それが社会にとって「正しいこと」とされているため、反論どころか疑問点を挙げることすらためらわれることがある。最近で言えば、7月1日から始まったプラスチック製買い物袋(レジ袋)の有料化義務化などがそうだろう。レジ袋有料化に伴う混乱に振り回されるコンビニなどの小売店や消費者の戸惑いについて、ライターの森鷹久氏がレポートする。
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「エコなのかもしれませんが、店としては全然得ではない。むしろ損が大きくなり続けている…」
こう危機感を募らせているのは、千葉県内のコンビニ店オーナー・中村慎吾さん(仮名・60代)。7月1日から「レジ袋有料化」がスタートしたが、買い物のためにわざわざ袋を持ち歩く面倒くささに加え、このコロナ禍の最中なら従来のレジ袋を使うほうが衛生的ではないのか、といった疑問も噴出し、賛否両論といった印象だ。さらに、現場からは早くも「失敗だった」との声が上がっているのである。
「例えばですよ、缶ビールやチューハイを5、6本買っていくお客様がいて、レジ袋は有料ですと案内すると、んじゃ2本でいいや、と仰るんです。要は、袋は買いたくないから手で持てる分だけしか買われない。たくさんの商品をカゴに入れてレジまで来て、袋が有料であると聞いた瞬間ムッとして、全部キャンセルで、とそのまま店を出る方もいる。そもそも、お客様一人一人にいちいち説明しなければならず、それだけでも大変なタイムロス。朝や昼などの繁忙帯は本当に大変で、シフトを一枚増やしたほど」(中村さん)
筆者も、近くのコンビニやスーパーに行く度、エコバッグを持っていくことに大きなストレスを感じている。外出時、ふと何かを買わなければならないと思い出しても、バッグがなければ「通販でいいや」となる。エコバッグ持参でスーパーに行っても、そのバッグに入る分しか買わないから、あれも足りないこれも足りないと目的外のものをカゴに入れることを躊躇うようにもなった。消費者にとっては節約になるのかもしれないが、店からしてみれば潜在的な購買量が減って損が発生しているとも考えられる。
また、高齢者にとってもエコバッグはかなりハードルが高いようだ。中村さんのコンビニの女性利用客(70代)がいう。
「エコバッグだと店員さんが袋に入れてくれないから自分でやるでしょう? でももたついちゃうのよ。最近は飛沫感染防止用のシートがあるから、それが邪魔しちゃって余計に入れにくい。並んでいる他の若い方に遅い、と文句を言われたこともありますよ。もうコンビニを使うのが怖い」(70代の女性客)
コンビニだけではない。中~大規模小売店でも、レジ袋有料化を巡りトラブルが起きているという。
「レジ袋が有料でクレームが来る、というのは日常茶飯事。一時間に一回というレベルで、商品をレジに置きっ放しで帰られるお客さんがいる。もう一つ大きな問題は、多くの商品をお買い上げになっても、意地でも袋を使わないというお客さんの存在です。店の出口から堂々と、たくさんの商品を抱えて出られます。警備員からしたら、やたら堂々とした万引きにも見えますし、それが元でトラブルにもなっています。商品一つ一つに会計済みのシールを貼るわけにもいかず…結局、万引きだって増えてます。失策ですよ、これは」(都内の小売店マネージャー)
「エコ」と言われたら反論する機会が全くない風潮で、問題点を論じることも難しく、無料レジ袋がなくなって、かえって面倒なことや困ることが増えた。筆者の自室の小さなゴミ箱に設置する袋すらない。結局そのために小さいビニール袋を買ってくるのだが、この袋を使うことがレジ袋を使うよりもエコなのだろうか。
JR東日本が運営する「駅ナカコンビニ」でエコバッグが無料配布された際には、早朝のオープン前から客が並んだ。意識が高いことは良いことかもしれないが、新型コロナウイルスの感染を防ぐために行列は避けるべきと言われるなか、身のまわりで起きていることに対してどうもチグハグな感じがするのは、筆者だけではないはずだ。
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