芳ちゃんのブログさんのサイトより
http://yocchan31.blogspot.com/2022/08/blog-post_17.html
<転載開始>

ロシアに対する嫌悪についてはさまざまな解説や見解がある。その中で、私が注目したのは今年の214日に本ブログで投稿した「西側の長城対スノーニガー」と題された記事だ。

その記事では、スイスに生まれ、半生をヨーロッパで過ごし、残りを米国で過ごした著者が西側におけるロシア人に対する典型的な偏見を自からの体験から説明している。その投稿から一部を抜粋すると、次のような具合だ:

・・・西側の5カ国語を話し、さらにいくつかの関連言語を理解することができる。米国ではふたつの大学院で修士号を取得した。西側のことはよく理解している。私と出会った西側の人たちのほとんどは私の出自を知らず、私がロシア人のルーツを持っていることを話すまでは彼らは私を「仲間内」として扱ってくれた。でも、その時点以降彼らの態度は急変し、彼らの顔にはありありと「注意しよう。彼は奴らの仲間だ」と書かれていた。


このような西側の人たちの間で見られる態度には、恐らくは、幼少の頃から育てられて来た社会環境や家庭教育、学校教育、職業生活、等の中で複合的に醸成されて来た何かが反映されているに違いない。つまり、それはいいも悪いも西側の文化の一部なのだと言える。一部の人たちはこれをどの文化にも存在する「負の側面」と呼ぶかも知れない。ロシア人を嫌うことは多分に根も葉もない偏見や無知から生まれ、意図的に政治化された集団思考によって強調されている現状を考慮に入れると、その正体はよりはっきりと見えて来る。


特に、今年の224日から始まったロシア・ウクライナ戦争の直前から直後にかけては、ヨーロッパにおいてはロシアを敵視するプロパガンダの大合唱が嵐のように吹き荒れた。そして、それは何日も続いた。EUのエリート政治家たちは対ロ経済制裁を矢継ぎ早に繰り出して、ロシアを経済的に破綻させようと試みた。一連の経済制裁によってロシア経済を低迷させ、ロシア国内に反政府感情を醸成させ、プーチン政権を転覆させることが彼らのボスの最終的な命令なのだ。しかし、この筋書きは大失敗に終わったようだ。対ロ経済制裁はロシア経済を傷めつけるよりも、むしろ、西側諸国の経済をより深刻に傷めつけていることが徐々に判明して来たのである。ロシア・ウクライナ戦争が収束を見せずに続くとすれば、この冬、EU圏の一般庶民の苦難はその極に達するのではなかろうか。ロシア産天然ガスの供給停止によって、EU圏の大部分は厳寒の中で震え上がるに違いない。



このような状況は、元をただすと、意図的に作り出されたロシアに対する嫌悪が過度に政治化されたことの産物であると言える。ロシア経済を破綻させるためにロシア産天然ガスの使用を止めると宣言したEUのエリート政治家はそれに代わるエネルギー源を用意してはいなかった。パイプラインで送られて来る天然ガスの代替として液化天然ガスを輸入するとなると、今まで使用していたインフラからまったく新しいインフラへと鞍替えしなければならない。この種のインフラの大変更は、通常、年の単位の長い期間をかけて実施するのが常識だ。ところが、EUのエリートは数か月のタイムフレームでロシア産天然ガスの輸入を禁止した。まさに、自殺行為である。


ここに、「西側の金儲け主義とロシアに対する嫌悪が世界を終焉に導くのか?」と題された記事がある(注1)。


本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。


***


核戦争のリスクは、間違いなく、1年前よりも遥かに大きくなっていると言えよう。ウクライナでの紛争が始まって以来、「国際社会」としても知られている欧米とその傀儡諸国はロシアに対するハイブリッド戦争に従事しており、直接対決の寸前で足踏みをしている。EUの指導者には、ボレルのように、欧米はこの紛争における積極的な戦闘員であると考える人もいる。「われわれは市民に向けてこれは他人の戦争ではないと説明しなければならない」と、ボレルは木曜日(811日)にエルパイス紙が掲載したインタビューで語っている。「国民はウクライナを支援し、EUの統一を維持するための代価を喜んで支払わなければならない。」



「われわれは戦争中だ。これは決して自由ではない」と彼は付け加えている。 


ボレルは、先週のガザでのシオニストによるパレスチナ人虐殺に関連して国際問題における欧米の偽善と二重基準について彼自身の考えを述べた。「われわれはしばしば二重基準で批判される。しかし、国際政治というものはかなりの程度ダブルスタンダードを適用する。われわれはすべての問題に同じ基準を使用しているわけではない」と彼はエルパイス紙に木曜日(811日)に語った。他人に対して嘘をつき、欺くことで生計を立てている輩としては極めて稀な正直さであった。しかしながら、なぜこれらの二重基準が存在するのかについては彼は何も言わなかった。もしもあなたが帝国主義者であり、植民地主義者であるならば、国際政治とはまさに二重基準を適用することに尽きることに同意するであろう。もちろん、無防備な人々に戦争を仕掛けているのがテルアビブの彼のボスである時に「彼らはすべての問題に対して同じ基準を適用するわけではない」とはなかなか言えないのであろうが。


だから、西側が癇癪を起し、ウクライナでそれを右や左に投げつけているのは失われた民間人の命を心配することとは何の関係もないということを証明している。シオニストたちが子供たちを虐殺し、彼らはその罪を問われない。そのような時、いわゆる「国際社会」は沈黙してしまう。


違法な経済制裁の発動、ロシアに対する強烈な嫌悪、そして、キエフに対して重火器を供給することは危険性があることはすでに分かり切っていたにもかかわらず、依然としてキエフに重火器を供給していること、等はすべてがロシアに対する西側の根深い憎悪を物語っている。もしもこの憎しみがプーチン大統領とだけ関係があると考える妄想的な人が未だにいるとするならば、「国際社会」が情熱的に憎んでいるのはロシアとロシア人であるとい事実を最近の数カ月が彼に証明してやるべきであった。それ以外にも、彼らはなぜロシアの運動選手やジャーナリスト、そして、一般市民さえをも禁止しようとするのだろうか?もしもロシアが主権を放棄し、ワシントンに資源が豊富な領土を提供していたならば、この事件は、もちろん、大きく違っていたことであろう。「国際社会」の目にとっては、非主権で、かつ、非独立のロシアだけが「民主的」であると見なすことができるのである。


西側への服従よりも独立を選んだ国に対しては、それがどこであっても、同様の憎しみが観察される。自己崇拝的で人種差別的な西側は自国を植民地化し、荒廃させようとする西側の企てに抵抗する人々を、常に、憎んできた。だからこそ、中国やイランについても情熱を持って憎んでいるのである。そう、そう、西側は西洋の人種差別的な性質のせいで自分たちの非西洋の同盟国さえをも憎んでいることを私は知っている。



東欧圏の崩壊以降、中国とロシアは米国との協力政策を採用し、対峙する代わりにお互いに交流することが可能であることを米国人に理解して貰おうとしてあれこれと試みて来た。この政策の最たるものはプーチンがロシアのNATO加盟を提案した時だったと言える。ロシアのNATO加盟を提案したプーチンの主たる目的はNATOがいまだにロシアを破壊しようとしているのかどうかを判断することにあった。米国がNATOをロシア国境まで拡大することによってロシアの破壊を狙っていることはロシアにとっては完全に明白となった。


米国人は東アジアでも同じことをしており、中国が対立ではなく交流を通じて彼らと関わろうとしてきたという事実があるにもかかわらず、彼らは公式にも非公式にも中国を破壊しようとしている。中国と台湾の間に緊張を生じさせ、この地域で戦争の舞台を整えようとしたナンシー・ペロシの稚拙な企てはワシントン政府がロシアと関わってきたのと同じ種類の敵意の表れである。もしもヨーロッパにおいて戦争がなかったら、恐らく、米国は東アジアで戦争を始めるためにすでに何かを仕出かしていたかもしれない。だが、彼らは現在ふたつの戦線で戦うことは得策ではなく、東アジアで戦争を始めるプロセスは少し遅らせることを好んでいる。


この米国の政策は第一次世界大戦や第二次大戦の勃発を引き起こした政策と何ら変わりはなく、これらの政策の継続は世界を何回でも破壊しうる核兵器が存在することから、そのような戦争の始まりは世界を人類の終焉に導くかもしれないとして第三次世界大戦を想像するのには十分だ。


西側は、今日、衰退状態にあるということは、もはや、秘密でも何でもなく、「狂った妄想」でもない。この認識はしばらく前から存在してはいたが、普通の人たちは何年も前にこれに気付くことがなかっただけだ。今日、それを隠すものは何もなく、この現実を否定するために残された唯一の存在は頑固なリベラル派、あるいは、むしろ極めて頑固な帝国主義の支持者たちだけである。これらの連中は、多くの場合、西側のジャーナリストであるが、彼らは完全な否定モードに入り、「ロシアの差し迫った崩壊」の物語や幻想的なシナリオをでっち上げている。たとえば、ウクライナに関するドイツやイギリスの報道を見ていただきたい。私が話していることがよく分かるだろう。絶望のあまり、彼らは哀れなほどに低劣なレベルに達し、今や、プーチンの健康状態をあれこれと推測し、クレムリンで何が起きているのかについては「深い洞察」を有する筈の「匿名の元MI6工作員ら」がでっち上げた悲しい程の大嘘を絶対的な真実として報じている。これとまったく同様の絶望が欧米の政治家にも観察される。連中は必ずしも幻想の下で生きているのではなく、西側が直面している差し迫った崩壊を十分に認識してもいる。われわれのような観察者は幻想の下で過ごすべきではない。西側は単純に敗北を受け入れることはないだろう。ましてや、自分たちよりも劣っていると見なす相手に対してはなおさらのことだ。


西側が衰退すると同時に、新しい勢力が世界で台頭している。ロシア、中国、イランが率いる多極的な世界が出現しつつある。しかし、多極世界の出現に伴い、核戦争の危険性も高まっている。


米国がその「優位性」を証明しようと必死になる時はいつでも、その「素晴らしい力」を世界に思い出させようとして、常に、ハリウッド風のショーボートに頼る。たとえば、最近の台湾でのナンシー・ペロシの挑発的で危険なスタント行為がそうだ。そして、タリバンによれば米国の発表よりも何ヶ月も前にすでに死亡していたアルカイダの指導者であるアイマン・アル・ザワヒリの「暗殺」が並行して発表され、実にハリウッド的なやり方で、彼はバルコニーにいる際に殺されたと主張した。ワシントンは、ミサイルによる攻撃であったにもかかわらず、他には誰も殺されず、建物は破壊されてはいないと直ちに強調した。バイデンはマスコミで取り上げられ、基本的に全世界を脅すこととなった。「どんなに時間がかかっても、どこに隠れていようとも、あなたが私たちの国民にとって脅威であれば、米国はあなたを見つけ出して、あなたを排除するであろう。」


これらのスタント行為の問題点は遅かれ早かれ誰もがそれを真剣に受け止める積りがなくなるという点だ。こうして、米国はその想定される力を投射するためには絶えずさらなるリスクを冒さなければならない。ワシントン政府が益々赤い線を越え続ける中で、彼らは中国やロシア、イランとの直接対決へと自国を導かなければならないのだ。こうして、極めて危険で、悪質な循環が始まる。ワシントン政府の傷を負った自尊心は強烈な人種差別と自己崇拝と相まって、覇権を維持しようと必死になっている帝国にとっては極めて危険な組合わせとなる。日本に対して原爆を使用することを躊躇せず、そうしたことに今もなお誇りを持っているのと同じ政権であることを忘れないでいただきたい。


西側が衰退し、おそらく崩壊しつつある中、世界の他の国々に対する彼らの憎悪は彼らの自己保存の感覚よりも大きいのかどうかは疑問に思わざるを得ない。もしも彼らの「世界秩序」が優勢にならないならば、彼らは人類が存在し続けることを許すのだろうか?


***


これで全文の仮訳が終了した。


著者はネオコンが巣食う米国政府や意思決定集団が自暴自棄になって、核戦争さえも辞さないと決断するのではないかと懸念を強めている。10年も20年もかけて準備をして来た対ロ戦争(これは2014年のウクライナにおけるマイダン革命、ならびに、ロシアが先に軍事行動を起こすように事前に準備されたロシア・ウクライナ戦争として始まった)では米国の戦争屋の思惑とは違った展開が、今、進行しつつある。面子を失わないためにも「ロシア・ウクライナ戦争はウクライナ兵の最後の一兵になるまでは止めることはない、止める時は核兵器を使ってからのことだ」と彼らが自暴自棄の判断をしかねないとして著者は心配を隠せないでいるのだ。まさに、狂気の世界である。


また、西側の「国際社会」が見せた本当の姿についての分析は辛辣で、的を射ている。著者は「国際社会の目にとっては、非主権で、かつ、非独立のロシアだけが民主的であると見なすことができるのである。西側への服従よりも独立を選んだ国に対しては、それがどこであっても、同様の憎しみが観察される。自己崇拝的で人種差別的な西側は自国を植民地化し、荒廃させようとする西側の企てに抵抗する人々を、常に、憎んできた。だからこそ、中国やイランについても情熱を持って憎んでいるのである。そう、そう、西側は西洋の人種差別的な性質のせいで自分たちの非西洋の同盟国さえをも憎んでいることを私は知っていると指摘している。


この「西側は西洋の人種差別的な性質のせいで自分たちの非西洋の同盟国さえをも憎んでいることを私は知っている」という部分では、非西洋の同盟国とは明らかに日本を指していると私には思える。それこそが米国の本当の姿なのだ。米国が中国を潰そうとしている今、台湾を舞台にした米中戦争では日本が有する自衛隊の戦力はウクライナ紛争のように最後の一兵になるまで戦うことを要求されるであろう。米空母軍団は中国の極超音速ミサイルによって撃沈させられたとしても、沖縄や日本本土は米国の不沈戦艦の役割を負わされるのだ。


日本は台湾を支援し、西側の統一を維持するための代価を喜んで支払わなければならない」と日本人は割り切って考えることができるのであろうか?日本のウクライナ化を他人事のように許容することができるのだろうか?


現時点では雲を掴むような話かも知れないが、安倍晋三元首相の暗殺事件さえもが米国のネオコンたちの思惑とどこか深い部分で繋がっていたのではないだろうか?この答えは直ぐには判明しないであろう。だが、時間の経過とともに何らかのきっかけで浮上してくるかも知れない。


ヨーロッパの識者は、今回、対ロ経済制裁を通じて自分たちが仕出かした誤算、あるいは、大失敗を痛い程認識させられた。そして、その頂点はこの冬にやって来る。こういった認識が対米従属一辺倒のEUのエリートたちの目を一日でも早く覚ますことに繋がって行って欲しいものだ。さもなければ、われわれは蒸発させられて、人類の終焉となりかねない!


 


参照:


注1:Will the West’s greed and hatred lead to the end of the world?: By Aram Mirzaei for the Saker blog, Aug/12/2022