「阿修羅」のfeelという人の投稿の一部を転載。
大資本による資源や土地のエンクロージャー(囲い込み)が始まっていることへの危機感が日本人には不足していると思うので、この記事を転載する意義もあるだろう。私が一番懸念しているのは、実は鉱物資源や土地よりも水資源である。日本は世界でも稀な、水資源に恵まれた「山紫水明」の自然を持った国であったが、今やその水も飲料に適するものは減少しつつあり、さらに今後重要になる「海水淡水化」を行うには近海の汚染も激しい。まず水があってこそ、人間は生きられるのである。それが水道局民営化などによって大企業に国民の生命を握られるような悪夢的状況が来ないことを未来の子供たちのためにも祈りたい。
(以下引用)
途上国から最良の土地を奪取
アグリビジネスの活動は世界中に及んでいるが、近年ではアフリカや東ヨーロッパ、南アジアの国々で次々と土地を取得している。「ランド・ラッシュ(土地ラッシュ)」または「ランド・グラブ(土地奪取)」と呼ばれている現象で、開発途上国の耕作可能な土地を買い占め、国際市場向けの輸出用、あるいは自国向けに農業生産をすることだ。
これには、多国語企業だけでなく、サウジアラビアやアラブ首長国連邦などアラブ産油国、韓国や中国の企業も参入している。ウクライナの黒土地帯、ルーマニアやポーランドの肥沃な平原がまず狙われ、やがてパキスタン、インドネシア、スーダン、エチオピアなどに及んでいった。
未使用の土地を活用するのは、一見すると食糧増産への貢献だ。だが、土地を売る国はそもそも貧乏で、国内には飢餓が存在するところが多い。その国から、最良の耕作地を取り上げるのだから住民には打撃である。しかも、米国企業はエタノール用のコーン栽培を行うなど、作物自体が食用ではないケースも多いのだ。
国際農業開発基金(IFAD)などがイタリア人研究者ロレンツォ・コトゥラ氏らの国際研究グループに委託した研究によると、海外投資家が買い占めた土地は、所有権があいまいで、「(現地の)農民や遊牧民、猟師たちが伝統的に日々の糧を得てきたところ」であるという。もちろん、既往の農民らは怒り、土地所有権を主張するから、買い占めた側は、民間警備会社や傭兵に厳重な警備をさせて、土地住民を排除する。
研究グループは、こうした実情を調べた上で、「(土地売却は)現地の人たちにとって、土地の喪失になる可能性がある。アフリカ農村部では大多数の人が土地に依存しているだけに、土地喪失は大損害を与えることになるだろう」と指摘している。
国際的な規制が全くないため、買い占めの全貌は分からない。IFADの研究グループは、調査したエチオピア、ガーナ、マダガスカル、マリ、スーダンの五カ国について、「二〇〇四年以降だけで、二百五十万ヘクタールが投資家と契約された」と指摘した。このほかの推計では、世界全体で少なくとも二千万ヘクタールが買い占められたとの数字もある。事実とすれば、日本の半分以上にあたる肥沃な農地が、外国の手にわたったことになる。土地を追われた住民は、深刻な飢餓に直面している。
こうして見ると、世界食糧危機の要因は、互いに密接に関連していることが分かる。世界中の食生活が米国型になるにつれ、小麦やコメの生産から、コーンと大豆生産にシフトしていること。バイオ燃料への転換で、穀物価格が高騰したこと。先進・金満国の需要を満たすため、開発途上国の農民が土地を奪われていること。一連の現象を貫くのは、農業がますます工業化し、伝統的な零細・自給農業は駆逐されるという傾向である。この背景に、多国籍企業とその利益を代表する米国政府を見出すのは、難しいことではない。
国際機関をも黙らせる圧力
最後に、アグリビジネスが世界の学界やマスメディアに及ぼす力に触れておこう。彼らは自分たちへの批判に異常なまでの敵意を見せる。遺伝子組み換え作物の安全性については、反対論や慎重論を政治的圧力で押さえ込む上に、豊富な軍資金で言論も左右する。
二〇〇一年、英国の科学雑誌「ネイチャー」に、遺伝子組み換え作物がメキシコの在来種にいかに悪影響を及ぼしているかを調べた論文が掲載された。その直後、研究者向けに、「論文はでたらめ」という数千の中傷メールが送られた。メールの猛攻撃で「ネイチャー」はパニックに陥り、翌年の号で論文を取り消してしまった。その後、メールはモンサント社が雇ったPR会社の作成だったことが判明した。事件を暴いたジャーナリスト、ジョナサン・マシューズ氏は「連中にはひとかけらの倫理もない」と憤った。
アグリビジネスは巨額の寄付を通じて、学界も操る。米欧の名門大学で、「アグリビジネス」の研究プログラムを支援し、応援団を養成する。
英オックスフォード大のポール・コリアー・アフリカ経済研究センター所長は二〇〇八年、「フォーリン・アフェアーズ」誌への寄稿で、遺伝子組み換え作物に対して欧州で反感が強いことについて、「農業保護主義」「反米左派と健康マニアの消費者」と槍玉にあげ、食糧危機を打開する道として、遺伝子組み換え作物の導入と「商業的農業」を推進せよと唱えた。アグリビジネスが現にやっていることだ。権威ある雑誌に高名な学者が書けば、飢餓への立派な処方崖のように映ってしまう。
このような環境では、国際機関の調査や提言は必要以上に慎重になる。「エタノール問題」「投機マネーと穀物価格の関係」「ランド・グラブの実態」といった、食糧危機の原因を扱おうとすれば、アグリビジネスから激しい攻撃を招く。彼らの意を汲む米政府は、国際機関の最大の出資国だから、その調査や分析には、見えざる制約がかかる。これでは、国際機関の提案は、「飢えている人々を救おう」というあいまいなスローガンばかりになる。
二〇〇九年十一月にローマで開催されたFAOの「食料サミット」が、ほとんど「首脳」が加わらず、低調だったのもやむをえないことだ。
潘基文・国連事務総長が一日だけ断食して、「飢えている人々の痛みが分かった」と語るなど、サミットは完全な茶番に堕した。
日本では、自国の食料自給率が三九%しかないという状況もあって、「日本はどうやって食糧を確保するか」ばかりが議論される。しかし、世界食糧危機の背景を深く見ることなしに、有効な食禄安全保障戦略は編み出せない。過去数十年間、日本は米国の「自由貿易」「市場開放」の圧力にさらされ続けてきた。米国の自己中心的な農業政策・通商政策が世界中でどんな結果を生んできたのか、精査する時期に来ている。
大資本による資源や土地のエンクロージャー(囲い込み)が始まっていることへの危機感が日本人には不足していると思うので、この記事を転載する意義もあるだろう。私が一番懸念しているのは、実は鉱物資源や土地よりも水資源である。日本は世界でも稀な、水資源に恵まれた「山紫水明」の自然を持った国であったが、今やその水も飲料に適するものは減少しつつあり、さらに今後重要になる「海水淡水化」を行うには近海の汚染も激しい。まず水があってこそ、人間は生きられるのである。それが水道局民営化などによって大企業に国民の生命を握られるような悪夢的状況が来ないことを未来の子供たちのためにも祈りたい。
(以下引用)
途上国から最良の土地を奪取
アグリビジネスの活動は世界中に及んでいるが、近年ではアフリカや東ヨーロッパ、南アジアの国々で次々と土地を取得している。「ランド・ラッシュ(土地ラッシュ)」または「ランド・グラブ(土地奪取)」と呼ばれている現象で、開発途上国の耕作可能な土地を買い占め、国際市場向けの輸出用、あるいは自国向けに農業生産をすることだ。
これには、多国語企業だけでなく、サウジアラビアやアラブ首長国連邦などアラブ産油国、韓国や中国の企業も参入している。ウクライナの黒土地帯、ルーマニアやポーランドの肥沃な平原がまず狙われ、やがてパキスタン、インドネシア、スーダン、エチオピアなどに及んでいった。
未使用の土地を活用するのは、一見すると食糧増産への貢献だ。だが、土地を売る国はそもそも貧乏で、国内には飢餓が存在するところが多い。その国から、最良の耕作地を取り上げるのだから住民には打撃である。しかも、米国企業はエタノール用のコーン栽培を行うなど、作物自体が食用ではないケースも多いのだ。
国際農業開発基金(IFAD)などがイタリア人研究者ロレンツォ・コトゥラ氏らの国際研究グループに委託した研究によると、海外投資家が買い占めた土地は、所有権があいまいで、「(現地の)農民や遊牧民、猟師たちが伝統的に日々の糧を得てきたところ」であるという。もちろん、既往の農民らは怒り、土地所有権を主張するから、買い占めた側は、民間警備会社や傭兵に厳重な警備をさせて、土地住民を排除する。
研究グループは、こうした実情を調べた上で、「(土地売却は)現地の人たちにとって、土地の喪失になる可能性がある。アフリカ農村部では大多数の人が土地に依存しているだけに、土地喪失は大損害を与えることになるだろう」と指摘している。
国際的な規制が全くないため、買い占めの全貌は分からない。IFADの研究グループは、調査したエチオピア、ガーナ、マダガスカル、マリ、スーダンの五カ国について、「二〇〇四年以降だけで、二百五十万ヘクタールが投資家と契約された」と指摘した。このほかの推計では、世界全体で少なくとも二千万ヘクタールが買い占められたとの数字もある。事実とすれば、日本の半分以上にあたる肥沃な農地が、外国の手にわたったことになる。土地を追われた住民は、深刻な飢餓に直面している。
こうして見ると、世界食糧危機の要因は、互いに密接に関連していることが分かる。世界中の食生活が米国型になるにつれ、小麦やコメの生産から、コーンと大豆生産にシフトしていること。バイオ燃料への転換で、穀物価格が高騰したこと。先進・金満国の需要を満たすため、開発途上国の農民が土地を奪われていること。一連の現象を貫くのは、農業がますます工業化し、伝統的な零細・自給農業は駆逐されるという傾向である。この背景に、多国籍企業とその利益を代表する米国政府を見出すのは、難しいことではない。
国際機関をも黙らせる圧力
最後に、アグリビジネスが世界の学界やマスメディアに及ぼす力に触れておこう。彼らは自分たちへの批判に異常なまでの敵意を見せる。遺伝子組み換え作物の安全性については、反対論や慎重論を政治的圧力で押さえ込む上に、豊富な軍資金で言論も左右する。
二〇〇一年、英国の科学雑誌「ネイチャー」に、遺伝子組み換え作物がメキシコの在来種にいかに悪影響を及ぼしているかを調べた論文が掲載された。その直後、研究者向けに、「論文はでたらめ」という数千の中傷メールが送られた。メールの猛攻撃で「ネイチャー」はパニックに陥り、翌年の号で論文を取り消してしまった。その後、メールはモンサント社が雇ったPR会社の作成だったことが判明した。事件を暴いたジャーナリスト、ジョナサン・マシューズ氏は「連中にはひとかけらの倫理もない」と憤った。
アグリビジネスは巨額の寄付を通じて、学界も操る。米欧の名門大学で、「アグリビジネス」の研究プログラムを支援し、応援団を養成する。
英オックスフォード大のポール・コリアー・アフリカ経済研究センター所長は二〇〇八年、「フォーリン・アフェアーズ」誌への寄稿で、遺伝子組み換え作物に対して欧州で反感が強いことについて、「農業保護主義」「反米左派と健康マニアの消費者」と槍玉にあげ、食糧危機を打開する道として、遺伝子組み換え作物の導入と「商業的農業」を推進せよと唱えた。アグリビジネスが現にやっていることだ。権威ある雑誌に高名な学者が書けば、飢餓への立派な処方崖のように映ってしまう。
このような環境では、国際機関の調査や提言は必要以上に慎重になる。「エタノール問題」「投機マネーと穀物価格の関係」「ランド・グラブの実態」といった、食糧危機の原因を扱おうとすれば、アグリビジネスから激しい攻撃を招く。彼らの意を汲む米政府は、国際機関の最大の出資国だから、その調査や分析には、見えざる制約がかかる。これでは、国際機関の提案は、「飢えている人々を救おう」というあいまいなスローガンばかりになる。
二〇〇九年十一月にローマで開催されたFAOの「食料サミット」が、ほとんど「首脳」が加わらず、低調だったのもやむをえないことだ。
潘基文・国連事務総長が一日だけ断食して、「飢えている人々の痛みが分かった」と語るなど、サミットは完全な茶番に堕した。
日本では、自国の食料自給率が三九%しかないという状況もあって、「日本はどうやって食糧を確保するか」ばかりが議論される。しかし、世界食糧危機の背景を深く見ることなしに、有効な食禄安全保障戦略は編み出せない。過去数十年間、日本は米国の「自由貿易」「市場開放」の圧力にさらされ続けてきた。米国の自己中心的な農業政策・通商政策が世界中でどんな結果を生んできたのか、精査する時期に来ている。
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