【香港時事】中国全国人民代表大会(全人代)常務委員会が11日、中国や香港への「忠誠」がない香港立法会(議会)議員の資格剥奪を決定した。12日付の香港紙・リンゴ日報は「立法会は政権への監視機能を永久に失った」と1面トップで報道。決定は議員に限らず幅広い層に適用可能なもので、香港社会で民主派排除の動きが加速しそうだが、市民の反応は薄い。
11日の常務委決定は、香港政府に議員資格の剥奪権を付与することで、香港側での司法手続きを経ずに議員の排除を可能とする強硬手段だった。香港政府は決定が公開された約10分後、4議員の資格喪失を発表。中国共産党政権からの上意下達を強く印象付ける動きで、4議員のほか抗議のため辞職を表明した15議員は11日夕に記者会見し、「一国二制度の正式な死亡宣告だ」と絶望感をあらわにした。15議員は12日、辞表を提出した。
今回の決定は選挙への立候補時にも適用される。2021年に延期された立法会選を含む今後の選挙で民主派候補の一掃が予想され、「立法会で異議が出ることは二度とない」(リンゴ日報)との厳しい見方も出ている。
決定では国家への「忠誠」を「立法会議員を含めた公職人員」に要求。香港の林鄭月娥行政長官は11日、常務委の判断に沿う形で「関連法整備を進める」と述べており、裁判官や区議会議員、一般の公務員らに対しても「愛国心」の有無が採用や解雇の基準になる可能性がある。
一方、民主派を支持する市民からは「立法会への期待はとっくに失っている」と冷ややかな声も聞かれる。昨年の反政府デモに複数回参加した会社員女性(31)は「政権の思うままになる立法会の存在自体が既に無意味。議員はもっと早く辞めるべきだった」と指摘。若手民主派らは、立法会よりもインターネットなどを通じて諸外国に中国への制裁を訴える活動を重視している。
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