最初に報道を知ったときには、この橋がアメリカにおいて、どの程度の規模の橋であるかを知らなかったのですが、トラス橋としては世界で3番目となる非常に巨大な橋であることを知りました。
しかし、実際には、この橋そのものの崩壊よりも、
「それにより、この橋の下を通って入港するボルチモア港が閉鎖された」
ということによるサプライチェーンへの影響が深刻であることを報道で知りました。
今回は、ロイターなど複数の報道をまとめていたメディアの報道をご紹介します。
…ただですね。
この衝突事故は「やや怪しい」のですね。
海事職業紹介会社、つまり「どの船にどんな乗組員が乗船しているか」を網羅しているバルティック・シッピング社のウェブサイトによれば、橋に衝突した「船長」は、ウクライナ国籍でした。
3月26日時点のデータ。衝突した船の船長はウクライナ国籍
zerohedge.com
このこと自体はいいのです。船長がウクライナ人だからどうこうということはないのですが、その翌日、「ページから、このウクライナ人船長のデータが削除された」のです。
衝突翌日のデータ。ウクライナ人船長のデータが消失
balticshipping.com
何が起きてるのかなあと思った次第ですが、このあたりのことは詮索してもどうしようもないことですので、ともかく、この橋の崩壊によるサプライチェーンへの影響についての記事です。ボルチモア港は、自動車の輸出を含めて、アメリカ最大規模の貿易港であるジャンルがいくつもある港のようです。
すでに、フーシ派の攻撃などの影響で、紅海などでは深刻なサプライチェーンの供給の遅れと輸送料の高騰が起きていますが、その問題が拡大するかもしれません。
ここからです。
ボルチモア橋崩壊が世界のサプライチェーンに与える影響
巴尔的摩大桥被撞塌 对全球供应链有何影响
ntdtv.com 2024/03/27
ボルチモアの港に並ぶ輸出される自動車の空撮。
3月26日早朝、米国ボルチモアの橋がコンテナ船と衝突して崩壊し、世界に衝撃を与えた。この事件は、すでに脆弱な世界の海運システムにどのような影響を与えるだろうか。運送費はさらに上昇するのだろうか。インフレはさらに悪化するのだろうか。この一連の問題が世界的な注目を集めている。
メリーランド州政府のウェブサイトによると、ボルチモア港はメリーランド州のチェサピーク湾で最も深い港で、他の東海岸の港よりも中西部に近く、5つの公共ターミナルと 12の私有ターミナルがある。
メリーランド州知事のウェス・ムーア氏によると、ボルチモア港は昨年、記録的な 5,230万トン(800億ドル / 約12兆円相当)の外国貨物を扱ったという。
ボルチモア港は中国製品の輸出入にとっても重要だ。メリーランド州の統計によると、2019年にボルチモア港は中国から輸入された貨物 1,205,260トンを取り扱い、最大の輸入国であるブラジルに次いで 2位となった。同年、この港は中国への輸出量 642,451トンも扱った。
フランシス・スコット・キー橋の崩落によりボルチモア港が閉鎖された後、東海岸中の物流会社は、輸出入状況を顧客にやりとりするために奔走した。
以下は、ロイターの要約に基づいた、橋の崩壊が海運に及ぼす潜在的な影響の概要だ。
閉じ込められた船舶の入出港が困難になり、コンテナ輸送に影響が出ている
3月26日の船舶データによると、ボルチモア港行きの船舶が橋の崩壊により交通が遮断され、近くの海域で停留したことが明らかになった。
メリーランド州交通当局は、追って通知があるまでボルチモア港の交通を停止すると発表した。市場データと分析を提供する Kpler の分析によると、石炭を積み込む予定の船が少なくとも 13隻がボルチモア港近くに停泊している。
船舶追跡と海事分析のプロバイダーである MarineTraffic の船舶追跡データによると、港の近くで待機している他の船舶にはコンテナ船や貨物船が含まれていたことが示された。
また、MarineTraffic のデータによると、ボルチモア港には小型貨物船、タグボート、クルーズ船を含む 40隻以上の船舶が停泊している。
他のデータによると、少なくとも 30隻の船がボルチモア港に向かう予定だった。
すでにコンテナ輸送に影響が出ている。デンマークのコンテナ輸送大手マースク社は、橋の損傷により「その地域が交通に安全であると判断されるまで」ボルチモア港を経由するすべてのサービスを当面中止すると発表した。
自動車輸出が最も影響を受ける可能性がある
メリーランド州港湾局によると、ボルチモア港は米国で最も交通量の多い自動車港でもある。昨年、この港には 847,158台の乗用車と軽トラックが輸送された。
日産、トヨタ、ゼネラルモーターズ、ボルボカーズ、ジャガーランドローバー、フォルクスワーゲンなどの大手自動車メーカーは、アウディ、ランボルギーニ、ベントレーなどの高級車を含め、すべてこの港を介して輸出入している。
米国の自動車大手ゼネラル・モーターズとフォードは橋の閉鎖により影響を受ける貨物のルートを変更する予定だが、両社は影響は最小限にとどまると述べた。
ゼネラル・モーターズは声明で「この状況が当社の経営に及ぼす影響は最小限であると予想している。当社はすべての車両の輸送を他の港に変更するよう取り組んでいる」と述べた。
フォードの最高財務責任者ジョン・ローラー氏は、今回の事件により同社は部品を他の港に移動せざるを得なくなり、サプライチェーンに影響が及ぶだろうと述べた。
ローラー氏はブルームバーグに対し、「影響は出るでしょう。部品を他の港に移さなければならなくなるでしょう…それにより納入期間が少し伸びるかもしれません」と語った。
業界関係者たちは、今回の事故が自動車業界にどのような影響を与えるかを判断するのは時期尚早だと述べている。
アライアンス・フォー・オートモーティブ・イノベーションのジョン・ボゼラ最高経営責任者(CEO)は「だが間違いなく混乱は起こるでしょう。ボルチモアは米国第一の自動車港であり、我々は連邦当局と連絡を取り、政府当局がその規模を理解できるよう協力しています」と述べた。
トヨタは声明で「ボルチモアは当社の北米事業にとって主要な港ではありませんが、それでも、自動車の輸出に何らかの影響が出るでしょう。現時点では大きな混乱は予想されていませんが、今後の状況を注意深く評価しています」と述べた。
フォルクスワーゲンは影響を受けないとしている。日産と BMW はそれぞれ、現時点では大きな影響はないと予想していると述べた。
クルーズ船
クルーズ船もボルチモア港閉鎖の影響を受ける可能性が高い業界だ。ノルウェージャン・クルーズライン、カーニバル・クルーズライン、ロイヤルカリビアン クルーズはすべて、カリブ海、カナダ、その他の大西洋の目的地への旅行にこの港を使用している。
メリーランド州政府のウェブサイトによると、2023年にボルチモア港を出港したクルーズ船は合計 44万4000人以上の乗客を乗せた。
影響を受ける可能性のあるその他の地域
ボルチモア港は、農業機械や建設機械、農産物を扱う米国最大の港でもある。
Kpler の首席農産物アナリストであるイシャン・バヌ氏は、昨年の農産物輸入量は合計 300万トンで、その中には 120万トンの砂糖と塩、石膏、肥料、林産物が含まれていると述べた。
米国の製糖会社 ASR グループは、ボルチモアのダウンタウン近くで製油所を運営している。同社は、経営への短期的な影響は予想されていないと述べた。
米国エネルギー情報局の最新データによると、2023年上半期のボルチモアは、バージニア州ノーフォークに次いで米国で 2番目に大きな石炭輸出港だった。
ボルチモア港は、少量の他の金属や鉱物も輸出している。
メリーランド州政府のデータによると、2022年のその他の重量輸出品目は、液化天然ガス(LNG)、紙くず、鉄くず、自動車/小型トラックとなっている。
ICIS の船舶追跡データによると、この港からは、毎月約 500,000トンの LNG が輸出されている。
輸送料金は値上がりするだろうか
世界的な貨物プラットフォーム、フレイトス社のジュダ・レビン氏は、ボルチモアの港湾ターミナルのほとんどとすべてのコンテナターミナルが崩壊した橋の裏側に位置しているため、ボルチモア出港の準備をしている輸出貨物は水路が再開するまで待つか、トラックか鉄道でルートを変更する必要があると述べた。
貨物はフィラデルフィア、ノーフォーク、ニューヨーク、ニュージャージーなどの地域の港に送られる場合がある。
「これらのオプションを選択した輸出業者は、十分な量が他の港に転用された場合、トラック輸送と鉄道料金の値上げに直面する可能性がある」とレビン氏は述べた。
船舶燃料トレーダーたちは、ボルチモア港とアナポリス・アンカレッジ港での配送が交通停止の影響を受ける可能性があり、代替港としてペンシルベニア州とバージニア州の港が浮上していると述べた。これは船舶のスケジュールに影響を与える可能性があり、ボルチモア港がいつ運航を再開するかによっては、代替港でのバンカー燃料価格の高騰につながる可能性がある。
海上運賃情報プラットフォームのエミリー・スタウスボウル氏は以下のように述べた。
「ボルチモアは米国東海岸最大の港の一つではありませんが、それでも年間 100万本以上のコンテナを輸出入しているため、サプライチェーンに重大な混乱を引き起こす可能性があります」
スタウスボウル氏は、パナマ運河の海運が干ばつに悩まされ、紅海の海運がフーシ派勢力の攻撃を受けている現在、ボルチモア橋の崩壊は海運サービスが直面する課題をさらに増大させるだろうと述べた。
現状、パナマ運河と紅海の海運障害により、極東から米国東海岸までの運賃が上昇している。