マスコミに載らない海外記事さんのサイトより
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2025/04/post-4df10f.html
<転載開始>
Brian Berletic
2025年4月8日
New Eastern Outlook
表面的にはホワイトハウスの無能さに起因する不合理な自滅行為のように見える世界各国を標的にしたアメリカの広範な関税導入に、経済学者や地政学専門家らは驚愕している。
実際は、関税は超党派の外交、貿易、経済政策の中心的な柱で、前トランプ政権下で初めて実施され、次のバイデン政権下でも継続、更に拡大され、現トランプ政権下で更に拡大されている。
アメリカは、自国国民だけでなく、いわゆる「同盟諸国」国民にも、長期にわたる経済的、社会的、政治的な大きな苦痛を与える準備をしている。
広範囲にわたる関税は、ドナルド・トランプ大統領自身や閣僚の頭の中で生まれた行き当たりばったりの考え方ではなく、選挙で選ばれていない大企業・金融関係者が公言する政策で、ヘリテージ財団の「プロジェクト2025」論文の第26章「貿易政策」など特別権益団体が資金提供するシンクタンク文書の中で詳細に述べられている。
この政策は、アメリカの再工業化やアメリカの貿易赤字の真の均衡を図る健全な計画からは程遠く、アメリカを「世界を支配する超大国」として維持することを目的としている。
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2025/04/post-4df10f.html
<転載開始>
Brian Berletic
2025年4月8日
New Eastern Outlook
表面的にはホワイトハウスの無能さに起因する不合理な自滅行為のように見える世界各国を標的にしたアメリカの広範な関税導入に、経済学者や地政学専門家らは驚愕している。
実際は、関税は超党派の外交、貿易、経済政策の中心的な柱で、前トランプ政権下で初めて実施され、次のバイデン政権下でも継続、更に拡大され、現トランプ政権下で更に拡大されている。
アメリカは、自国国民だけでなく、いわゆる「同盟諸国」国民にも、長期にわたる経済的、社会的、政治的な大きな苦痛を与える準備をしている。
広範囲にわたる関税は、ドナルド・トランプ大統領自身や閣僚の頭の中で生まれた行き当たりばったりの考え方ではなく、選挙で選ばれていない大企業・金融関係者が公言する政策で、ヘリテージ財団の「プロジェクト2025」論文の第26章「貿易政策」など特別権益団体が資金提供するシンクタンク文書の中で詳細に述べられている。
この政策は、アメリカの再工業化やアメリカの貿易赤字の真の均衡を図る健全な計画からは程遠く、アメリカを「世界を支配する超大国」として維持することを目的としている。
この論文は次のように主張している。
プロジェクト2025の中で説明され、現在アメリカ現政権下で更に実施されている政策は、むしろ特に中国の貿易や産業を含む世界経済活動を混乱させ、海外の産業をアメリカに移転させるのを目的としている。
一例として、半導体メーカーTSMC社はアメリカ本土のアリゾナ州への施設移転を余儀なくされた。インフラの未整備やサプライチェーンの脆弱さや、熟練労働者の不足のが重なって、予算とスケジュールの大幅な超過を引き起こしただけでなく、アメリカ人従業員だけでは対応できない職務を担うため、数百人もの労働者を台湾からアメリカへ移送する必要に迫られた。
同様に、2014年にアメリカが画策したウクライナ政府の転覆とロシア連邦との代理戦争の勃発に始まり、その後アメリカと欧州が課した制裁とノルドストリーム・パイプラインの意図的破壊により、安価なロシア産炭化水素の供給が麻痺した。
このため、ヨーロッパ製造業はアメリカに移転せざるを得なくなった。DWは2023年の記事「ドイツ産業はアメリカに移転しているのか?」で次のように指摘している。
たとえアメリカに産業を移転するための上記基本的要素のいずれか、または全てを改善するために十分な資源が投入されたとしても、追いつくには何年もかかるだろう。
短期的には、現在8年にわたる関税導入と貿易戦争の誘発政策が示しているように、既に莫大な生活費の危機が更に拡大し、食料品代、家賃、燃料費、医療費、教育費などで既に苦労している数千万人のアメリカ人の生活に影響を及ぼすことになるだろう。
ワシントンが執着しているのは中国であり「MAGA」ではない
欧州産業を弱体化させ剥奪するのにアメリカが成功したことは、最終的には中国に関して、世界中で遙かに大規模で野心的な政策を導くことになるのはほぼ確実だ。
プロジェクト2025では、特に中国に関して取るべきいくつかの行動が列挙されており、その中には次のようなものが含まれている。
中国の製造業基盤は、医薬品や日用品から建設資材、大規模インフラ整備に至るまで、あらゆるものを世界各国にとって手頃な価格で提供し、世界の生活水準を急速に向上させている。世界は中国との協力を好機と捉えている。
中国の人口の多さ(G7を合わせたより大きい)、巨大で成長を続ける工業基盤、そして世界クラスのインフラのため、アメリカは中国を脅威とみなしている。それは、純粋な国家安全保障上の懸念という観点ではなく、選挙で選ばれていないアメリカ大企業や金融独占企業が支援するプロジェクト2025や他の政策文書に示された「世界の支配的超大国」としてのアメリカの地位を維持するという観点だ。
これら文書は、中国を「深刻な存亡の脅威」と宣言しているが、これは国民国家としてのアメリカやアメリカ国民に対する脅威ではなく(どちらも中国との協力から他の国々と同様利益を得るだろう)、中国製品やサービスだけでなく、中南米からアフリカ、ユーラシア全体にわたるあらゆる場所で中国と並んで台頭している国々の製品やサービスと競争できなくなった深く根付いた企業金融独占に対する脅威だ。
最悪のシナリオ
アメリカが世界各国に対して関税を引き上げている最も直接的で直感的な説明は、アメリカ内の競争力はないが深く根付いた企業金融の独占を外国との競争の激化から守るため、または世界中で拡大する中国の経済的影響力を抑制するための特定戦略から生じているが、多くの人が見落としている、遙かに懸念される可能性がある。それは、アメリカが経済戦争と実際の戦争の組み合わせを通じて意図的に破壊しようとしている世界経済から離脱することだ。
関税がアメリカの生活費危機に及ぼす影響は明らかで、その影響は拡大しつつある。これはアメリカにとって、政治的、社会的、経済的に高くて持続不可能な費用を意味する。そのため、大きな紛争に先立つ予測以外に、そのような費用を容認できるものとして正当化できるものはほとんどない。
アメリカが現在の世界経済体制の意図的な破壊、あるいは自らが公言している「敵国」の1つ以上との大規模戦争に備えているのであれば、まず自らの条件で世界経済から自らを切り離すこと、特に軍事産業基盤全体を含むサプライチェーンにおける中国への依存という点で、事前にそれが必要な前提条件になるだろう。
半導体メーカーTSMCがアリゾナ州に工場を建設するという前述の例は、台湾にあるTSMCの施設が戦争により破壊される可能性に対するヘッジ手段であることは認めざるを得ない。中国自身が施設を破壊しない場合、アメリカは意図的に破壊して、中国による利用を阻止するとさえアメリカ政策立案者は公言している。
2021年にアメリカ陸軍戦争大学が発表した論文「Broken Nest: Deterring China from Nest: Deterring China from Invading Taiwan,(壊れた巣:巣からの中国の抑止:中国の台湾侵攻の抑止)」では下記のように説明されている 。
… アメリカと台湾は、台湾を武力制圧した場合に魅力を失わせるだけでなく、維持コストも莫大なものにする、標的を絞った焦土作戦を計画しておくべきだ。これは世界最大の半導体メーカーで、中国にとって最も重要なサプライヤーである台湾積体電路製造(TSMC)の施設を破壊すると脅すことで最も効果的に実行できるだろう。
これは、この最新の、そして、そうでなければ不必要に極端な関税政策により促進された遙かに広範な準備の縮図を表している。
特に中国を標的にした関税や関連政策は、軍事紛争が始まった場合、アメリカ自身への影響を最小限に抑えるのに役立つだけでなく、事前に中国を弱体化させるのにも役立つと考えられる。
これはいかにも極端に聞こえるかもしれないが、アメリカが既にアジア太平洋地域において中国に対する大規模軍備増強を進めているのを忘れてはならない。またアメリカは、ユーラシア大陸全域でテロリストや過激派を駆使して、中国の一帯一路(BRI)インフラ、BRIプロジェクトに従事する中国人技術者や彼らを守ろうとする現地の治安部隊を標的に破壊して、長年にわたり中国との宣戦布告なき代理戦争を繰り広げてきた。近い将来の中国との紛争を想定して特別に設計された新兵器開発と配備をアメリカは進めている。
それだけでなく、中国との非常に特殊な形の紛争、すなわち中国沿岸や国境内で中国軍そのものと戦うのではなく、世界中の中国の海上輸送を標的とする紛争にもアメリカは備えている。オバマ政権や現在二期目のトランプ政権やバイデン前政権を含む複数のアメリカ大統領政権は、中国の海上輸送の世界的封鎖となる可能性がある措置を講じてきた。
オバマ政権の「アジアへの軸足」は、数十年にわたる「対テロ戦争」を軸に編成されたアメリカ軍から、同等または近似する競争相手との紛争に特化した戦闘力へと変貌を遂げ始めた。トランプ政権下で、アメリカは軍備管理条約から離脱し、弾道ミサイル防衛システムから中距離・長距離ミサイルに至るまで、条約違反のミサイル開発と配備を可能にし、現在アジア太平洋地域全体に配備されている。
バイデン政権下で、米海兵隊全体が諸兵科連合の遠征戦闘部隊からアジア太平洋地域における対艦作戦に特化した部隊へと変貌を遂げ、戦車と歩兵部隊が対艦ミサイル部隊に置き換えられ、対等あるいは近似する勢力との紛争における沿岸機動や海上阻止作戦を目的とする「海兵沿岸連隊」が創設された。
米空軍もバイデン政権下で戦略実施を開始し、トランプ政権下でも継続されている。その戦略には、武力紛争の際、中国が米空軍を標的にして破壊するのをより困難にするため、米空軍力をアジア太平洋地域のより多くの空軍基地に分散させる「Agile Combat Employment(機敏な戦闘運用)」(ACE)戦略も含まれている。
そして、ここ数カ月だけでも、アジア太平洋全域での米軍プレゼンスの拡大に加え、現トランプ政権は、紅海とホルムズ海峡の両方を標的とした中東での米軍増強、ロシアと中国の船舶輸送を動機として引用しての、具体的に挙げたグリーンランド併合の可能性や、具体的に、中国に対抗するため、特にパナマ運河占拠などにより、世界の海上輸送を締め付けるため思い切った措置を講じてきた。
自ら計画的に世界経済を破壊することからアメリカ経済を遮断するための世界的関税政策は過激な政策だが、中国との戦争に特化した米軍の完全な再編や世界中の主要海上要衝の占拠も同様に過激で、その破壊を促進する戦略の一部としてのみ意味をなす。
人類の歴史を通して、終末的衰退に陥った帝国は危険な絶望に陥ってきた。21世紀において、終末的衰退に陥った現代の帝国を代表するのは、核兵器を保有し、地球規模の軍事力を有し、世界経済の支配力により世界体制全体を破壊しうる力を持つアメリカだ。アメリカは、自ら何十年にもわたり主導権を握ってきた世界秩序が制御された破壊を生き延び、最強のプレイヤーとして浮上し「世界を支配する超大国」として再び自らを確立するための最良の立場を確立することを目指している。
世界の他の国々や、アメリカが追求している新たな多極世界秩序にとって、抑止力や代替経済や貿易や金融体制やアメリカの経済戦争や、実際の戦争から経済と国民を隔離し保護する対抗戦略の組み合わせが必要になるだろう。
アメリカは、自国国民のみならず、いわゆる「同盟諸国」国民にも計り知れない長期的な経済的、社会的、政治的苦痛を強いる準備をしている。アメリカの生活費高騰危機は、今後更に悪化するだろう。新興の多極化世界よりも国内外の経済的苦痛と混乱にうまく耐えられるとアメリカは期待している。多極化の存続は、その逆を証明できるかどうかにかかっている。
Brian Berleticはバンコクを拠点とする地政学研究者、作家。
記事原文のurl:https://journal-neo.su/2025/04/08/worst-case-scenario-trumps-tariffs-walling-us-off-ahead-of-wider-world-conflict/
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The New Atlas 本記事筆者が語る。トランプ関税は、彼の思いつきではなく、ヘリテージ財団論文を実施しているだけ。
この世界的地位を維持し、ひいては我が国と自国の民主主義制度を最大限に守るためには、アメリカが製造業と防衛産業基盤を強化すると同時に、世界的に分散したサプライチェーンの信頼性とレジリエンスを高めることが極めて重要だ。そのためには、必然的に、現在アメリカの多国籍企業が海外に委託している生産の大部分を国内に取り戻すことが必要になる。これは一見、アメリカ経済の全般的な再工業化を示唆しているように見えるが、実際にアメリカを再工業化するために必要な徹底的な教育改革や、インフラや産業への大規模な州の投資などの措置など、実際に必要な措置は全く真剣に議論されていない。
プロジェクト2025の中で説明され、現在アメリカ現政権下で更に実施されている政策は、むしろ特に中国の貿易や産業を含む世界経済活動を混乱させ、海外の産業をアメリカに移転させるのを目的としている。
一例として、半導体メーカーTSMC社はアメリカ本土のアリゾナ州への施設移転を余儀なくされた。インフラの未整備やサプライチェーンの脆弱さや、熟練労働者の不足のが重なって、予算とスケジュールの大幅な超過を引き起こしただけでなく、アメリカ人従業員だけでは対応できない職務を担うため、数百人もの労働者を台湾からアメリカへ移送する必要に迫られた。
同様に、2014年にアメリカが画策したウクライナ政府の転覆とロシア連邦との代理戦争の勃発に始まり、その後アメリカと欧州が課した制裁とノルドストリーム・パイプラインの意図的破壊により、安価なロシア産炭化水素の供給が麻痺した。
このため、ヨーロッパ製造業はアメリカに移転せざるを得なくなった。DWは2023年の記事「ドイツ産業はアメリカに移転しているのか?」で次のように指摘している。
「一つは地政学的緊張の高まりだ。多くのドイツ企業はアメリカを『安全港』と見ている。他の理由としては、比較的低いエネルギー費用とインフレ抑制法に基づく非常に手厚い補助金が挙げられる。」長期的には、アメリカの関税と地政学的妨害により更に多くの産業がアジアやヨーロッパなどの地域からアメリカへ移転せざるを得なくなり、アメリカの不十分なインフラやサプライチェーンや人的資源や不十分な教育・医療制度への負担は増大する一方だろう。
たとえアメリカに産業を移転するための上記基本的要素のいずれか、または全てを改善するために十分な資源が投入されたとしても、追いつくには何年もかかるだろう。
短期的には、現在8年にわたる関税導入と貿易戦争の誘発政策が示しているように、既に莫大な生活費の危機が更に拡大し、食料品代、家賃、燃料費、医療費、教育費などで既に苦労している数千万人のアメリカ人の生活に影響を及ぼすことになるだろう。
ワシントンが執着しているのは中国であり「MAGA」ではない
欧州産業を弱体化させ剥奪するのにアメリカが成功したことは、最終的には中国に関して、世界中で遙かに大規模で野心的な政策を導くことになるのはほぼ確実だ。
プロジェクト2025では、特に中国に関して取るべきいくつかの行動が列挙されており、その中には次のようなものが含まれている。
戦略的に中国製品全てへの関税を拡大し、関税率を「中国製」製品を締め出す水準まで引き上げ、アメリカが主要医薬品などの必需品を入手できなくなることのないような方法とペースでこの戦略を実行する。そして
重大な国家安全保障上のリスクをもたらし、アメリカ消費者をデータや個人情報の盗難にさらすTikTokやWeChatなどの中国のソーシャルメディア・アプリを全て禁止する。さらに
医薬品、シリコンチップ、希土類鉱物、コンピューター・マザーボード、フラットスクリーン・ディスプレイ、軍事部品など、国家安全保障を脅かす可能性がある中国共産党サプライチェーンへのアメリカの依存を体系的に削減し、最終的には排除する。同様に
スパイ活動や情報収集を防ぐため、中国人学生や研究者へのビザ発給を大幅に削減または廃止する。これらは全て現在アメリカの政策となっているか、あるいは現在のトランプ政権下でアメリカの政策へと変化しつつある。
中国の製造業基盤は、医薬品や日用品から建設資材、大規模インフラ整備に至るまで、あらゆるものを世界各国にとって手頃な価格で提供し、世界の生活水準を急速に向上させている。世界は中国との協力を好機と捉えている。
中国の人口の多さ(G7を合わせたより大きい)、巨大で成長を続ける工業基盤、そして世界クラスのインフラのため、アメリカは中国を脅威とみなしている。それは、純粋な国家安全保障上の懸念という観点ではなく、選挙で選ばれていないアメリカ大企業や金融独占企業が支援するプロジェクト2025や他の政策文書に示された「世界の支配的超大国」としてのアメリカの地位を維持するという観点だ。
これら文書は、中国を「深刻な存亡の脅威」と宣言しているが、これは国民国家としてのアメリカやアメリカ国民に対する脅威ではなく(どちらも中国との協力から他の国々と同様利益を得るだろう)、中国製品やサービスだけでなく、中南米からアフリカ、ユーラシア全体にわたるあらゆる場所で中国と並んで台頭している国々の製品やサービスと競争できなくなった深く根付いた企業金融独占に対する脅威だ。
最悪のシナリオ
アメリカが世界各国に対して関税を引き上げている最も直接的で直感的な説明は、アメリカ内の競争力はないが深く根付いた企業金融の独占を外国との競争の激化から守るため、または世界中で拡大する中国の経済的影響力を抑制するための特定戦略から生じているが、多くの人が見落としている、遙かに懸念される可能性がある。それは、アメリカが経済戦争と実際の戦争の組み合わせを通じて意図的に破壊しようとしている世界経済から離脱することだ。
関税がアメリカの生活費危機に及ぼす影響は明らかで、その影響は拡大しつつある。これはアメリカにとって、政治的、社会的、経済的に高くて持続不可能な費用を意味する。そのため、大きな紛争に先立つ予測以外に、そのような費用を容認できるものとして正当化できるものはほとんどない。
アメリカが現在の世界経済体制の意図的な破壊、あるいは自らが公言している「敵国」の1つ以上との大規模戦争に備えているのであれば、まず自らの条件で世界経済から自らを切り離すこと、特に軍事産業基盤全体を含むサプライチェーンにおける中国への依存という点で、事前にそれが必要な前提条件になるだろう。
半導体メーカーTSMCがアリゾナ州に工場を建設するという前述の例は、台湾にあるTSMCの施設が戦争により破壊される可能性に対するヘッジ手段であることは認めざるを得ない。中国自身が施設を破壊しない場合、アメリカは意図的に破壊して、中国による利用を阻止するとさえアメリカ政策立案者は公言している。
2021年にアメリカ陸軍戦争大学が発表した論文「Broken Nest: Deterring China from Nest: Deterring China from Invading Taiwan,(壊れた巣:巣からの中国の抑止:中国の台湾侵攻の抑止)」では下記のように説明されている 。
… アメリカと台湾は、台湾を武力制圧した場合に魅力を失わせるだけでなく、維持コストも莫大なものにする、標的を絞った焦土作戦を計画しておくべきだ。これは世界最大の半導体メーカーで、中国にとって最も重要なサプライヤーである台湾積体電路製造(TSMC)の施設を破壊すると脅すことで最も効果的に実行できるだろう。
これは、この最新の、そして、そうでなければ不必要に極端な関税政策により促進された遙かに広範な準備の縮図を表している。
特に中国を標的にした関税や関連政策は、軍事紛争が始まった場合、アメリカ自身への影響を最小限に抑えるのに役立つだけでなく、事前に中国を弱体化させるのにも役立つと考えられる。
これはいかにも極端に聞こえるかもしれないが、アメリカが既にアジア太平洋地域において中国に対する大規模軍備増強を進めているのを忘れてはならない。またアメリカは、ユーラシア大陸全域でテロリストや過激派を駆使して、中国の一帯一路(BRI)インフラ、BRIプロジェクトに従事する中国人技術者や彼らを守ろうとする現地の治安部隊を標的に破壊して、長年にわたり中国との宣戦布告なき代理戦争を繰り広げてきた。近い将来の中国との紛争を想定して特別に設計された新兵器開発と配備をアメリカは進めている。
それだけでなく、中国との非常に特殊な形の紛争、すなわち中国沿岸や国境内で中国軍そのものと戦うのではなく、世界中の中国の海上輸送を標的とする紛争にもアメリカは備えている。オバマ政権や現在二期目のトランプ政権やバイデン前政権を含む複数のアメリカ大統領政権は、中国の海上輸送の世界的封鎖となる可能性がある措置を講じてきた。
オバマ政権の「アジアへの軸足」は、数十年にわたる「対テロ戦争」を軸に編成されたアメリカ軍から、同等または近似する競争相手との紛争に特化した戦闘力へと変貌を遂げ始めた。トランプ政権下で、アメリカは軍備管理条約から離脱し、弾道ミサイル防衛システムから中距離・長距離ミサイルに至るまで、条約違反のミサイル開発と配備を可能にし、現在アジア太平洋地域全体に配備されている。
バイデン政権下で、米海兵隊全体が諸兵科連合の遠征戦闘部隊からアジア太平洋地域における対艦作戦に特化した部隊へと変貌を遂げ、戦車と歩兵部隊が対艦ミサイル部隊に置き換えられ、対等あるいは近似する勢力との紛争における沿岸機動や海上阻止作戦を目的とする「海兵沿岸連隊」が創設された。
米空軍もバイデン政権下で戦略実施を開始し、トランプ政権下でも継続されている。その戦略には、武力紛争の際、中国が米空軍を標的にして破壊するのをより困難にするため、米空軍力をアジア太平洋地域のより多くの空軍基地に分散させる「Agile Combat Employment(機敏な戦闘運用)」(ACE)戦略も含まれている。
そして、ここ数カ月だけでも、アジア太平洋全域での米軍プレゼンスの拡大に加え、現トランプ政権は、紅海とホルムズ海峡の両方を標的とした中東での米軍増強、ロシアと中国の船舶輸送を動機として引用しての、具体的に挙げたグリーンランド併合の可能性や、具体的に、中国に対抗するため、特にパナマ運河占拠などにより、世界の海上輸送を締め付けるため思い切った措置を講じてきた。
自ら計画的に世界経済を破壊することからアメリカ経済を遮断するための世界的関税政策は過激な政策だが、中国との戦争に特化した米軍の完全な再編や世界中の主要海上要衝の占拠も同様に過激で、その破壊を促進する戦略の一部としてのみ意味をなす。
人類の歴史を通して、終末的衰退に陥った帝国は危険な絶望に陥ってきた。21世紀において、終末的衰退に陥った現代の帝国を代表するのは、核兵器を保有し、地球規模の軍事力を有し、世界経済の支配力により世界体制全体を破壊しうる力を持つアメリカだ。アメリカは、自ら何十年にもわたり主導権を握ってきた世界秩序が制御された破壊を生き延び、最強のプレイヤーとして浮上し「世界を支配する超大国」として再び自らを確立するための最良の立場を確立することを目指している。
世界の他の国々や、アメリカが追求している新たな多極世界秩序にとって、抑止力や代替経済や貿易や金融体制やアメリカの経済戦争や、実際の戦争から経済と国民を隔離し保護する対抗戦略の組み合わせが必要になるだろう。
アメリカは、自国国民のみならず、いわゆる「同盟諸国」国民にも計り知れない長期的な経済的、社会的、政治的苦痛を強いる準備をしている。アメリカの生活費高騰危機は、今後更に悪化するだろう。新興の多極化世界よりも国内外の経済的苦痛と混乱にうまく耐えられるとアメリカは期待している。多極化の存続は、その逆を証明できるかどうかにかかっている。
Brian Berleticはバンコクを拠点とする地政学研究者、作家。
記事原文のurl:https://journal-neo.su/2025/04/08/worst-case-scenario-trumps-tariffs-walling-us-off-ahead-of-wider-world-conflict/
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The New Atlas 本記事筆者が語る。トランプ関税は、彼の思いつきではなく、ヘリテージ財団論文を実施しているだけ。
Worst Case Scenario: Trump’s Tariffs Walling US Off Ahead of Wider World Conflict 31:03BreakThrough News
Trade War Will Be a ‘Colossal Blunder’ For U.S. w/ Prof. Richard Wolff 29:55日刊IWJガイド
「世界中を騒がせる『トランプ関税』政策の青写真判明! 昨年11月に大統領経済諮問委員会委員長が発表した論文にすべて書かれていた!」2025.4.16号
■はじめに~世界中を騒がせている「トランプ関税」政策の青写真が判明! 予測不能な「トランプ関税」政策は、大統領経済諮問委員会(CEA)のスティーブン・ミラン委員長が昨年11月の論文で提唱した「マールアラーゴ合意」に、実はすべて書かれていた!「米国から製造業と雇用が失われたのはドル高のせい」! ドル安誘導のため、関税で「既存の経済秩序を破壊し、各国を交渉のテーブルに引きずり込む」! 欧州が関税に屈しなければ、米国はNATOを離脱! 中国との金融戦争で、中国を疲弊させ、旧ソ連崩壊のように弱体化させる! その先にあるのは、強い米国の復活か、それとも世界から孤立し、没落する米国か!?
■万博開会中なのに、カジノ事業の工事を、24日、大阪府が反対を押し切って強行! 結局、ボッタクリ、手抜きだらけの大阪万博は、カジノのための「踏み台」か!? 万博本体の総事業費は3000億円規模だが、万博を口実に、真の目的であるカジノのために進められるインフラ整備事業は10.2兆円規模と30倍! しかし、夢洲(ゆめしま)は、まだ地盤が安定せず、メタンガスが噴出するゴミ捨て場!恒久的建築物を建てるには、あと20~30年必要!?