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徽宗皇帝のブログ

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企業物価の急な高騰と消費者物価の静かな上昇の乖離
「business insider」記事だが、素人にも分かるように書かれていて、いい記事である。ただし、書かれたのはかなり前だから、現在の事情はより切迫しているだろう。
ただ、私は企業の「腹切りプライス」は、それが可能だからやっているわけで、そこには長期にわたった内部留保がある、と見ている。つまり、企業利益の社会還元だ。社員の給与を上げる代わりに、物価を安くしているということになる。まあ、長期の社員虐めの罪滅ぼしと言えるのではないかwww だが、この「ウクライナ戦争による原材料費高騰」はまだ出口が見えない状況だ。


(以下引用)途中にはさまるCMが鬱陶しいが、面倒なのでそのままにしてある。

企業物価は爆上がりも消費者物価が伸びない日本の特殊事情。企業の「腹切りプライス」は持続不可能では…


karakama_PPI_2021_factory


資源価格の上昇が大きな影響をおよぼし、企業物価指数の上昇が深刻化している。画像は三菱ふそうトラック・バス川崎工場(神奈川)の様子。


REUTERS/Issei Kato


日本銀行が11月11日に発表した10月の「企業物価指数」(=企業間で取り引きされるモノの価格動向)は、前年同月比プラス8.0%だった。


第二次オイルショックの影響が色濃く出ていた1981年1月(プラス8.1%)以来、約40年ぶりの大幅上昇で、前月比でみてもプラス1.2%と、2014年4月以来の伸びを記録した【図表1】。


karakama_PPI_2021_g1


【図表1】企業物価指数の推移。太線が前年同月比、細線が前月比。


出所:Macrobond資料より筆者作成


円安と資源高が同時進行する怖さがいよいよ可視化され始めた。


原油価格が1バレル150ドルに迫る勢いにあった2008年7月および8月でも、企業物価指数は前年比プラス7.5%でピークアウト(=頂点に達しそれ以上は上がらない状態)していた。


今回は、供給制約の解消に見通しが立っておらず、資源高の一因となっている脱炭素化の機運も途切れそうにない。円安の幅はまだ限定的で、これから拡大の余地があることなども踏まえると、企業物価指数の伸びはさらに続く可能性がある。


企業物価指数の前月比(プラス1.2%)の内訳は、ガソリンや軽油など石油・石炭製品が0.53%、鉄鋼が0.21%、石油由来の合成ゴムやエチレンを含む化学製品が0.14%、非鉄金属が0.13%と寄与度の上位を占めた。


原油や鉄鉱石といった資源価格の上昇が影響していることがはっきり見てとれる結果となった。


「腹切りプライス」は持続不可能

石油・石炭製品や鉄鋼、化学製品、非鉄金属などの素原材料は経済における「上流」であって、今後は中間財、さらには最終財へと「下流」に物価上昇圧力が移ると考えられる。


その点に注目して、企業物価指数を需要段階別・用途別に分解したのが【図表2】だ。


karakama_PPI_2021_g2


【図表2】需要段階別・用途別にみた企業物価指数の推移。グレー線の「素原材料」が大きな伸びを示す。黄線の「中間材」もそれに追随する上昇。


出所:Macrobond資料より筆者作成


素原材料の価格上昇が突出していることがよくわかる(右軸は左軸のスケールを倍にして表現)。


素原材料の伸びは前年同月比プラス63.0%(前月比プラス4.9%)と著しい。中間財も前年比プラス14.3%(同プラス1.9%)とふた桁の伸びを示している。

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一方、最終財は前年比プラス3.8%(同プラス1.0%)にとどまっている。なかでも、消費者物価指数と関連の強い最終消費財(国内品)については前年比プラス2.8%(同プラス0.9%)と、伸び率が低い。


言い換えれば、企業物価の上昇が一般物価に波及する勢いは、10月の数字からはまだ感じられない。


今後の焦点は、素原材料や中間財のコストと最終財価格の「かい離」がどれほど持続するのかにある。


このかい離は、企業部門が(素原材料や中間財の)コスト増を吸収することによって維持されており、当然のことながら収益の圧迫につながる。


目下みられるような「企業物価指数が上がっても消費者物価指数が上がらない構図」は、企業が俗に言う「腹切りプライス」での商売を強いられていることを意味する。


この状況が続けば、収益の悪化を通じて雇用・賃金情勢にも悪影響がおよぶ懸念がある。そうした状況を金融市場が問題視すれば、株価にも影響がおよぶことになる。


また、コスト増を吸収できず値上げに勤(いそ)しむ企業が増えてくれば、その間隙(かんげき)を突くように値下げでシェアを拡大しようとする企業が出てくるかもしれない。


そこには日本がたどってきたデフレ経済の面影がちらつく。

リフレ政策論者の「倒錯」が明るみに

いまの状況は、「アベノミクス」の看板のもとで導入された日本の金融政策をあらためて評価する上で示唆に富んでいる。


2013年4月以降、日本銀行は「物価が上がれば景気も良くなる」という、因果を取り違えたリフレ政策を展開してきた。そうした政策思想の過ちは、足もとの物価上昇によって白日のもとに晒(さら)されることになる。


※リフレ政策……継続的な物価下落による経済の収縮から脱却し、インフレにならない程度まで物価を引き上げて景気回復を図ろうという金融・財政政策。金利を引き下げて世のなかに出回る資金量を増やすなど。


言うまでもなく、「景気が上がるから物価も上がる」のが真実であり、その意味でリフレ思想は根本的に倒錯している。

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そうした批判は以前から(筆者も含め)方々で展開されてきたにもかかわらず、「やってみなければわからない」という空気が満ち、実験的な政策運営がまかり通ってきた。


周知の通り、その間十分なインフレは起きなかったわけだが、ここに来て黒田体制下の日銀が切望したインフレが素原材料のコスト上昇によって引き起こされそうだ(専門用語で言うところの「コストプッシュインフレ」)。


政策思想の継続性を考えるなら、このインフレ基調を断ち切らないためにも金融緩和は継続することになるだろう。


それどころか、将来的な政策の「のりしろ」を稼ぐために緩和が強化されてもおかしくない。

いま日銀にできること

資源価格の高騰を自力で止める手立てを持たない日本は、自国経済を守る観点からも、正常化プロセス(=金融緩和政策の縮小)への意思を多少なりとも日銀から情報発信したほうがいいと筆者は考えている。


しかし、そうした展開に進む可能性は(いまのインフレ基調を踏まえると)高くなさそうだ。


また、企業物価指数と同時に発表された輸入物価指数(円建て)は、前年比プラス38.0%と激しい上昇を記録している。このコスト高を和らげる方法は多くない。せめて為替部分でコストを抑制する努力を示すくらいの動きはあってもいいだろう。


逆に言えば、足もとでいま起きていることに対して日本が能動的に打てる一手は、筆者の頭のなかにはなかなか浮かんでこない。


※寄稿は個人的見解であり、所属組織とは無関係です。

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(文・唐鎌大輔


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