習近平が李強を新チャイナ・セブン入りさせたのは、李強の民間企業に強い側面を評価したこともあるにちがいない。


 全人代では、今年はGDP成長率5%を目指すと発表しているが、その多くは民間企業の活性化に負うところが大きい。今後もその傾向は強くなるだろう。


 拙著『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』のp.175に掲載した【図4‐2 中国企業別有効特許の構成】にあるように、特許の79.5%は民間企業によって占められている。国有企業はわずか5.7%だ。その図表を、念のために下記に転載する。



『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』の図表4-2から転載
『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』の図表4-2から転載


 習近平政権が国有企業を重視して民間企業を軽視しているという日本のメディアの大合唱とは真逆の現実が中国にはある。


 基礎研究の約80%を民間企業が占めていることを頭に入れた上で、以下の調査結果をご覧いただきたい。


◆重要なテクノロジーのグローバル・レースにおける中国の世界ランキング

 オーストラリアのAustralian Strategic Policy Institute(ASPI)(オーストラリア戦略政策研究所)は、今年3月2日に<重要なテクノロジーの追跡 ―未来の力をめぐるグローバル・レース>という調査結果を発表した。そこでは、経済や安全保障などの基盤を形成する重要な技術の国別競争力のランキングを図表を使って示している。調査項目は44項目にわたり、そのうち37項目に関して中国が世界1位となっている。


 以下、ASPIの結果を日本語に翻訳して紹介したい。


 一番右側の列にある数字は見えにくいと思われるので、少しだけ説明すると、たとえば最初の行「ナノスケール材料と製造」の右端にある「10/10」は、「上位10ヵ国の内、1位の国が占める割合」を示している。これはすなわち、「上位10ヵ国の内、1から10位までが、すべて中国である」ことを意味している。


 次にある数値「8.67」は「1位の国と2位の国の割合」を示しており、この場合は「中国が58.35%であるのに対してアメリカが6.73%でしかないので、中国がアメリカより8.67倍強い」という数値を意味している。


 最右端の列にある「high, medium, low」は、「1位の国の全世界に対する独占率」が「高い、中くらい、低い」の3種類を示している。


 それでは順次掲載しよう。












以上すべてASPIのデータを筆者が和訳して再作成
以上すべてASPIのデータを筆者が和訳して再作成


 冒頭に書いたように、中国はアメリカにより全方位的に封じ込めを受け、ハイテクに関して次から次へと激しい制裁を受けているが、それでもここまで凄まじい競争力を持っている理由は、拙著『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』の第三章で考察した通りだ。特にp.126にある【制裁を受けても「製造大国」になった中国のからくり】に詳述した。p.120に書いた【アメリカの制裁で沈没した日本の半導体】とあわせてご覧いただくと、日本の戦略のなさとアメリカ崇拝と絶対服従がもたらした日本国民への不利益が浮き彫りになると思う。


 中国を考察することにより、日本国民のために、日本政府のあるべき姿を読者とともに考えていきたい。