米紙ワシントン・ポスト電子版が20日(日本時間21日)編集委員会としての論説を発表し、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で開催の是非が問われる東京オリンピック(五輪)は「延期、または中止すべき」と提言した。


同紙は世界中から選手と観客が集まる五輪は、感染を拡大させるウイルスの「ふ化器」と評した。そして、先行きが不透明な中、予定通り開催することは「完全にばかげている。全くの無責任」と痛烈に批判した。


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米国の有力紙ワシントン・ポストが、7月24日の東京五輪開幕にNOを突きつけた。同紙は、20日の聖火到着式が新型コロナウイルスの影響で「伝統的なファンファーレはなかった。一般公開されず、招待された200人の学童は参加できなかった」と極めて異例の形で行われたと紹介。その上で厳しく批判した。


「予防策を講じるのは良いが、全世界が歴史に残る脅威…パンデミックと闘う中、五輪と日本の関係者が、東京五輪を開催できるかのように行動していることは、完全にばかげている…いや、全くの無責任だ」


新型コロナウイルスは、発生した中国、日本などのアジア圏にとどまらず、欧米で爆発的に感染が進んでおり終息の兆しがない。同紙は、200以上の国と地域から選手が出場し、来場する観客は1000万人とされる東京五輪は「(ウイルスにとって)ふ化器のようなもの。致命的な広がりをもたらす」と指摘した。


加えて、開幕まで4カ月半ある中、サッカーの欧州選手権などスポーツの主要な国際大会が延期され、ワールドツアーが中断されたバドミントンのように代表を決める予選や選考会が中止を余儀なくされた競技があると指摘。韓国ではフェンシング代表3選手が感染したとし「五輪出場を目指す選手は練習も出来ない」と厳しい現状を紹介した。


一方でIOCと日本政府、開催都市の東京都は緊密に連絡を取り合い、予定通りの開催へ動いている。バッハ会長は「中止は議題にない」と強調し、安倍晋三首相も「完全な開催を目指したい」と表明。小池百合子都知事も19日の定例会見で「中止も無観客もあり得ない」と断言している。


ただ同紙は「五輪と日本の当局者が現実を認めることを拒否する裏には、危機にひんしている金と名声がある」と批判した。「日本は建設とインフラ改善に多額の投資を行い、IOCも数十億ドルの放送権を活用している」と指摘。その上で「五輪の役員は選手の利益を含む他の利益を、最終利益より優先することはなかった。ある時点で大会を続けることができないことに気付くだろう」とした。


 


ワシントン・ポストは論説で「トランプ米大統領でさえ予定通りに開催しないことを示唆した。延期、中止の必要があることは明らか」と指摘した。トランプ氏は12日、東京五輪について「無観客など想像できない。1年延期したほうが良いかも」と私見を語った。13日に安倍首相と電話で会談し、16日には新型コロナウイルスの件で行ったG7首脳の緊急テレビ会談で東京五輪について協議。19日に、その内容について「安倍首相はどうするのか、まだ決断していないと話していた」と明かすも、決断を受け入れる考えを示した。