼくが想定する老後に一番近い。
なにこの「佐竹さんは俺だ」感。
どこが「俺」なのか。
生活のレベルが、1人暮らしになった時に、(現行の生活保護基準での)最低生計費水準でよいだろうとする発想が一番親近感がわく。一般的にこれでは「健康で文化的な最低限度の生活」はできないだろうとされるし、ぼくもそう思うのだが、ぼく自身の生活に関わっていえば何とかイケるのではないかと思っている。
ジムで朝シャワーをすませるから水道・ガス料金安いの
ジムってシャンプーもあるしいいよね(p.63)
これこれ。
これですわ。
ぼくも結婚同居前、東京に住んでいた頃は、フロなしアパートに住んでいて、ジムに通っていた。東京の銭湯は1回400円を超えるから毎日入ると月1万2000円もかかってしまう。ところが、ジムに行くと、まずシャワーがあってボディーソープやシャンプーがある。その上、体をあたためるジャグジーがある。深夜なら月5000-7000円で(当時は)可能だった。ぼくは家にガス引いてなかったんだよね(うむ、全然「健康で文化的な最低限度の生活」じゃねえな)。
家賃の問題さえなんとかなれば…
佐竹さんの場合、住居費がかかっていないというアドバンテージがある。
ぼくも東京の独身時代は、23区内であるにもかかわらず月3万円のぼろ木造アパートだったが、家賃という固定費を低く抑えることでかなりの選択肢が広がる。住居費を除く生活費は工夫次第で何とかなると思うからだ。
家賃の問題は、老後の資金を考える上でのネックにもなる。
持ち家を準備すれば住居費は低くなるけども、その前に住宅資金を準備しなければならなくなるからだ。
佐竹さんのように賃貸や借家を前提にしてみる。
佐竹さんのような「原稿書き」という生活をする場合、どこでも場所を選ばないように思える。
ただ、原稿を書く仕事について、いつも声がかけられるのは、やはり首都圏、できれば都内、さらにいえば23区だろう。
配膳のアルバイトというのも、おそらく地理的条件があるはずで、佐竹さんのような「仕事をしながらの年金生活」は、「仕事がある首都圏」という制約が出てくるのかもしれない。
場所さえ選ばなければ、公営住宅の、空いている古い・不便なところ(随時募集)を狙える。佐竹さんのようなケースでは、原稿がネットで遅れて、いつでも編集者から声がかかるという条件があるなら、また、アルバイト先に交通費の範囲内で行けるなら、選択肢はかなり広がるだろう。
賃貸アパートは今後ダブつくようだから、自治体などが家賃補助制度を設けてくれれば、かなり助かる。
家賃=住宅費用を社会保障に移転することは、切実で、しかも実行可能な政策課題である。
というわけで、佐竹さん。
上田が、会うなり、毛玉のついたレモン色のセーターを見て、「このユルさ! 他人とは思えない!」(p.56)と叫んだように、ぼくも他人とは思えなかった。
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