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徽宗皇帝のブログ

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通貨制度という共同幻想
「蚊居肢」記事で、非常に有益な「経済学の初歩」授業(講座)である。
基軸通貨であることのメリットは、その地位を喪失した時、とんでもなく悲惨な目に遭うことと表裏の関係のようだ。
もともと、紙に数字を印刷するだけで、それが異常な価値を生じるという「通貨」そのものが、一種の幻想、国家や政府への信頼を基盤とした幻想である、と岩井克人はその通貨論で言っていたと記憶している。
つまり、その政府が信頼を失った時、通貨(特に紙幣)は紙屑になるということだ。それがたとえば第二次大戦敗戦後のドイツで起こり、ナチスの台頭を生む原因になったハイパーインフレーションである。

(以下引用)

2025年3月1日土曜日

基軸通貨「ドル」と非基軸通貨「円」の決定的相違


 


何度か示しているが、基軸通貨国と非基軸通貨国では貨幣を刷る意味合いがまったく異なる。




非基軸通貨国は、自国の生産に見合った額の自国通貨しか流通させることはできないのである。それ以上流通させても、インフレーションになるだけである。(岩井克人『二十一世紀の資本主義論』2000年)


ここで言う基軸国とは一体どういう意味なのでしょうか?ドルは世界の基軸貨幣です。だが、それは世界中の国々がアメリカと取引するためにドルを大量に保有しているという意味ではありません。ドルが基軸貨幣であるとは、日本と韓国との貿易がドルで決済され、ドイツとチリとの貸借がドルで行われるということなのです。アメリカの貨幣でしかないドルが、アメリカ以外の国々の取引においても貨幣として使われているということなのです。(岩井克人「アメリカに対するテロリストの誤った認識」朝日新聞2001年11月5日)




アメリカがドルが基軸通貨である限り、他国が交換の手段としてドルを保有し使ってくれるから、インフレにはなりにくい。そこが非基軸通貨「円」とは大きく違う。これは経済学者でもよくわかっていない人が多いから、一般の人には難解だろうがね。


 




ドルが「基軸通貨」であることは、だれもが知っている。だが、それがほんとうはどういう意味であるかは、経済学者ですら誤解していることが多い。


たとえば、世界中のひとびとがアメリカの製品を買うためやアメリカの債券や株式を買うためにドルを保有しているというだけでは、それがいくら大量であっても、ドルのことを基軸通貨とはよばない。それは、たんにドルが国際性をもった通貨であるというにすぎない。その意味でならば、円もユーロも、程度の差はあれ、国際性をもっている。



ドルが基軸通貨であるとは、タイの商社がロシアの企業からキャビアやウオッカを買うとき、その支払いが、バーツでもなくルーブルでもなく、ドル建てでおこなわれるということであり、ブラジルの企業やブラジルの政府が韓国の銀行から借り入れをするとき、借入金も返済金もともに、ウォンでもレアルでもなく、ドル建てでおこなわれるということなのである。すなわち、それは、世界中の貿易取り引き(通常の商品の売買)や金融取り引き(金融商品の売買)が、直接アメリカが介在していない場合においても、アメリカの通貨であるドルを使っておこなわれているということなのである。(岩井克人『二十一世紀の資本主義論』2000年)



経済学者でさえわかっていない人が多いのだから、巷間の経済評論家やらが言っていることはいまだもってデタラメと見なしたほうがいいよ、ワカルカイ?


 


 


現在のアメリカが最も焦っているのは、BRICS 諸国を中心にした脱ドル化拍車により基軸通貨崩壊傾向が歴然としてきたからだ。例えばトランプは既に2023年にこう言っているがね。


 




トランプ)我々の通貨ドルは崩壊している。もはや基軸通貨の地位を失うだろう。率直に言って過去200年で我々にとって最大の敗北だ。(2023 年4月5日)


“Our currency is crashing and will no longer be the world standard, which will be our greatest defeat, frankly, in 200 years.” Donald Trump, April 5 2023


 


基軸通貨の地位を失ったら米国はどうなるのか。インフレが起こる、さらにはハイパーインフレに向かうということがあり得る。


 




グローバル市場経済にとっての真の危機とは、金融危機でもなければ、それにつづく恐慌でもない。ハイパー・インフレーションである。そして、グローバル市場経済におけるハイパー・インフレーションとは、もちろん、基軸通貨ドルの価値が暴落してしまう「ドル危機」のことである。それは、基軸通貨としてのドルを支えているあの「予想の無限の連鎖」の崩壊過程にほかならないのである。


さて、このドル危機がグローバル市場経済のなかでおこるとしたら、それは何らかの理由で、世界中のひとびとが基軸通貨として保有しているドルを過剰に感じることから出発するはずである。世界各地の外国為替市場でドルがほかのすべての通貨にたいして売られ、ドル価値の下落がはじまるのである。もちろん、このようなドル価値の下落が一時的でしかないという予想が支配しているかぎり、ドル危機にはいたらない。だが、もしどこかの時点で、ドル価値がさらに下落するという予想のほうが支配的になってしまうと、事態は後戻りできなくなる。ほかのひとびとがもはや将来ドルを基軸通貨として受け入れてはくれないのではないかという恐れが広がり、 その恐れによって、実際にひとびとはドルを基軸通貨として受け入れることを拒否するようになるのである。恐れが自己実現し、世界中のひとびとはドルから遁走しはじめる。それは、たんにドルが世界各地の外国為替市場で売り浴びせられるというだけではない。それまで基軸通貨として、タイからロシア、ロシアから韓国、韓国からブラジルへとアメリカの国外を回遊しつづけていた膨大な量のドルが、アメリカ国内に大挙して押し寄せ、アメリカ製品との交換を要求することになるはずである。ドル紙幣をたんなる紙くずにしてしまうよりは、なんでもよいからモノのかたちにしておいたほうがはるかにましだからである。アメリカ国内もたちまちハイパー・インフレーションに突入してしまうだろう。(その結果、ドルがほんとうにたんなる紙くずになってしまうかもしれない。)ドルを基軸通貨として支えていたあの「予想の無限の連鎖」が崩壊し、ドルはほかの通貨と同様の、たんなるアメリカの通貨、しかも大幅に価値を失った一国通貨になり下がってしまうのである。


もしこのような「ドル危機」が実際におこることになれば、そのとき、基軸通貨ドルの媒介によって可能となっていた貿易取り引きも金融取り引きも、その大部分が不可能となってしまうはずである。世界は細かく国ごとに分断されるか、いくつかのブロックに分割され、貿易も金融も各国同士のバーター取り引きかブロック内の取り引きに制限されてしまうことになる。ドル危機の行き着く先は、グローバル市場経済そのものの解体にほかならないのである。(岩井克人『二十一世紀の資本主義論』2000年)


 


もっともすぐにはこうならないがね、マイケル・ハドソンが当面はドル高になると予想しているように[参照]。問題は数年後だろうね、ロシアはこれを間違いなく視野に入れて米国と交渉するだろうし、プーチンが次のように「歴史の分水嶺」を語ったのも、その主要部分はドル覇権の崩壊に関わっている筈。


 



◾️プーチン、於ヴァルダイクラブ 2022年10月27日


我々は歴史の分水嶺にいる。この先には第二次世界大戦の終結以来、恐らく最も危険で予見できない、とはいえ最も重要な10年間が待っている。


We are at a historical crossroads. We are in for probably the most dangerous, unpredictable and at the same time most important decade since the end of World War II.


(Vladimir Putin, Valdai International Discussion Club meeting, October 27, 2022)


 


当然次のような予想も出てくる。




◾️クリス・ヘッジズ「 帝国は自己破壊する」2025年2月11日


Chris Hedges: The Empire Self-Destructs February 11, 2025


帝国の解体によってドルが世界の準備通貨でなくなると、米国は国債を売却して巨額の赤字を返済することができなくなる。米国経済は壊滅的な不況に陥るだろう。


これは市民社会の崩壊、特に輸入品の価格高騰、賃金の停滞、高失業率を引き起こすだろう。少なくとも750の海外軍事基地と肥大化した軍隊への資金提供は維持不可能になるだろう。



帝国は瞬く間に縮小し、 帝国はそれ自体の影となる。 ハイパーナショナリズムは、抑えきれない怒りと広範な絶望に煽られ、憎悪に満ちたアメリカンファシズムへと変貌を遂げるだろう。


Once the dollar is no longer the world’s reserve currency, something the dismantling of the empire guarantees, the U.S. will be unable to pay for its huge deficits by selling Treasury bonds. The American economy will fall into a devastating depression. 


This will trigger a breakdown of civil society, soaring prices, especially for imported products, stagnant wages and high unemployment rates. The funding of at least 750 overseas military bases and our bloated military will become impossible to sustain. 



The empire will instantly contract. It will become a shadow of itself. Hypernationalism, fueled by an inchoate rage and widespread despair, will morph into a hate-filled American fascism.

より詳しくは▶︎ 「アノ連中が自己破壊した帝国の死骸を貪り喰う暗黒時代が訪れるだろう」



さらに言えば、ロシア自体だって戦争経済で、ハイパーインフレ懸念がないわけではない[参照]。米国側の交渉の切り札のひとつはおそらくここにある。



直近のデータは次の通り。





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