筆者自身は、4月16日のコラム<「アメリカはウクライナ戦争を終わらせたくない」と米保守系ウェブサイトが>で、アメリカの本来の保守派が立ち上げているThe American Conservativeというウェブサイトに掲載された論説を紹介した。その内容はトルコ外相の言っていることと一致しているので、The American Conservativeの論説を陰謀論として片付けるのは、もはや誰にもできないのではないだろうか。
メランション自身が「決選投票でルペンに入れるな」と支持者に言っているので、それに従う左翼は反ルペン票を消極的にマクロンに入れる。それ以外の左翼はメランションの言いつけに従わず、ルペンの貧困対策など経済政策が左翼と似ているので決選投票で積極的にルペンに入れる。2017年の前回選挙で初当選したマクロンは、中道左派として振る舞っていたので左翼からも支持され当選した。しかし、大統領としての政策はむしろ中道右派的だった。しかもマクロンの経済政策の多くがうまくいかなかったので、左翼は裏切られたと思っている。今回の決選投票は、ルペンに入れる左翼が増える。 ("But They All Do It...")
フランスの貧困層から見るとマクロンは、庶民の現実がわかっていないエリートな官僚機構を象徴する存在になっている。フランスにはもっと過激にエリート支配に対抗する指導者が必要だ。そういう流れで右翼のルペンが有権者に注目されている。北アフリカや中東からの移民・経済難民を安直に受け入れすぎてあふれている移民問題でも、移民に寛容な中道派が国民に失望されている。エリートが主導する中道の右派と左派は、安い労働力が増えるという資本家的な隠れた意図から、人権擁護を口実に移民を入れてきた。もっと左にいる左翼も、人権擁護の立場から移民に寛容だった。しかしフランスだけでなく西欧全体が、不用意に移民を受け入れすぎて大失敗しており、ほとんどの人がそれに怒っている。移民受け入れに明確に反対している右翼の支持が増えるのは自然な流れだ。 (Shock for Emmanuel Macron as new poll predicts Marine Le Pen could sneak a surprise victory in French election)
ルペンは「極右」とレッテル貼りされている。「極右」は印象として「テロリスト」「過激派」に近い響きであり、この呼び方自体が誹謗中傷を含んでいる。実際のルペンは「保守的なポピュリズム政治家」だ。米国のトランプに近い。トランプは、二大政党制(エリート主導の2政党しか認めない体制)の右側の共和党から当選したが、大統領の4年間とその後の展開を通じてトランプは共和党のエリート主導体制を破壊し、共和党を自分が主導する保守的なポピュリズム政党に変質させた。米国のエリート支配を破壊したトランプは、エリート支配の一機能であるマスコミ権威筋から猛然と攻撃・誹謗中傷され、2020年の大統領選で民主党側から不正をやられて落選させられた。だが、その後もトランプは保守的な人々から強く支持され、「トランプ党」と化した共和党と合わせ、今年の中間選挙(議会選挙)と2024年の大統領選で返り咲きそうな勢いだ。 (The Unstated Scandal: The CIA Collected Info On President Trump) (米国政治ダイナミズムの蘇生)
エリート側は猛反撃する。エリート支配体制の一部である官僚機構(検察や捜査機関)は、トランプやルペンらポピュリスト政治家にロシアゲートに象徴される犯罪の濡れ衣をかける。ルペンも、すでにEUから横領の容疑をかけられている。マスコミ権威筋は、トランプやルペンを危険人物として描き、大統領として不適格だと客観報道を装った誹謗中傷を流し続けて潰そうとする。世論調査も不正に操作される。エリート側はルペン勝利を全力で阻止しようとするだろうから、今回の仏大統領選でも、もしかすると選挙不正でマクロンの勝ちになるかもしれない。そこまでやれない場合、スキャンダルが用意されたりする。 (Be Prepared for a Smear Campaign Against Le Pen Whose Ideas Threaten the EU as We Know It)
EUの捜査当局は4月19日、ルペンが欧州議会の議員だった2004年ごろに資金を横領した疑いで捜査していると発表した。EUは、決選投票の5日前に18年前の疑惑を急に蒸し返してきた。これは明らかに、EUがルペン当選の可能性を高いと考え、エリート支配機構であるEUの脅威になりそうなので妨害策を打つことにしたものだ。ルペン当選の可能性が高いのだ。しかし捜査開始の宣言は、フランスでルペンの得票を減らす効果をもたらすものなのか??。私から見るとかなり疑問だ。フランスで、ルペンが嫌いな人は「やっぱりルペンは悪いやつだ」と思うだろう。しかし彼らはもともとルペンに入れないので関係ない。ルペンが好きな人の多くは、もともとEUが嫌いだ。今回の捜査開始を知って、EUが脅威に感じてルペン当選を妨害しようとしている、EUは許せない、絶対にルペンを当選させる、絶対投票に行くぞ、とルペン好きは思う。EUの妨害策は見かけと裏腹に、ルペンの得票を増やしている。 (EU Exhumes 18 Year Old Embezzlement Charges To Derail Le Pen Presidential Bid)
・・・とか言いつつも私は、決選投票でルペンが勝つ可能性が高いと言い切れない。接戦になるのは確かだ。ルペンが勝ちそうも感じもするが、選挙は水ものなので、どちらが勝つかはわからない。今回の題名は「ルペンが勝ちそう」でなく「勝つかも」にしておいた。山勘としては「勝ちそう」だ。欧州全域で、ルペンやオルバンに象徴される保守派のポピュリストが優勢になる傾向が続いているのも確かだ。今回でなくても、ルペンやその系統の勢力が、フランスなど全欧各地で勝っていくようになる。 (Forecasts for the 2022 French election)