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徽宗皇帝のブログ

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野党は「経済問題」で与党に勝るプランを出せ
「泉の波立ち」から転載。
野党支持者にとっては聞き苦しい部分もあるかと思うが、問題の本質をズバリと突いている、久々の良記事だと思う。ここでは主に民主党(民進党)の失敗が批判されているが、有効な経済政策を示せなかった(私に言わせれば、批判ばかりの暗いイメージで、人々に明るい希望を与えきれなかった)ことが野党全体の敗因であり、それは民主党(民進党)以外の共産党、生活の党、社民党にも通じる批判である。この批判に耳を傾けないと、次回の国政選挙も大敗するだろう。

なお、景気拡大によるパイの増大こそが望ましい経済政策であり、「金持ちから奪って貧民に与える」ような共産党的なプランは、貧民の間でさえ支持する人はほとんどいないだろう。なぜか、日本人はそういうところで変にプライドが高いからである。
社会構造(所得構造)の改革による貧富の差の解消は、まず有効な景気拡大策を提示して、野党政権が信頼に値することを証明してからでよい。



(以下引用)赤字部分は徽宗による強調。

2016年07月12日

◆ なぜ野党は敗れたのか?

 参院選では、与党が圧倒的に勝利した。それはなぜか? 与党の勝因と野党の敗因を分析する。

 ──

 与党が圧倒的に勝利したことから、「与党が信認された」と見なす意見がある。特に、自民党側がそうだ。次のいずれの政策も信任されたと見なす。
  ・ 改憲する (集団的自衛権も容認する)
  ・ 保育園不足の放置
  ・ サービス残業の放置
  ・ 残業手当ゼロ法案の推進
  ・ 法人税の減税
  ・ 消費税の増税
  ・ サラリーマンの年収低下 
  ・ 失敗だらけのアベノミクス


 しかし、このような政策を国民が支持しているとは思えない。むしろ、たいていの国民が批判していると言えるだろう。

 ではなぜ、自民党の政策は支持されていないのに、自民党は圧倒的に勝利したのか? これが問題となる。

 ──

 この問題に、私なりに答えよう。
 今回の選挙では、自民党の政策が信任されたのではない。自民党を本気で支持している人はろくにいなかったと言える。ただし、国民の大多数は、こう思っていたはずだ。
 「自民はクソだけど、野党はもっとクソだ」


 これが与党の勝因だ。いや、これが野党の敗因だ。与党が勝利したというより、野党が勝手にこけたから、与党が勝利しただけだ。
 比喩的に言えば、サッカーの試合で、与党は何もしていないのに、野党が勝手にオウンゴール(自殺点)で失点しただけだ。見ている観客としては、馬鹿馬鹿しくて仕方がない。……これが真相だ。

 ──

 では、野党の失敗とは何か? それは、経済政策だ。
 アベノミクスは、ただの量的緩和(黒田バズーカ)だった。これは、円安をもたらすことで、輸出企業の好決算と、労働者の実質賃金低下をもたらした。結果的には、貧富の差を拡大しただけであって、何も状況を好転させなかった。
 データは、再掲すると、次の二つだ。
  ・ サラリーマンの年収低下 
  ・ 失敗だらけのアベノミクス

 データを見る限り、アベノミクスはただの失敗した経済政策であるにすぎない。しかし、それでも、国民は支持した。なぜか? こう思ったからだ。
 「アベノミクスは、失敗したが、少なくとも、不況を改善しようという意欲はあった。結果は失敗だったが、方向性は悪くなかった」


 一方、野党に対しては、どう思ったか? こうだ。
 「民主党は、緊縮財政による財政改善ばかりをめざしており、不況を悪化させようとするばかりだ。これじゃ、地獄をめざすようなものだ」


 これは、間違いではない。勘違いでもない。民主党はまさしくこの方針を取ってきた。民進党となった現在も同様である。公約を見ても、景気改善のための手は何一つ打とうとしない。それどころか、消費税増税をしなかったことを「公約違反」と見なして批判していたほどで、根っからの財政改善主義だ。つまり、不況を悪化させる主義だ。
 これでは、たいていの国民が不支持になるのも、当然だ。これがつまりは、「野党のオウンゴール」の正体だ。

 ──

 実を言うと、これは、昔からずっとあったことだ。
 (1) 細川内閣で、消費税を3%から7%にアップしようとした。
   (さらに、名前を「国民福祉税」と変えて、だまそうとした。)
 (2) 菅直人内閣で、参院選の直前に、消費税アップ(10%へ)を打ち出した。


 この二つは、国民にとって、「寝耳に水」の大増税だった。一夜明けると、突然、大幅な増税が提言されたのである。それも、ほとんど「決まり」という感じで、政府・与党の方針として示された。

 で、どうなったか? 
 国民は、怒りに怒り狂った。それまで民主党支持だった人々も、「裏切られた」と思って、大幅に離反した。結果的には、いずれも、選挙では大敗した。特に、菅直人内閣はみじめだった。それまで非常に高い支持率を得ていたのに、この増税の方針のあとでは、支持率が一挙に低下して、参院戦では惨敗した。

 このあと、野田内閣も、「消費税増税」のためにしきりに努力して、民主党の支持率を徹底的に激減させた。この時点で、民主党の命脈はほとんど断たれたと言える。
 民主党の駄目党首というと、鳩山が有名だが、彼は、本人に駄目評価が出ただけであって、民主党そのものを壊滅させたわけではない。
 一方、菅直人と野田佳彦は、圧倒的な支持を得ていた民主党政権を、徹底的に破壊してしまった。民主党壊滅の張本人は、この二人だと言える。

 ──

 ここまで見ると、世間の勘違いもわかる。世間の多くは、
 「民主党は無能だ。特に経済政策が駄目だ」
 と思っている。それは、ある意味、正しい。しかし、本当は、そうではない。正しくは、こうだ。
  ・ 民主党の政策の大部分は、妥当だった。
  ・ 経済政策は、基本的には、普通だった。
  ・ 消費税増税という方針だけが、決定的に駄目だった。


 要するに、民主党の失敗とは、「大幅増税」という方針だけなのである。これだけのことで、
 「民主党の経済政策はまったく駄目だ」
 と見なされた。また、
 「民主党のやることは駄目なことばかりだ」
 「民主党の言うことは嘘ばかりだ」
 と見なされた。坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、という感じ。人々の記憶は、憎悪によって、過大に醜く修正された。

 比喩的に言えば、こういう感じだ。
 「好きになって、愛しあって、幸福な結婚生活を送っていたら、ある日突然、徹底的に裏切られた。これまでの幸福をすべてひっくり返すほど、極端に手ひどく裏切られた」

 ──

 ここまで見れば、民主党がなぜ支持されないか、明らかだろう。
 それは、人々に「好きな相手に裏切られた」という思いがあるからだ。
 ひるがえって、自民党ならば、最初から、人々は愛さなかった。「こいつは、酒場の女みたいなもので、汚れきっている。金で身を任せたことは何度もある、薄汚い女だとわかっている」と思っていて、まったく信用していなかった。単に、「こいつと付き合うと金儲けに有利だ」と思って付き合っているだけだった。愛したこともなかった。だから、自民党がどれほど薄汚いことをしようと、人々は気にしなかった。
 民主とは違う。「この女は清純だ。汚れを知らない女だ。愛することのできる女だ」と思った。そう思って、愛して、結婚した。(政権を与えた。)その後、この女はけっこう無能で馬鹿で信頼できない女だとわかったが、「薄汚い自民よりはマシだ」と思ったので、人々は愛していた。結婚生活も続けていた。ところが、ある日、目覚めてみると、この女は決定的に国民を裏切ったのである。国民の金を勝手に横流ししようとした。「財務省」という詐欺師を信じて、「大金を出しましょう」という口車に乗って、国民の全財産を盗み取ろうとしたのだ。盗む寸前に、発覚したので、国民は助かった。しかし、国民に相談もしないで、勝手に全財産を横流ししようとしたことを見て、国民がこの女に対してもつ信頼は、すっかり消え果てた。仮に、このままこの女に任せていたら、国民は路頭に迷うところだった。国民にできることは、この女と離縁することだけだった。そしてもう二度と付き合うまい、と国民は誓った。

 愛する女を信頼して、その信頼を裏切られたこと。これこそが、国民が民主党を嫌う根本的な理由だ。
 そして、その真相を理解しない限り、野党側が政権を取ることはずっと無理だろう。

 その一方で、与党側が「自分たちは信認された」と思うことは、とんでもない勘違いだということになる。国民は自民党を愛したのではない。自民というのは薄汚い商売女みたいなものだとわかっている。財界に体を打って、自分が金を得ることばかりを考えている商売女。こんなものを信認するはずがない。
 ではなぜ、国民は与党に政権を与えたか? 簡単だ。この女を愛したからではなく、「自分を裏切った女(元妻)が憎いから」であるにすぎない。

 そして、いつの日か、国民は真に愛しあえる女を見つけるだろう。そのとき、自民党は国民からは、「使い古されたボロ雑巾」のように捨てられる運命にあるのだ。

 ※ その新しい女(将来の妻)が、財政緊縮派であるかどうかで、国民の命運は決まる。



 [ 付記 ]
 民主党が財政緊縮路線を取ったのは、なぜか? それは、「厳しい路線が、国家の財政破綻を救うはずだ」と信じたからだ。「たとえ国民に不人気であっても、国家の財政破綻を救うことこそが大切だ」と信じたからだ。これは、民主党が善良だったからだ、と言える。
 そして、その善良さは、経済学的な無知を前提としていた。つまり、「経済学的な無知」の上に立つ「善良さ」ほど、国民にとって有害なものはない。
 「経済学的な無知」の上に立つ「善良さ」に比べれば、「ただの利己主義者」の方がマシだ。それが自民党勝利の理由である。

 では、本当に大切なのは? 善良さも、利己主義も、お呼びではない。大切なのは、「経済学的な真実を知ること」だけである。そうすれば、「不況を脱する方法」を取れただろう。
  ・ 自民党 …… 不況を脱しようとして、無効な方法を取った。
  ・ 民主党 …… 不況を脱することより、財政再建を優先した。

 この二つのかわりに、「不況を脱しようとして、有効な方法を取る」という政党が出たとき、国民は真に救われるだろう。



 【 関連サイト 】

 → 日本の経済政策は、なぜ右派と左派でねじれているのか?

 リベラルは財政緩和であるべきなのに、なぜか日本のリベラルは財政緊縮である、という矛盾を指摘している。慧眼だ。


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