東日本大震災が発生した2011年から20年までの約10年間で、遺書に震災のことを記しているなど「震災関連自殺」をした人が240人に上ることが5日、厚生労働省と警察庁の集計で分かった。このうち福島県で亡くなった人は半数の118人。厚労省は震災による心の傷を抱えた人は今も多いとみて、相談窓口の利用を呼びかけている。
厚労省などは遺書情報のほか、同震災の避難所や仮設住宅で自ら命を絶った人、同震災で自宅や職場が大きな被害を受け、後に自殺した人などを「震災関連自殺者」と定義し、11年6月から集計している。
20年末までの震災関連自殺者は240人(男性159人、女性81人)で、福島県のほかは宮城県が58人、岩手県は54人。茨城など7都府県で計10人だった。年代別では50歳代が最多の56人で、60歳代も53人に上った。「震災関連死」に該当するかどうかは各自治体が判断している。
年ごとにみると、11年は6月以降だけで55人に上り、翌12年から17年までは毎年20人以上が亡くなっていた。18~20年も年5~16人が亡くなっており、同省は「被災地の自殺問題は今なお深刻だ」としている。
東京電力福島第一原子力発電所事故が起きた福島県では、12年以降も自殺者が10人を超える年が目立つ。同年から相談窓口「ふくここライン」を運営する県精神保健福祉協会によると、当初は避難生活のストレスなどを訴える声が多かったが、その後は「住む場所が決められない」といった悩みも寄せられている。
住民や避難者らのストレス調査に携わっている福島県立医科大の前田正治教授は「故郷を離れ、孤立を深めている被災者もいる。実態把握を続けて対策につなげるべきだ」と指摘する。
厚労省は、悩みを抱える人の電話相談窓口として「こころの健康相談統一ダイヤル」(0570・064・556)を設置し、利用を呼びかけている。
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