地球の記録 - アース・カタストロフ・レビューさんのサイトより
https://earthreview.net/worst-droughts-in-decades-2023/
<転載開始>

eastcoastdaily.in

かつてない干ばつ

世界の食糧安全等についての調査メディアである GRO インテリジェンス社が、先日、「ウクライナの小麦輸出に対する新たな障害が世界の食料供給にリスクをもたらす」 というタイトルの記事を投稿していました。


以下に翻訳してあります。


[欧州のウクライナ産小麦輸入の停止が世界の食料供給にリスクをもたらす]という報道 (2023/04/20)


このウクライナの問題はともかくとして、この中に以下のような記述があるのが気になっていました。


> 現在、世界のすべての小麦生産地域を集計した当社による「干ばつ指数」 は、少なくとも過去 20年間で最高レベルにある。

> 同様に、世界中の小麦の総土壌水分レベルは、少なくとも 2010年以来の最低点にある。

> 米国南部の平野部、北アフリカ、および欧州連合の小麦産地での干ばつレベルの高さは、今年の小麦生産の不振の前兆を示す。
gro-intelligence.com


 


「今年はさらに悪化しているのか…」と、この表現で何となく知りました。



実は、特にヨーロッパや中東などにおいては、昨年こそ、「過去最悪」と言われたような干ばつに見舞われていました。


以下は一部の国ですが、2022年の海外の報道を翻訳した記事です。


欧州最大のイタリアのコメ産地が干ばつで壊滅的な被害。非常事態宣言が発出される (2022/07/28)


ルーマニアで激しい高温と干ばつにより農地の70%以上が影響を受けている (2022/08/09)


そして、最近、ユーロニュースを見ていましたら、「スペインの干ばつが、過去数十年で最悪」というように報じられていました。……というか、まだ 4月なんですよ。それで過去最悪の干ばつとか言っていたら、


「夏はどうなるんだ?」


と思います。


EU は、干ばつ指標を定期的にデータで示していますが、それを見る限り、ヨーロッパ全体としては、まだ深刻な干ばつではないようです。


色わけは次のようになっています。


 干ばつではない
 注意 (Watch)
 警報 (Warning)
 最高警報 (Alert


2023年4月10日までのヨーロッパの干ばつ指標

EDO


 


現状では、白い (干ばつではない)地域が多く、ヨーロッパ全体では、まだ懸念される状況ではないようですが、スペインを含む一部は、すでにかなりの干ばつようです。


また、モロッコとか、アルジェリア、チュニジアなどの北アフリカもひどいですね。


スペインと、そしてこの北アフリカの強力な干ばつの影響は、他国ではどこに影響するかというと、「イギリスの野菜状況」と関係しています


以下の 2月の記事で、イギリスで「スーパーから野菜が消えている」ことについて書いたことがありました。


英国で起きている「極端な野菜の枯渇」は、今の生産、流通システムのままだと今後さらに悪化するという専門家の意見。では日本の今後は?
 地球の記録 2023年2月27日


 


ここでご紹介した「食料不足のこれからの形」というタイトルの報道には以下のようにありました。


> トマト、キュウリ、および同様の野菜に関する 2つの差し迫った問題は、まず、ここ数週間でスペインと北アフリカを襲った「異常気象」だ。

> 夜間の気温が 3週間にわたって氷点下を下回り、この時期の英国への重要な輸入源である果物や野菜の生産に打撃を与えた。 Counterfire


 


英国の野菜不足の原因のひとつとなった、スペインと北アフリカの異常気象は、前回は寒冷化でしたが、今度は激しい干ばつに見舞われているようですので、今後も野菜を輸入に頼っている欧州の国では、不足傾向が続くのかもしれません。


そして、今年、エルニーニョ現象が始まることが、ほぼ確定的となってきています。というのも、NOAA (アメリカ海洋大気庁)のページで、正式に「エルニーニョ監視速報」が定期的に掲載されるようになったからです。


今の時点では、「2023年 5月から 7月にかけて 62%の確率でエルニーニョが発生する」としています。


これが世界の気候にどのような影響を与えるかはわからないですが、なかなか大変かもしれません。


スペインの干ばつの状況について、ユーロニュースの報道をご紹介します。

水不足が悪化する中、バルセロナは「干ばつの緊急事態」に向かっている

Barcelona is heading for a ‘drought emergency’ as water shortages worsen
euronews.com 2023/04/20


スペインは過去数十年で最悪の干ばつに見舞われており、バルセロナは水不足に直面している。


スペインのペドロ・サンチェス首相は、4月19日に議会で、「干ばつは、今後数年間、わが国の中心的な政治的および領土的議論の 1つになるだろう」と語った。


「これは明らかに私たちの責任であり、私たちの義務だ。なぜなら、気候変動と水ストレスから私たちが直面している課題は明らかだからだ」


スペイン北東部のカタロニアでは、 770万人の住民たちが 32か月にわたる干ばつに苦しんでいる。降水量の不足は、貯水池が現在枯渇しているバルセロナで特に深刻だ。


当局は、雨の予報が改善されない限り、カタロニアは 9月に「干ばつの緊急事態」に向かうと警告した。これは、水の使用に対するさらに厳しい制限を意味する。


カタロニアの指導者ペレ・アラゴネス氏は以下のように述べた。


「現時点で、水不足が私たちが直面している最悪の問題だ。これは過去 50年で最悪の干ばつなのだ」


 


カタロニアでは貯水池が不足している


バルセロナ、ジローナ、およびこの地域の他の町や村には、テル・リョブレガット川水系から水が供給されている。スペイン政府は、その貯水池とカタルーニャの他の貯水池は、容量の 27%まで縮小したと述べている。


スペインで最も悪化している地域は、アンダルシア南部のグアダルキビル川流域で、貯水池の容量は、わずか 26%だ。


ここ数週間で、水質を維持するために、約 13立方ヘクタールの水がカタロニアのサウ貯水池から近くの別の貯水池に移された。貯水レベルが低下するにつれて、在来種を保護するために何千もの外来種の魚が淘汰された。


この地域は、昨年の夏、水位が非常に低くなり、11世紀の教会の廃墟が地表から姿を現した。


現在の水使用制限により、カタロニアの都市では、1人1日あたり 230リットルの水しか使用できない。これには、個人的な使用だけでなく、噴水や街路清掃などの公共サービスも含まれる。「緊急」計画では、その割り当ては 200リットルに減る。


平均的な人は、家庭での使用だけで 1日約 116リットルの水を消費する。


この地域の政府は現在、水の使用量が多すぎる都市に罰金を科すことを検討している。


 


断水している町々


カタロニアの町や村の一部では、すでに状況が悪化している。


バルセロナの西 100キロにあるレスプルガ・デ・フランコリは、何ヶ月もの間、水の配給が行われている。


現在、毎晩午後 10時から午前 7時まで、3,600人の住民のために生活用水の供給が停止されている。週に 3回、タンクローリーが水を運んで補給している。


この地域では、2003年から 2008年にかけて同様の深刻な水不足が見られたが、現在では、干ばつの時期がより頻繁に、より激しくなっている。


スペインのルイス・プラナス農業相は、週次閣僚会議の後、「水資源と降雨量の両方の点で困難な時期に直面している」と述べた。