この部分を載せたのは、肥料価格の推移のグラフ(最初のグラフ)が非常に興味深いからである。私の考えでは、肥料というのは基本的に「化学肥料」なのであり、つまり自然現象や天候とは無関係に「投機の仕方によって価格が左右される」のではないか、というのがこのグラフを見て思ったことだ。つまり、肥料価格高騰は人災である。農業の土台である肥料価格が投機対象であるのが、時折起こる食料危機の本質なのではないか。
投機の結果だから、上がった肥料価格は上がったままにはならない。なぜか、その後下がっていくのである。それがグラフから読み取れる「現実」だ。2008年の肥料価格高騰は、明らかに「リーマンショック」の副次作用、つまり、銀行界や証券界の救済のために、肥料業界に投資するカネが停止されたのだということだ。だから、時間が経過したら、肥料価格はだんだんと下がっていったと見られる。つまり、リーマンショックが一段落して投機筋(金融界)に資金の余裕が生まれたのだろう。
これは、金融が見えないところで世界の人々の生命を左右しているという、「資本主義の悪夢」ではないか。そこに政府が関与できないなら、民主主義はカネの前に無力だということだ。逆に言えば、中国のような、政府が企業を管理できる政治こそが本物の民主主義だとすら言える、と断定はしないが、新自由主義とは「企業の自由の最大化(政府の企業制御力の無力化)」であり、それが西側世界を本当に経済的な意味で破産させつつある、と私は見ている。
肥料価格と金融業の投資傾向の密接な関係について言えば、現に今、米国その他の大銀行の倒産の連鎖と、肥料価格高騰が連動しているのである。
(以下引用)
原因はそれこそたくさんあるでしょうが、2022年から 2023年の食糧危機に関しては、
「肥料価格の天文学的な高騰」
は、相当関係していたと思います。
この状況が続くと、生産者が持ちこたえられなくなる
以下は、肥料価格の 2022年までの推移です。
西暦2000年から2022年4月までの肥料価格 (水色のライン)の推移
国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS
2022年の肥料価格は、安値から 4倍、5倍になっていたんですから、世界中の農家の方々(中国とロシアを除く)はちょっとやっていられない感じだったと思います。
しかし、注目していだきたいのは、その 2022年の同じ程度に肥料価格が、急激に上昇したのが、「 2008年」だということです。「リーマンショックによる金融危機の年」です。
一概には言えないものの、この 21世紀の肥料価格の推移を見ている限り、
「金融危機下では、肥料価格は上昇しやすい」
ということも言えなくもないのかもしれません。
食料価格そのものについては、何ともいえない部分があり、例えば、「1930年代の大恐慌では、穀物価格は大幅に下落した」のです。
> 1932年には、とうもろこしの価格が4分の1になるなど食糧価格も大きく下落。その後の食糧難の原因にもなっていく。 (kodomoclinic.info)
2007年から 2008年の金融危機前後は、食料価格は「大幅に上昇」したのですが、
「リーマンショック後から大幅に下落し始めた」
ことが示されています。
2009年-2011年の食料価格の推移
archive.org
しかし、2008年の金融危機の時には「大きな戦争もなかった」ですし、今のようなインフレもありませんでした。
この 2008年というのは、生産者の方々にとってみれば、肥料は高い、作物は高くならないという、さんざんな時だったようです。
それで、先ほどの、日本の酪農家の方々の 6割が離農を検討しているという報道を見まして、「農業生産者の場合も同じなのではないか」と思った次第です。農業の方々でも、事業継続が厳しくなっている方々は潜在的にかなりいらっしゃるのではないかと。
そもそも、主要国は、人口に対しての農業生産者の数が少なすぎるのです。
以下は、アメリカのチャートですが、1840年から 2000年までの人口に対しての農業生産者の比率の推移です。
1840年から 2000年までの米国の農業生産者の比率
vox.com
これは、2000年までのチャートですが、その後はどうなっているかというと、これは、人口比ではなく、「農作地面積の推移」です。
さらに衰退し続けていることがわかります。
もちろん、農業技術は以前よりはるかに上昇したことで(遺伝子組換え作物などの登場も含みますが)、少ない人数で大規模生産はできるようになってはいます。
しかし、食物生産の現場の状況は、「もう、いろいろと限界なんじゃないだろうか」という気は、かなり前からしていました。
日本もアメリカも、農業生産者の方々の高齢化が非常に進んでいて、今のように収益性がなくなってきてしまいますと、
「赤字を抱えてまで続ける必要はないな。トシでもあるし」
と思う方々が多数いても不思議ではないです。
つまり、「生産者の数そのものが極端に減少していく時代」に直面しているということです。
こういう要素を含めて、今後、仮にですけれど、景気後退あるいは不況あるいは恐慌というようなことになっていった場合、今度は、数年のスパンで、
「本当の食料危機」
がやってきても不思議ではない気がします。
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