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徽宗皇帝のブログ

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情報支配
なかなか示唆的な記事である。「世界的情報企業による情報支配」と「国家による情報支配」のどちらも好ましいことではないが、軍事や政治や経済の国家的独立性を保ち、安全を維持するには国家による情報支配のほうがまだマシという面はあるのではないか。今の時代、どのように情報統制をしようが、どこからか真実は漏れてくるものだ。ならば、世界的情報統制のほうが危険性は大きいと見るべきだろう。
要するに、情報の一元化は危険の元だ、ということである。


(以下引用)


実は「儲かる」中国のサイバー統制——政治的安定とは別のもう一つの理由


「サイバーセキュリティ法」の導入に、ネット規制を回避するソフトウェアVPNの規制強化。SNSでの書き込みの実名登録化など、中国のサイバー統制が目立っている。


その一方、中国ネットサービス最大手の「アリババ」は、トランプ米大統領に100万人の雇用創出を約束……情報統制とは「非対称」にみえる地場ネット関連企業の隆盛との関係を読み説く。

「防火長城」の規制

中国ではGoogle、Facebook、Twitterなど、米国中心のネット検索大手やSNSにアクセスできない。LINE、インスタグラムも使えない。外敵の侵入を防ぐため築かれた「万里の長城」(GreatWall)をもじって、このネット情報検閲を「グレート・ファイアウォール(防火長城)」と呼ぶ。


万里の長城



Shutterstock: Hung Chung Chih


6月1日に施行されたサイバーセキュリティ法は「サイバー主権の保護」を強調し、「ネット関連サービスは、中国基準に合致したもの」を外国企業に要求している。「社会主義的価値観」を強調しているため「情報統制」という見方が広がった。VPNへの規制強化と併せ、10月に開かれる中国共産党第19回党大会を前に、安定を揺るがす「芽」を摘み取るのが目的だろう。


しかし、狙いはそれだけではない。アリババと騰訊控股(テンセント)の2社の株価時価総額が40兆円を超え、世界の「トップ5」入りも近いというニュースを知れば、国内産業の保護育成という経済的利益こそが、隠れた狙いなのではないかと思えてくる。

Google撤退などで急成長した中国企業

規制が経済実利につながった例の一つがGoogleである。2006年に中国市場に参入した同社は一時、中国で30%を超えるシェアを獲得した。当初は、中国政府が要求した新疆、チベット、民主化運動などの情報規制をのんでいたが、アメリカで「検閲容認だ」との批判を浴びたため、2010年、中国から撤退した。


百度の画面



Damir Sagolj/Reuters


日本メディアは中国の情報統制を非難したが、その陰で急成長したのが、中国発の検索サイト「百度(バイドゥ)」と中国版Twitter「微博(ウェイボー)」、それに中国版ラインの「微信(WeChat)」などのネット企業だった。百度は、検索サイト市場ではGoogleに次いで世界2位に成長。微信は、スマホ決済など電子商取引をはじめ飛行機、鉄道の予約、流行のモバイク(乗り捨て自由のシェア自転車)使用に必需なアプリ。中国ではいまや微信なしに日常生活はできない。


Googleの例は、アメリカのネット企業が中国市場で自由に競争すれば、未熟な中国企業が成長できなくなるため、国内産業を保護、育成する狙いがあったことをうかがわせる。

スノーデン、雨傘デモの効果も

「スノーデン効果」もあった。米国家安全保障局(NSA)の元職員・エドワード・スノーデン氏は2013年6月、「NSAは中国本土も含め世界中でハッキングを行っている」と暴露。中国当局はこれを契機に米IT企業への締め付けを開始した。中国政府は企業に国産通信機器を使うように要求し、米ネットワーク機器企業の中国での受注は激減するのである。


2014年には日本のLINEが使えなくなった。同年秋、香港で民主化を要求する若者中心の「雨傘デモ」が炎上すると、インスタグラムも規制された。公式の理由説明はないが、SNSを通じ政府批判が拡大することを恐れたのは間違いない。一方、規制によって潤ったのが中国の通信機器産業。政治的風波を商機に転じたのである。


「サイバーセキュリティ法」もその要素がある。同法が外国企業に要求するのは「ネット関連で提供するサービスは、自国ではなく中国基準に合致したもの」と「中国で得たデータは、中国に置かれたサーバーで管理する必要がある」の2点。


外国企業からすれば、コスト増と情報流出のリスクがある。中国ビジネスにブレーキをかける企業もあるかもしれない。半面、規制で利益が上がるのは中国企業だ。情報規制が主たる目的のように見えるが、経済実利を狙ったしたたかさが透ける。商業資本主義に長けた「社会主義国」。

サイバー主権の論理

とはいえ規制の主要な狙いは政治にある。「共産党独裁の維持」と単純化するのは簡単だが、彼らの論理を社会構造と政治文化、歴史から分析すると、別のカオがみえるはずだ。


情報遮断の根拠は中国が主張する自国の「サイバー主権」だ。トランプ政権の登場などで、グローバル化に抗う内向きベクトルが優勢のように見える。しかしそれは幻想である。ヒト、モノ、カネが国境を越え、相互依存が深まるグローバル化は不可逆的であり、中国だけが独自の価値観を押し通すことはできない。それがネット世界である。


中国は世界第2位の経済大国に成長したが、豊かさは国民の権利意識を強め、意識の多元化は共産党の統治を揺さぶる。共産党前総書記の胡錦涛氏は「共産党は外部環境の変化と試練に対応できず、一党統治の維持は困難になる」と、危機感を露わにしたことがある。これがサイバー主権を根拠にネット規制する党の論理である。

上に政策あれば下に対策

規制はネットだけではない。共産党はこの春から中国の大企業約3000社に対し「党組織を社内に設置し、経営判断は党組織の見解を優先する」という項目を「定款」(会社の規則)に入れるよう要求した。


習近平総書記


習近平体制ではネット企業だけでなく、大企業全体に対しての規制も強まっている。


Shutterstock: 360b


「党支配を優先する国有企業との取引には消極的になる」と言うのは、日本の大手企業の経営者である。「党の指導」と「自由な企業活動」は「水と油」の関係だ。だから矛盾が「妥協できない臨界点」に達するかもしれないと予測するのが「常識」だろう。


だが中国には昔から「上に政策あれば下に対策あり」という“非常識”がある。「上部の決定に対し、庶民は抜け道をあみだす」という意。「面従腹背」にもつながる。改革・開放政策の下で、多くの外国合弁企業が生まれたが、その中にも党組織があり、企業内では党組織の意思が優先した。ただそれはあくまで建前の話だった。


中国は、日本のような「タテ型秩序」が貫徹する社会ではない。戦乱と革命の歴史の中で、国家と政治への帰属意識は薄い。それが人々の意識を経済志向にさせ政治的無関心に誘導する。引き締めを繰り返すのは、効率的な国家運営に必要な「タテ型秩序」が根付かないからだ。


情報統制と聞けば、息苦しい監視社会を想像するかもしれない。しかし中国社会が「柳に風」の柔構造であることは覚えておいてよい。情報統制が導入されても、すぐ抜け道が編み出される。VPNへの規制強化も同じ。またイタチごっこの始まりである。


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