- 2025/05/05
(以下引用)
「子供がかわいそうや」 過密行程の「万博弾丸遠足」に教員悲鳴 昼食時間わずか10分

大阪・関西万博の会場で「万博遠足」に参加し、パビリオンを見学する児童ら=4月下旬、大阪市此花区(山田耕一撮影)
大阪府が府内の小中高生らを学校単位で大阪・関西万博の会場へと無料招待する「万博遠足」事業を巡り、参加校側が神経をとがらせている。専用列車の乗車時刻やパビリオンの予約時間によっては滞在時間が限られ、会場内を駆け足で回らざるを得ないためだ。すでに遠足を終えた小学校の中には、10分で昼食を済ませる「弾丸遠足」を余儀なくされた事例もあった。疲労や熱中症のリスクなどを踏まえ、現場の教員や保護者からは余裕のある行程を求める声が上がる。 【実際の写真】「許せない」「かわいそう」 万博の「ぬいぐるみベンチ」に疑問・批判の声 「スケジュールが過密すぎる。子供がホンマかわいそうや」 数千人もの児童生徒らでごった返す万博会場の東ゲート前広場で4月、300人超の児童を同僚とともに引率してきた小学校の女性教員はそう漏らす。 会場に滞在できる時間は約2時間半。その間に昼食を取ってパビリオンを見学し、全員を安全に連れて戻らなければならない。緊張感からか、教員の間ではいらだちも募る。 児童は会場へ入った後、全周約2キロの木造建築、大屋根リングの下を抜け、海外パビリオンに囲まれた仮設建屋の昼食会場へ到着。待ちに待った遠足とあって、おにぎりなどをほおばる児童の表情は明るかったが、案の定、昼食に割ける時間はわずか。関係者は「パビリオンの予約時間が迫り、高学年の一部の昼食時間は約10分しかなかった」と明かす。 なぜ、これほど過密な行程とならざるを得ないのか。 府教育庁によると、4月に万博遠足を実施した学校は、約1年前から準備を続けた。昨年5月に府教育庁側に遠足の希望日を伝え、今年1月に「子ども優先・専用列車」の乗車時刻が決定。開幕前後に観覧先のパビリオンが、万博を運営する日本国際博覧会協会によって割り当てられた。 海外パビリオンは「いのちを救う」「いのちに力を与える」「いのちをつなぐ」の3つのサブテーマに分類されている。基本的には、学校側が選んだテーマを基に協会側が調整を図り、観覧先と予約時間を指定する。 ただ、万博遠足には数十万人もの児童生徒が参加を予定するため、パビリオンを学校側の希望通りに予約できるとはかぎらない。また、会場を下見した各校の教員からは昼食時間の確保を懸念する声が上がった。
府教育庁の担当者は「原則的に朝の登校時刻後に学校を出発して、下校時刻までには戻る必要があるため、学校の場所やパビリオン、電車の予約状況によっては、万博会場での滞在時間が短くなることはあり得る」と説明する。
4月に1~5年の児童約340人で訪れた摂津市立鳥飼西小学校は、国内パビリオンを予約したが、その展示が学校側の希望と異なる内容であることが分かり、予約不要で入退出が自由な、複数の国が出展する「コモンズ」に変更した。
児童は学年ごとに各国の展示ブースを巡り、外国人スタッフと交流。3年生は授業で習った物語「スーホの白い馬」について、モンゴルのブースで見識を深めた。
藤岡敬治校長は「祭りの屋台を回るように国際交流ができ、非常にいい経験になった」と話した。万博遠足には臨機応変の状況判断が欠かせないようだ。
初夏を迎え、気温が上昇する5月以降は熱中症などのリスクが高まる。今後、万博遠足に参加する子供を持つ40代男性は「春と夏では体への負担が異なる。暑い時期に昼食の時間が10分しか取れないといわれれば、安心して送り出せない」と危機感を募らせる。
府内の公立中のある女性教員は「当日のリスクが高い場合には、迷わず遠足を中止すべきだとの意見が現場から多く上がっている」と明かす。
■知事肝いり事業も、下見後のキャンセル相次ぐ 「安全面にリスク」
「肌で万博、未来社会に触れてもらいたい」
大阪府の吉村洋文知事の強い意向で事業化された万博遠足だが、今年1月時点で府内15%ほどの学校が実施の見送りを表明。教員らの下見で不都合が判明しキャンセルに踏み切る学校も相次ぐ。
事業の対象校は、府内の小中高と支援学校の計1879校(児童生徒数計約88万人)。府教育庁の調査によると、今年1月時点で265校が不参加を表明した。理由として児童らの健康リスクやスケジュール上の都合などが挙げられた。不参加を決めた学校はその後も増えている。
日本国際博覧会協会は開幕前の4月上旬、遠足の下見を希望する教員らに会場を開放した。この下見の結果、取りやめに転じた学校もある。
大阪市内のある小学校では5月に全学年で実施するはずだったが、熱中症リスクに加えて、少人数グループでの行動を余儀なくされることによる安全面でのリスクなどを総合的に考慮。1~4年生の遠足を中止した。別の小学校では、パビリオンの予約時間に間に合わない可能性があると判断し、全学年での中止を決めている。(木ノ下めぐみ)
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