こんにちは、らくからちゃです。
遅ればせながら、やっと弊社まで働き方改革の波がたどり着いたのか、社内でも色んな意見を耳にするようになりました。残業時間の制限やリモート勤務によるワーク・ライフ・バランスの改善など働く環境がよくして、労働生産性を高めて行く方法をみんなで考えるのは大変有意義なことです。
最近聞いた話で、面白いなあと思ったものがありましたので、簡単にご紹介したいと思います。
とある副社長の改革
ことの発端は、とある30人ほどの規模のシステム開発会社の社長が体調を崩してダウンしてしまうところから始まります。取引量は毎月のように増えていたものの、そのことから生じる過労により、心身ともにダメージを受けすぎていたことが原因でした。
とはいえ、ひとりの会社では有りませんし、社員を路頭に迷わせることは出来ません。そこで社長は、以前から付き合いのあった別のシステム開発会社に『経営権を譲渡するから、誰か自分の代わりが人材を出して欲しい』と依頼を行いました。
要請を受け、同社との取引を最初から担当していた役員が『いままでの付き合いもあることだし、こちらとしても倒産されるのは困る』と、同社の副社長を引き受けることとなります。
着任した副社長は、まず社員全員の面談から始めることにしました。そして売上や財務の状況も確認した上で、ある宣言を社内に出します。
今後は仕事の速度が2倍だからといって、2倍の量の仕事を割り振ることは禁止する。
当たり前ではありますが、ひとりひとり作業の速度は異なります。急増する仕事量に応えるために、同社ではかなりの負荷が『出来る人』に集中する構造にありました。単純に数値化できるものではありませんが、その差は最大で2倍くらい。
2倍の量の仕事をこなしても、2倍のお賃金が出るわけではありません。そのことに不満を持っている人もいましたが、もともとチームワークが良かったせいか、なんとかみんなで分担しながらこなす。そんな状況にありました。
そこにいきなり
割り振る作業量は基本的に均等に行う。早く仕事が終わったものは、趣味の開発をするなり、漫画を読むなり、スマホで遊ぶなりご自由に。ただ仕事の進め方について、アドバイスを求められたらきちんと応えること。ただし、仕事そのものを肩代わりするのは禁止。
さてその結果どうなったのか。
2倍速の仕事の価値は
まずは劇的に、パフォーマンスの差が見える化されました。さっさと終わらせてのんびり遊んでいる社員と、ずっと画面にかじりついている社員とに分かれたのです。ここまで差があるということは、当事者たちも気がついていなかったようです。
もしこれが、給料や評価の差だったら、ここまで明確にはなっていなかったことでしょう。むしろ目の前の仕事をただガムシャラにこなすことに必死で、どうやって効率化しようか?なんて殆ど考える暇もありませんでしたから。
もし仕事の早い人に、秘訣を聞こうとしても、彼もまた忙殺されている中では中々出来ません。それが気軽にアドバイスを貰いにいけるようになったため、仕事が遅かった人も目に見えて速度が改善するようになります。
基本的にこの業界は、コスト=人件費ですので、仕事のスピードが2倍になればコストも半分になります。でもスピードが早いということはただコストが安くつくだけではありません。期間が短縮されれば、市場環境が変わることへのリスクを減らすことも出来ますし、競争優位にもつながります。
更に、ただ社内の改善をするだけでなく、スピードが早いことを価値として認めてくれる相手を中心に取引を増やしていきました。
どんなに早く仕事を終わらせても『え、そんな早く終わったの?別に一ヶ月後でも良かったのになあ』なんて言われてしまっては意味がありません。そこに、しっかり魅力を感じてくれるお客さんであれば、『あそこは多少高くとも仕事が早い』と長期的にもメリットがあります。
そんなこんなを繰返している中で、利益を順調に伸びていき、1年とちょっとで2倍くらいになったそうです。
大切なのは価値を共有することだ
勿論、最初からうまくいく保証もなかったわけですし、一致団結して進めたわけでもない。当初は、『一番仕事が出来るアイツを遊ばせて置くのは勿体無い』といった声も上がりましたが、『アイツはいざという時のためにとっておきましょう』と言って説得しきったこともありました。
仕事が一番できるエースに、空いているからといって誰でも出来るような雑用を割り振っちゃいけない。いざといったときのための備えとして開けておき、普段はチーム全体の効率を高めるための活動に費やすべきなんです。
この改革が上手くいったのは、下記のような要因が考えられます。
- メンバー間のパフォーマンスの差が大きかった
- もともとチームワーク自体は悪くなかった
- 速さが価値だと認めてくれる取引先がそれなりに居てくれた
- 多少無茶なことをしてでも、何とかしなきゃという機運があった
そのまま他社で同じことをやっても上手く行く保証はありません。ただ凄く汎用的な考え方だなあと思ったのが
量は質を生み出さないが、質は量を生み出す。量が質を生み出すような仕事があったとしても、それは時間さえかければ誰でも出来るようになるということなんだから、そんな仕事は取りに行くべきではない。
よく、(特に体育会系の営業さんなんか)量は質に転換されるなんて言う人が居ます。確かに、スポーツのように体で覚えるものや、簡単なレベルの仕事であればそうかもしれません。でも個人が長時間労働することでしかパフォーマンスを高めることがしか出来ないのであれば、会社として積極的に取り組むべきではありません。得られた知見をみんなで共有することによって、成果を生み出すことの出来る仕事にこそ注力していくべきなんです。
価値を高める仕事をすべきで、価値を認めてくれる相手と取引すべきで、そしてそのビジョンをみんなで共有すべき
なんてことも言っていましたが、ただ良い仕事をするだけじゃだめなんです。それをきちんと、認めてくれる人たちと取引をして初めてその意味が発揮されます。そのためには、内外に対して『我々は高い価値を生み出す仕事をするんだ』ということをしっかりと伝える必要があります。
さてこの話は、下記の記事でご紹介した『家族揃って晩御飯を食べよう』の会社が買収した会社での話です。
個人の生産性が上がっても会社としてはたいして意味はない。組織として成長し続ける方法を考えることこそが経営。
と言われて、ああこの会社は一貫しているんだなあと。でも、これが全てのような気がします。まずは上に立つ人間が、きちんと現状を認識した上で、『目指したいもの』の姿をみんなが納得できる形で伝えていくことこそが、大事なんじゃないのかなあと思う今日このごろです。
ではでは、今日はこのへんで。
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