「阿修羅」所載の「日刊ゲンダイ」記事で、前半は西側マスコミの常としてのプーチン批判で読むに値しないが、後半の「世界経済や日本経済への影響」つまり「一般人の毎日の生活への影響」についての記述はかなり予想の確度が高いと思う。つまり、読むに値する内容である。
(以下引用)
※文字起こし
ウクライナ南東部にある欧州最大級のザポロジエ原発を砲撃し、制圧。最大禁錮15年の刑事訴追で市民やジャーナリストに脅しをかける報道規制──。ロシアのプーチン大統領の常軌を逸した「攻撃」と「統制」がエスカレートの一途だ。
ロシア軍は住宅にも無慈悲な砲撃を浴びせ、市民の犠牲は増えるばかり。150万人ものウクライナ国民が国外に避難し、事態が収束しなければ数週間後には400万人に達する見通しだ。
プーチンの戦争犯罪の数々に、全世界から「まさかそこまで」と驚きと怒り、非難の声が上がっているが、それを伝える日本のメディアの分析は甘すぎる。今なお「軍事大国の隣国への短期的な侵攻」との見方が支配的だ。
プーチンが事前に戦争計画を十分に練り上げていたにもかかわらず、そんな非合理的な決定は行わない、戦争は起きない、あるいは回避可能だと、戦争前の根拠なき楽観論をまだ引きずっているようだ。
だが、侵攻開始から10日が過ぎ、次第に鮮明になってきたことがある。現在進行しているのは、プーチンの覚悟を決めた全面戦争であり、この戦争に必死だから、何でもやるということだ。
「ロシアは世界最強の核保有国の一つ」と核で威嚇し、先月下旬にはICBMなどの部隊に臨戦態勢を命じたように、ウクライナを実効支配するまで、プーチンはなりふり構わず。恐らくウクライナへの総攻撃にも躊躇しないだろう。
核兵器疑惑まで持ち出し停戦条件つり上げ
当然、安易な妥協にも応じず、もはやプーチンは「対話は無用」と考えているに違いない。4日のショルツ独首相との電話会談では、ウクライナ東部の親ロ派武装集団の支配地域を拡大させ、「主権」を承認するという要求を明言。停戦の条件をつり上げた。
ロシアの複数の国営メディアは6日、ロシア軍が掌握したチェルノブイリ原発で放射能をまき散らす「汚い爆弾」を製造しようとしていたなどと一斉に報道した。プーチンも「ウクライナは核保有国の地位を得ようとしている。見過ごすわけにはいかない」と主張。根拠不明の核開発疑惑を持ちだし、ウクライナの「非軍事化」など、要求をさらに強める可能性がある。
プーチンが折れない限り、欧米諸国による経済制裁の長期化は必至だ。たとえ、ロシアがウクライナを武力制圧しても、振り上げた拳を下ろすわけにはいかない。
日本政府も欧米に右へ倣えで、国際決済取引網「SWIFT」からロシアの一部銀行を排除する取り組みに参加。プーチン個人とその政権を支える新興財閥などの資産凍結を表明し、ハイテク製品の対ロ輸出規制も発動と次々に制裁を科しているが、岸田首相にどこまでの覚悟があるのか。
西側諸国の経済制裁に対し、プーチンだって黙ってはいまい。制裁が強まるほど、いずれ大がかりな報復に出るに違いない。6日のNHK「日曜討論」に生出演した自民党の世耕弘成・参院幹事長は「ロシア側が報復措置に出てくる場合、相当、国民生活に大きな負担をお願いしなければいけない」と曖昧な表現にとどめていたが、国民が強いられる「大きな負担」は計り知れない。
エネルギー大国・ロシアの報復措置として真っ先に考えられるのが、制裁を科す国々への原油や天然ガスなどの供給停止だ。NY原油先物市場で国際指標のWTI先物価格が一時、約13年ぶりに1バレル=116ドルを突破。ウクライナ戦争の開始から20ドル以上、年初から40ドル以上も高騰しているのは、ロシアからの原油供給が滞る懸念を織り込んだ動きである。
特にEUは輸入石油の約30%を、また天然ガスの約45%をロシアからの輸入に頼る。ウクライナ戦争によるロシア依存の低減は喫緊の課題だが、簡単にはいかない。
ロシアへのエネルギー依存度が高い要因は、パイプラインなどを通じた調達コストの安さだ。米国や豪州、中東など代替となる調達先を増やすほど、輸送コストは跳ね上がり、企業経営を圧迫していく。
かつてのオイルショック以上に厄介なのは、ロシアは農業大国、レアメタルの産出大国でもあることだ。ロシアが輸出量1位の小麦の先物価格も14年ぶりの高値水準まで上昇。プーチンが小麦などの穀物やレアメタルの輸出停止に踏み切れば、世界中のあらゆる品の値段がアッという間に高騰し、日本経済や国民生活も必ず巻き込まれる。
「ウクライナ侵攻直後にトヨタ自動車は、仕入れ先企業がサイバー攻撃を受け、国内全14工場が稼働停止に追い込まれました。現時点でロシアの関与は不明ですが、日本の主要官庁などはサイバーテロの報復を覚悟すべきでしょう。また、ロシアは宇宙大国です。宇宙開発まで“人質”に取られれば日本と米国も参加する国際宇宙ステーションの先行きは不透明になる。通信衛星などにも何らかの危害が及べば、世界中のGPSや通信網が寸断し、パニックに陥りかねません」(経済評論家・斎藤満氏)
最大の貿易相手国を失えば日本経済は崩壊
さらなる懸念材料は今後の中国の対応だ。ロシアのウクライナ戦争に、今のところ「静観」を続けているが、対米共闘で一致する中ロ関係は「史上最良」の状態と言われている。国際社会がロシアへの圧力を強めても、中国の協力なしにはプーチンの行動を変えることはできない。
この先、「ロシア寄り」との印象が強まれば、中ロ憎しの意識から中国だって欧米諸国の経済制裁の対象になっても、おかしくはない。中国との対決姿勢を強めてきた米国のバイデン政権は、その実現を望んでいるフシさえある。
当然、中国もロシアと共に報復合戦に乗り出し、西側諸国との対立激化が長引けば、かつての東西冷戦時代に逆戻りだ。世界の市場が西側と中ロ側とに真っ二つに割れ、サプライチェーンも分断。そのことは冷戦終結から30年、国境を超えてヒト・モノ・情報・カネの国際的な流れが加速し、世界各国の成長を支えてきたグローバル経済の終焉を意味する。前出の斎藤満氏が言う。
「製造コストが高まる中、30年間も拡大してきた世界市場が一気に収縮し、モノを売りたくても売れる場所がなく、需給ギャップは広がっていく。最悪の展開です。新たな冷戦に突入し、日本経済が最大の貿易相手国である中国市場を失えば、そのダメージは考えただけでも寒けがします。生産拠点を中国に移してきた日本企業が、投資回収の前に撤退せざるを得なくなれば、損失は途方もない額になる。14億もの中国の人口を目当てに生産体制を増強してきた輸出企業もアテが狂うでしょう。歴代の自民党政権が内需を軽んじてきたツケで、国内には日本企業を支え切れるほどの消費意欲は見込めない。日本経済自体が成り立たなくなる恐れすらあります」
市場が縮小に向かえば世界恐慌も避けられず、株券なんか紙くず同然になる。対ロ制裁に加担した日本には、これだけの覚悟がいるのだが、岸田はいつ国民に説明するつもりなのか。
「プーチン大統領が仕掛けた今度の戦争は単なる地域紛争ではなく、米国が主導してきた現在の国際秩序に対する挑戦なのです。『新冷戦』の扉が開いてしまった以上、今後の国際社会には激変が待ち受けています。それなのに、岸田首相は欧米任せで主体性ゼロ。覚悟はみじんも感じられない。その裏で安倍元首相らは『核共有』の大合唱ですから、この国を進んで惨禍に突き落とすつもりなのでしょうか」(政治評論家・本澤二郎氏)
新たな時代が到来した今、もう「まさかそこまで……」という過去の常識は通用しないと国民は肝に銘じるべきだ。
(以下引用)
※文字起こし
ウクライナ南東部にある欧州最大級のザポロジエ原発を砲撃し、制圧。最大禁錮15年の刑事訴追で市民やジャーナリストに脅しをかける報道規制──。ロシアのプーチン大統領の常軌を逸した「攻撃」と「統制」がエスカレートの一途だ。
ロシア軍は住宅にも無慈悲な砲撃を浴びせ、市民の犠牲は増えるばかり。150万人ものウクライナ国民が国外に避難し、事態が収束しなければ数週間後には400万人に達する見通しだ。
プーチンの戦争犯罪の数々に、全世界から「まさかそこまで」と驚きと怒り、非難の声が上がっているが、それを伝える日本のメディアの分析は甘すぎる。今なお「軍事大国の隣国への短期的な侵攻」との見方が支配的だ。
プーチンが事前に戦争計画を十分に練り上げていたにもかかわらず、そんな非合理的な決定は行わない、戦争は起きない、あるいは回避可能だと、戦争前の根拠なき楽観論をまだ引きずっているようだ。
だが、侵攻開始から10日が過ぎ、次第に鮮明になってきたことがある。現在進行しているのは、プーチンの覚悟を決めた全面戦争であり、この戦争に必死だから、何でもやるということだ。
「ロシアは世界最強の核保有国の一つ」と核で威嚇し、先月下旬にはICBMなどの部隊に臨戦態勢を命じたように、ウクライナを実効支配するまで、プーチンはなりふり構わず。恐らくウクライナへの総攻撃にも躊躇しないだろう。
核兵器疑惑まで持ち出し停戦条件つり上げ
当然、安易な妥協にも応じず、もはやプーチンは「対話は無用」と考えているに違いない。4日のショルツ独首相との電話会談では、ウクライナ東部の親ロ派武装集団の支配地域を拡大させ、「主権」を承認するという要求を明言。停戦の条件をつり上げた。
ロシアの複数の国営メディアは6日、ロシア軍が掌握したチェルノブイリ原発で放射能をまき散らす「汚い爆弾」を製造しようとしていたなどと一斉に報道した。プーチンも「ウクライナは核保有国の地位を得ようとしている。見過ごすわけにはいかない」と主張。根拠不明の核開発疑惑を持ちだし、ウクライナの「非軍事化」など、要求をさらに強める可能性がある。
プーチンが折れない限り、欧米諸国による経済制裁の長期化は必至だ。たとえ、ロシアがウクライナを武力制圧しても、振り上げた拳を下ろすわけにはいかない。
日本政府も欧米に右へ倣えで、国際決済取引網「SWIFT」からロシアの一部銀行を排除する取り組みに参加。プーチン個人とその政権を支える新興財閥などの資産凍結を表明し、ハイテク製品の対ロ輸出規制も発動と次々に制裁を科しているが、岸田首相にどこまでの覚悟があるのか。
西側諸国の経済制裁に対し、プーチンだって黙ってはいまい。制裁が強まるほど、いずれ大がかりな報復に出るに違いない。6日のNHK「日曜討論」に生出演した自民党の世耕弘成・参院幹事長は「ロシア側が報復措置に出てくる場合、相当、国民生活に大きな負担をお願いしなければいけない」と曖昧な表現にとどめていたが、国民が強いられる「大きな負担」は計り知れない。
新冷戦時代の到来でグローバル経済は終焉 |
エネルギー大国・ロシアの報復措置として真っ先に考えられるのが、制裁を科す国々への原油や天然ガスなどの供給停止だ。NY原油先物市場で国際指標のWTI先物価格が一時、約13年ぶりに1バレル=116ドルを突破。ウクライナ戦争の開始から20ドル以上、年初から40ドル以上も高騰しているのは、ロシアからの原油供給が滞る懸念を織り込んだ動きである。
特にEUは輸入石油の約30%を、また天然ガスの約45%をロシアからの輸入に頼る。ウクライナ戦争によるロシア依存の低減は喫緊の課題だが、簡単にはいかない。
ロシアへのエネルギー依存度が高い要因は、パイプラインなどを通じた調達コストの安さだ。米国や豪州、中東など代替となる調達先を増やすほど、輸送コストは跳ね上がり、企業経営を圧迫していく。
かつてのオイルショック以上に厄介なのは、ロシアは農業大国、レアメタルの産出大国でもあることだ。ロシアが輸出量1位の小麦の先物価格も14年ぶりの高値水準まで上昇。プーチンが小麦などの穀物やレアメタルの輸出停止に踏み切れば、世界中のあらゆる品の値段がアッという間に高騰し、日本経済や国民生活も必ず巻き込まれる。
「ウクライナ侵攻直後にトヨタ自動車は、仕入れ先企業がサイバー攻撃を受け、国内全14工場が稼働停止に追い込まれました。現時点でロシアの関与は不明ですが、日本の主要官庁などはサイバーテロの報復を覚悟すべきでしょう。また、ロシアは宇宙大国です。宇宙開発まで“人質”に取られれば日本と米国も参加する国際宇宙ステーションの先行きは不透明になる。通信衛星などにも何らかの危害が及べば、世界中のGPSや通信網が寸断し、パニックに陥りかねません」(経済評論家・斎藤満氏)
最大の貿易相手国を失えば日本経済は崩壊
さらなる懸念材料は今後の中国の対応だ。ロシアのウクライナ戦争に、今のところ「静観」を続けているが、対米共闘で一致する中ロ関係は「史上最良」の状態と言われている。国際社会がロシアへの圧力を強めても、中国の協力なしにはプーチンの行動を変えることはできない。
この先、「ロシア寄り」との印象が強まれば、中ロ憎しの意識から中国だって欧米諸国の経済制裁の対象になっても、おかしくはない。中国との対決姿勢を強めてきた米国のバイデン政権は、その実現を望んでいるフシさえある。
当然、中国もロシアと共に報復合戦に乗り出し、西側諸国との対立激化が長引けば、かつての東西冷戦時代に逆戻りだ。世界の市場が西側と中ロ側とに真っ二つに割れ、サプライチェーンも分断。そのことは冷戦終結から30年、国境を超えてヒト・モノ・情報・カネの国際的な流れが加速し、世界各国の成長を支えてきたグローバル経済の終焉を意味する。前出の斎藤満氏が言う。
「製造コストが高まる中、30年間も拡大してきた世界市場が一気に収縮し、モノを売りたくても売れる場所がなく、需給ギャップは広がっていく。最悪の展開です。新たな冷戦に突入し、日本経済が最大の貿易相手国である中国市場を失えば、そのダメージは考えただけでも寒けがします。生産拠点を中国に移してきた日本企業が、投資回収の前に撤退せざるを得なくなれば、損失は途方もない額になる。14億もの中国の人口を目当てに生産体制を増強してきた輸出企業もアテが狂うでしょう。歴代の自民党政権が内需を軽んじてきたツケで、国内には日本企業を支え切れるほどの消費意欲は見込めない。日本経済自体が成り立たなくなる恐れすらあります」
市場が縮小に向かえば世界恐慌も避けられず、株券なんか紙くず同然になる。対ロ制裁に加担した日本には、これだけの覚悟がいるのだが、岸田はいつ国民に説明するつもりなのか。
「プーチン大統領が仕掛けた今度の戦争は単なる地域紛争ではなく、米国が主導してきた現在の国際秩序に対する挑戦なのです。『新冷戦』の扉が開いてしまった以上、今後の国際社会には激変が待ち受けています。それなのに、岸田首相は欧米任せで主体性ゼロ。覚悟はみじんも感じられない。その裏で安倍元首相らは『核共有』の大合唱ですから、この国を進んで惨禍に突き落とすつもりなのでしょうか」(政治評論家・本澤二郎氏)
新たな時代が到来した今、もう「まさかそこまで……」という過去の常識は通用しないと国民は肝に銘じるべきだ。
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