https://www.zakzak.co.jp/soc/news/210609/pol2106090001-n1.html
<転載開始>
ゆうちょ銀行と韓国の新韓(シンハン)銀行が業務提携の覚え書きを交わしたと5月27日に発表された。
業務提携の内容は、リテールビジネスで、スコアリング(個人信用格付け)モデル開発と、それを基盤としたビジネスモデルの検討などを共同で進める計画だ。業務提携としては「勉強レベル」のものだといえる。
そもそも、ゆうちょ銀行は普通の銀行では当たり前の「貸し出し」がほとんどない。総資産は約223兆8700億円だが、貸出金はそのうち約4兆6900億円にすぎない。しかも貸出先は国と地方公共団体が大半を占めており、個人や中小企業向けは約996億円と貸出金の約2・1%、資産全体の約0・04%しかない。
逆にいえば、資産のほとんどが国債になっている。国債は同種同条件の金融資産のうち最低利回りなので、金融機関として十分な収益を稼いでいないとの見方もできる。
民間金融機関の社会的な意義として、民間から集めた資金を民間企業に貸し出すことにより経済力アップに社会貢献するわけだが、ゆうちょ銀行は民間金融機関であるが、こうした社会貢献をしていないともいえる。
2007年の民営化から13年以上もたつが、まともな民間銀行になれないのは、民主党政権下で民間経営者を駆逐し、事実上再国有化するなど、民営化の反動によるものだと筆者は考えている。ゆうちょ銀行としては、与信業務に進出したいところだろう。一方、日本展開したい新韓銀行としては、約1億2000万の通常貯金口座を持つゆうちょ銀行の情報が欲しいと考えてもおかしくない。
とここまでは、よくある展開だ。しかし、この話を複雑にしているのは、民間になりきれないゆうちょ銀行と、新韓銀行のグループには、官僚OBが再就職しているということだ。
新韓銀行の子会社で日本法人のSBJ銀行のトップには、財務省キャリアOBが就いている。ゆうちょ銀行のトップは民間銀行の出身者だが、親会社の日本郵政のトップは建設官僚OBの増田寛也氏で、財務官僚OBもいるし、ゆうちょ銀行にも旧郵政官僚OBがたくさんいる。
両行グループの関係者にはそれぞれ官僚OBがいるのだ。これは、韓国から見れば、日本政府から「人質」を取った気分ではないだろうか。
万が一、今後日韓関係がこじれて、日本政府が韓国に経済制裁、特に金融制裁をかけようとするような事態になったとしたら、官僚OBたちはどうするだろうか。制裁の実施官庁である財務省や金融庁に何らかの働きかけを行うのでは、といった疑念を持たれてもおかしくない。
一般に天下りは、出身官庁への「保険」とも言われている。普段は仕事をすることがなくても、いざというときに役立つという意味だ。
いずれにしても、国益の観点から懸念を招くようなことがないようにしてほしいものだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
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