面接回答「えっ……はい!大丈夫です」の「えっ」で即不採用

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■人事部は「準備した回答」を木っ端微塵

新卒の採用面接ではさまざまな角度から質問を浴びせられる。当然、学生も質問を想定した回答を用意して臨むだろう。しかし、企業や質問者によっては同じ質問でも知りたいことが別にあるというケースも少なくない。


たとえば「あなたの成功、失敗体験とはなんですか」という質問。


昔からある質問だが、これは何も成功や失敗の事実を聞きたいわけではない。誰の意思でどういう目的を持ってチャレンジしたのか、そこから身につけたものは何かを知りたがっている。


とくに失敗や挫折に関しては、その中身をしつこく聞かれることが多い。これは失敗経験のコンプレックスをいかに克服したのかを知りたいのであり、それによって社会人になっても挫折することなくやっていけるようなエネルギーを持った人物かを見定めようしている。


学生の中にはたまに「私、失敗したことがありません」と言う人もいるらしいが、そういう人はまず論外だ。学生側も高校、大学時代、アルバイトの経験の中から失敗事例をいくつか探して準備する人も多いだろう。


採用担当者の中には、この質問で物事を順序立てて論理的に考えることができる「論理的思考力」の有無を見極めようとする者もいる。


石油会社の人事課長はこう話す。


「成功・失敗体験であれ、本人がとった行動の背景にどういう思考があり、それがどの程度深かかったのかを見ている。深く考えて行動するタイプは会社に入っても伸びる」


もちろんそのことを踏まえて、自分なりのストーリーを事前に考えて答える学生もいる。見事な論理展開に面接担当者を唸らせることもある。


ところが、石油会社の人事課長はこう見ている。


「スラスラと受け答えができるのは準備してきたということ。その場合は意図的にプレッシャーをかけて緊張した雰囲気を作り出し、自分が言いたいことをどれだけ言えるのかを見る。あるいは視点を変えて何度も同じ質問をすると、真剣に考えて行動しているのか、いないのか、化けの皮が必ず剥がれる」

■人事部に絶対言ってはいけない禁句

また、お約束の質問に「あなたの強みや弱みを教えてください」というのがある。


これは個性や性格を見るためであり、学生にとっては素直に答えればよいのだが、回答によっては評価が低くなる業種もある。


たとえば「課題や問題点が発生すれば、ねばり強く地道に解決策を探るのが強みです」と答えればどんな企業でも無難な答えだろう。


「私は誰よりも知的好奇心が旺盛なほうだと思います」と胸を張る人もいる。ただ、研究開発型やベンチャーのように創造性の発揮が求められる企業では好まれるかもしれないが、何年もかけてスキルの習得が求められるような業種・職種では「この人は飽きっぽい性格かもしれない」と思われて評価が下がる可能性もあるので要注意だ。


言ってはならない禁句というのもある。


「あなたはどんな人生を過ごしてきましたか」という質問をされることがある。消費財メーカーの人事課長はこう言う。


「当然、小・中・高校時代や学生時代の話になるが、その時に『うちのおかあさんが』という言い方をする学生がいるが、母でなくおかあさんと聞くと、甘えんぼうだなと思ってしまう。しかも何度も『おかあさん』のフレーズが出てくると、母離れができていなくて、自分では決められない人ではないのか、会社に入ってもちゃんと務まるのかと不安になる」

■「えっ……はい」の「えっ」で即落ちる

「それを言ったら即終わり」といった回答は他にもある。


近年は若くして海外拠点に派遣する企業も多いが、内向き志向の学生も多いと言われる。面接では「海外に行かせても大丈夫なのか」という視点からチェックしている企業も多い。


自動車メーカーの採用課長は「海外で働きたいと思いますか、と聞くと『海外で仕事をバリバリやってみるのが夢でした』と答える学生は多いが、パスポートも持っていない、学生時代も日本各地を旅行した経験のない学生もいる」と語る。


英語力が高い学生は海外志向が強いともいえるが、それでも安心はできない。エンジニアリング会社の人事部長は学生のチェックポイントとして「インドネシアの奥地やアフリカに赴任できますか?」と聞いている。


「海外赴任と言えばアメリカやヨーロッパに行きたいと考えている学生がいるが、当社は新興国が圧倒的に多い。インドネシアの奥地と言われて、一瞬間を置いて、『えっ、はい』と、驚いた顔をするとか『何年ぐらいいるのですか』と聞いてくる学生はまずダメだ。ホンネでは行きたくないと思っているのは間違いない。行きたくない社員を無理矢理派遣しても現地に溶け込めないでノイローゼになって戻ってくる社員もいるからだ」


人事部長は海外で活躍するには語学力よりも、何事にも物怖じしない「胆力」が大切と指摘する。どんな面接でも付け焼き刃ではなく、担当者と堂々と渡り合える肝の太さを養うことが大事なのかもしれない。


(溝上憲文=文)