『紙の爆弾』6月号の西田健氏の記事を秋水が編集してアップいたします。
日本経済を考えるうえで、とても示唆に富むエピソードが多いので、
テーマは『紙の爆弾』ではなく、『マネー』に分類することにしました。
目の付け所がちっとも「シャープ」じゃなくなっちゃいましたね~
この2月、大手電機メーカーとしては初の外資傘下となりました。
しかも、買収に至るまでにさんざんグダグダやったうえに、買収決定直後に「実は…」と…
3000億円の債務を発表…
鴻海も思わず絶句…「これがあの誠実だった日本企業か…」( ̄□ ̄;)
当然破談と思いきや日本の銀行団が平身低頭してまとめてしまいました。
金融機関に5100億の返済があったために、熨斗をつけて叩き売ったということです(T_T)
このていたらくをみていると、日本の行く末さえ心配になってくるほどです…
(ちなみに幹部の多くは、日本電産に引き取られたようです。天下り?www)
シャープの早暁は1912年と古く、電波関係を得意とする軍需メーカーでした!
特筆すべきは、いちはやくテレビの開発に着手して…
51年には初の国産テレビ、61年には初の国産電子レンジを作りました!(゙ `∇´)/
そして70年に、早川電機工業から解明して、「シャープ」になったのでした。
さて、このころ日本産業界はボーナスステージを迎えておりました。
戦後の高度成長の直接の要因をご存じですか?
それはね…
アメリカの軍事大国化なんですよ…( ̄Д ̄;;へえ~
第二次大戦まではアメリカが「世界の工場」でした。
技術も飛びぬけていて、軍需産業もゼロ!!
ウソみたいな話でしょ?
ところが、戦争で一気に軍需に向かいます…
『週刊空母』と言われたほどで、ホントに一週間ごとに空母を作りました。
軍用機は27万機。これは日独伊を合わせた数より多いのです!( ゚ ▽ ゚ ;)
しかし、戦後になっても「冷戦」を理由に軍需生産を続けました。
「世界の工場」は、兵器しか作らなくなってしまったのです!!
そこで、日本とドイツが「世界の工場」になっていったわけです。
「世界の工場」になるべく戦争をして、負けたことでその夢が実現…歴史の皮肉ですね~
日本もドイツも軍需産業が民生産業に大転換…敗戦国ですからね~
戦争中、数々の兵器を開発した優秀な頭脳が職にあぶれておりまして…
それが家電に、自動車に、電車、造船にと、各企業に散っていきます。
それまで湯水のように予算を使ってきた研究に「軍事機密」がなくなって使い放題…
米英仏は、一流の研究者は軍事優先で、民間の開発能力は逆にボロボロ…
そりゃあ、突然競争力もつくでしょう…日独二強時代の到来です。
日本を農業国家に作り変えるはずだったのに、朝鮮戦争で占領政策が大転換…
極東を抑えるためには、日本を前線基地にする必要があった。
それで惜しみなく最新技術を日本に提供して、極東兵站基地に育成したのでした。
抗して育った日本の産業が米欧の巨大市場に進出…
ある意味、軍事では”侵略”できなかったものが、経済ではできてしまった…
「エコノミックアニマル」とまで言われたすさまじさも”恨みを晴らす”意味もあったのか…
ここで、日本製品がなぜ高品質なのかという話をはさみましょう…
日本ってね…機械にとっては過酷な環境なんです。
よく外国製品は壊れやすいって言われますが、日本で使うからです。
その日本でモノを作れば、外国人には”過剰品質”となります。
それを「安いから」と思って買ってみれば高品質なのでびっくりするのです。
さて、話を戻します。
占領政策の転換では解体された財閥が銀行グループとして復活します…(「ユダヤ」じゃ~!)
都銀だけで13行ありましたからね…
その数だけ財閥的企業集団が生まれます。
その企業集団が「電機メーカー」という椅子に座れば、たちどころに経営も安定いたします…
90年代まで、各業界の大手企業は6~10ありました…
都市銀行と6大銀行グループが各業種企業をひととおり揃えていたからです。
ちなみに、シャープは鴻池財閥の直系…
戦後は旧三和銀行(現在三菱東京UFJ)の三和グループ入り。
どこもこんな感じで経営が安定し、国内で過剰生産していても海外に売って生き残ってしまいます。
それで企業間の整理統合が進まなかったのですね…
なるほど…内需大国の日本で、なんでわざわざ円安で輸出で儲けなければいけないか…
なんで、ここまでの金融緩和、超低金利でもデフレが進むのか…
凄まじい供給過剰があって、各財閥企業の整理が必要なのにしないからですね…
それが本当に求められている”構造改革”とやらではないのでしょうか?
それどころか、国民の頭の”構造改革”をして、賢くするならともかく劣化させていますもんね…
しかし、そこへ容赦のない”グローバル化”がやってきます…
これは、ひとことで言えば…
世界中から安い部品をかき集めて…
最も安上がりな場所で組み立てて…
最も高く売れる場所で売る…というビジネスモデルのことです。
IT革命以前なら、こんな手間暇のかかることはムリでした。トラブルも続出です。
それがネットでオンラインで結ばれるとできてしまう。
それで成功したのがアップルです。
トヨタの看板方式をグローバルレベルで行う「自分だけよいとこどり」の下請け泣かせのシステムです。
その象徴が、ハケンでしょうが…正社員なんてごくわずかしかいらないのです。
”しわ寄せ”を引き受けてくれる大量の労働者や下請けがいてくれてこその商売です。
しかしながら、
アップルのようなガリバー企業が登場すれば、世界市場の半分を根こそぎもっていかれます。
韓国のサムスン、中国のハイアールもそういう意味の企業です。
こうした企業に市場を奪われては、残りかすを皆で分け合う(食い合う)ことになります。
こうなれば弱いところから潰れていきます。
日本企業は高い製造機械を財閥仲間から買い、部品ひとつひとつ自社で設計して関連子会社に発注して、高い人件費で組み立てているのです。
各銀行グループに支えられた10社前後の日本企業が世界シェアの残り半分を押さえるのです。
一社自体はガリバー企業ではないので、各社ごとに独自路線や得意財閥を作って、みんな仲良くそこそこ稼いで、自分の所属する銀行グループ内の企業に仕事を波及させていく…
もちつもたれつ…助け合い…実に日本的です。
必ずしも悪いことではありませんが、”裏目”には出ているかもしれません。
日本企業は「高品質」「高性能」にこだわりますが、
グローバル企業がこだわるのは… 「高効率」「高利益率」…ですからね…
儲け、生産力、宣伝広告力…ここで段違いの差がついている…
ここをなんとかしないと、次は自動車産業ではないのかと心配です。
それと、付け加えるとあべ政権の軍事大国化路線への懸念ですね…
優秀な人間が、いまギリギリのところで企業にとどまり、軍需に行かないのは、
軍事機密が少ないからです。
この唯一残されたメリットも失えば、日本の輸出産業はロシアのように兵器産業頼みになるでしょう。
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