中国を中心に感染が広がる新型コロナウイルス。国内でも複数の感染者が確認され、死者が出ています。また、感染経路の判然としないケースもあるなど不安が広がっています。ワクチンや治療薬は完成するのでしょうか。現状で判明していることをまとめました。(篠原拓真)
■武漢で昨年12月初確認 感染源は不明
コロナウイルスにはこれまで、風邪の原因の10~15%を占める4種類と、動物から感染し重症肺炎を起こす二つのウイルスがありました。
2019年12月に中国・湖北省武漢市で新たに発生が確認された新型コロナウイルスはその宿主動物が分からず感染源は不明です。市内の市場関係者で感染が多数報告され、そこで販売された動物が原因ではないかという推察もあります。
中国以外で感染が判明しているのは27の国と地域。感染患者の大半は中国ですが、感染者数は6万6千人超、死者も1500人超となっています(2月15日午前時点)。
世界保健機関(WHO)は1月31日に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」と宣言。2月11日には英語表記略と発生年を組み合わせ「COVID(コビッド)19」と命名し、各国に警戒を呼び掛けています。
■発熱や倦怠感、せき 悪化すると肺炎に
主な症状は発熱や倦怠(けんたい)感、せき、呼吸が苦しくなるなどで、悪化すると肺炎を引き起こします。厚生労働省は、感染による肺炎患者の3分の1から2分の1に糖尿病や高血圧などの持病があったという報告を例に、そうした病気がある人や高齢者ではリスクが高くなる可能性を指摘しています。
現時点で考えられる感染方法は「飛まつ感染」と「接触感染」です。前者はくしゃみやせきなどとともにウイルスが飛び出し、近くにいる人の目や鼻、口の粘膜に付着し感染します。飛まつする粒子が大きいため、空気中に長くとどまることができず、飛距離は1~2メートルほどで、長時間浮遊する「空気感染」とは異なります。
接触感染は、くしゃみやせきを押さえた手で人や物に触れるなどして広がります。電車やバスのつり革、手すり、ドアノブ、エレベーターのスイッチなどを通じた感染が考えられます。
感染確認には検査が必要で、原則として次の要件に該当する場合です。
(1)37.5度以上の発熱や呼吸器症状がある。
(2)発症前14日以内に中国・湖北省と浙江省に渡航や居住をしていた人、それらの人と濃厚接触した人。もしくは感染者と濃厚接触をした人。
国立感染症研究所は、感染が疑われる人と同居か長時間の接触があった人▽たんや体液などに直接触れた可能性が高い人-などを濃厚接触者と定義。厚労省は、対面会話が可能な距離(目安は2メートル)で接触した人を例に挙げます。
該当者は保健所などに設置された「帰国者・接触者相談センター」に連絡し、その指示に従って医療機関で診察・検査を受けることになります。該当しない人が近くの医療機関を受診する場合も事前に連絡してから、受診する方がよいでしょう。
検査は主に県立健康科学研究所(兵庫県加古川市)などの地方衛生研究所で行われます。感染症法に基づく「指定感染症」などに指定されているので、疑いのある人や感染患者が入院する際の医療費は原則公費負担とされています。
■ワクチン「開発に1年半」 予防には手洗い有効
治療を巡り、国立国際医療研究センターなどでエイズウイルス(HIV)の治療薬を投与した結果、病状が改善したという報告がありましたが、効果の裏付けは明確ではありません。現時点では「特に有効なウイルス薬はなく、対症療法を行う」とされています。
ワクチンについては、WHOのテドロス事務局長が会見で「開発には18カ月(1年半)を要する」と指摘。「利用できる武器を使い、ウイルスと戦わなければならない」と話しました。
感染拡大を防ぐため、せっけんやアルコール消毒液などによるこまめな手洗いをしましょう。厚労省は人混みの多い場所を避けるなどの注意も促します。予防のためにマスクを着用する人もいますが、WHOは「感染症拡大を抑止する助けにはなるが、せきやくしゃみなどの症状がない人には必要がない」としています。ただ、看病をする人、治療にあたる医療従事者についてはマスク着用を推奨します。
神戸市保健所予防衛生課は「マスクを手で触るなどすると感染のリスクを高める可能性さえある」と説明。「過剰に心配せずに通常のインフルエンザと同じように対策を心掛けてほしい」としています。
コメント