忍者ブログ

徽宗皇帝のブログ

徽宗皇帝のブログ

経済学としての戦争と軍事費
「大摩邇」所載の「マスコミに載らない海外記事」後半で、前半もいい内容だが、多くの人には既知の内容だろうから、やや軍事専門的な内容だが非常に世界政治の今後に関わる事実を描いている後半を転載する。
なお、記事中で「安価」と書かれているミサイル1発の値段、30万ドルは、日本円だと、かりに1ドル100円という単純換算でも3000万円であり、現在のレートに近い1ドル150円換算なら4500万円である。「安価な」ミサイル2発で約1億円が消えるわけだ。軍事費がいかに馬鹿げた金食い虫か分かる。
ちなみに、日本が日露戦争遂行のために借りた国債(政府借金)をユダ金に完済したのは20世紀後半、昭和末期である。政府を相手にカネを貸すというのは、それほど長期スパンでの話なのである。それがユダ金思考である。なお、兵器製造費用の詳細を政府や政治家が知るはずはない。言われるままに払うだけだ。軍需産業がいかにおいしい仕事か分かる。まあ、政府と商人がツーカーでカネ(税金)を配分しているだけだ。

(以下引用)



 アメリカの世界覇権獲得の野望と、それを実現するための実際の軍事的手段との間には大きな乖離があり、それが拡大していることを理解して、ワシントンと、アメリカに拠点を置く兵器メーカーは、より安価でより多数の兵器を生産できる新世代兵器を生産するための新たな設計・生産哲学を模索している。

 この取り組みの最前線にいるのは、アレスやアンドゥリルなどの「新興」兵器メーカーだ。アメリカは本質的に中国より革新的だという考えに基づき、アメリカは中国より革新的だと両社は考えている。しかし、この拡大する格差に対処しようとする両社の試みは、アメリカが支配しようとしている現実世界から、アメリカ外交政策が、いかにかけ離れているかを露呈している。

 アレス:より安価だが、より多くのミサイル…

 War Zone誌は「シリコンバレーの支援を受けた新興企業が新しい『安価な』巡航ミサイルのコンセプト飛行をテスト」という記事で、アレス社がどのようにして、高価だが数が少ないアメリカの既存の長距離精密誘導ミサイル兵器庫を、より小型で安価で、より多数のミサイルで増強しようとしているかを説明している。

 小型で安価なミサイルは、レイセオン社のトマホーク巡航ミサイルやロッキード・マーティン社の統合空対地スタンドオフミサイル(JASSM)など、より高価なミサイルに比べると性能は劣るが、大量生産される予定だ。より安価なアレス社製ミサイルは優先度の低い標的に使用され、性能は高いが数が少ない同種ミサイルは重要な標的に使用される。

 記事は次のように主張している。
 
現在の仕様も計画中の仕様もまだ公表していないようだが、ミサイルの単価を30万ドルにすることを目標にしているとアレス社は述べている。

 アレス社のミサイルが実際戦場に届くまでにどれほど時間がかかるかということに加え、これらミサイルを1発30万ドルで製造するという公表された目標すら、中国どころかロシアの軍事産業生産に匹敵するか、それを上回るために必要な革命的イノベーションには程遠いように思われる。

 ウクライナを拠点とするメディアによれば、ロシアは既に遙かに高性能なミサイルを1基30万ドルという低価格で生産しているためだ。ディフェンス・エクスプレスは2022年の記事「ロシア・ミサイルの実際の価格はいくらか:「カリブル」、「Kh-101」、「イスカンデル」ミサイルのコストについて」で、カリブル巡航ミサイルのコストは30万ドルから100万ドルの間としている。これは欧米諸国で生産される同等ミサイルより遙かに安い。

 2022年の記事は、当時ロシアのミサイル備蓄が枯渇したと欧米が報じていたため簡単に却下されたが、その後、ロシアはウクライナ全土の標的に向け毎年4,000発以上のミサイルを発射していることを同じ欧米メディアが認めている。これは、ロシアのミサイル生産が大量なのと同様に、経済的なことを示唆している。

 したがって、アレス社が最初のミサイルを製造する前でさえ、同社が実現しようとしていることの前提そのものが、ロシアの軍事産業基盤が既に大規模に行っていることに遠く及ばず、まして中国の軍事産業基盤が何を成し遂げられるかは言うまでもない。

 また、アレスが提案する低価格ミサイルと同じくらい安価な高性能兵器に加えて、ロシアと中国両国は、より安価でそれほど高度でない兵器で既存兵器を増強することも十分可能な現実もある。

 UMPKを搭載したFABシリーズ滑空爆弾をロシアが配備したのは、この好例だ。誘導滑空爆弾は、特殊軍事作戦の過程で構想から量産へと進み、戦闘での性能に基づいて改良が加えられ、より高価な長距離精密誘導兵器に代わる、より安価で、より多く、それでも効果的な代替品となった。

 多くの点で、アレスがやろうとしていることは、ロシアと中国が既に行ってきたこと、そして今後も行っていくだろうことの劣悪な模倣だ。

 Anduril: 中国とロシアを上回る革新…

 アレス社と同様、アメリカに拠点を置く兵器製造会社アンドゥリル社は、ウクライナ紛争の中でロシアが欧米諸国より生産量が多く、中国の軍用機、艦船、ミサイルの生産量がアメリカや欧州の代理諸国を上回る中、より安価でより多数のシステムが戦況を均衡させるのに役立つと考えている。

 アンドゥリルは、これを「ソフトウェア定義製造」を通じて実現するよう提案している。同社によれば、このプロセスにより、電気自動車メーカーのテスラは、自社のソフトウェアと電子機器を中心に車両を製造することで、従来の自動車メーカーより優れた車両をより多く製造できるようになったという。

 利点は明らかだ。従来の自動車メーカーは物理的な自動車を自社で製造しているが、現代の自動車で使用されているオペレーティング・システムやセンサーや他の電子部品やシステムなど、サブシステムの多くは他企業に外注されている。多くの場合、このソフトウェア、センサー、その他様々な部品は、多数の異なる企業に外注されている。自動車設計を変更するには、この多数の企業と連携する必要があり、変更や改善が面倒になる。

 すべてのサブシステムを単一の社内開発ソフトウェアに組み込み、その周りにハードウェアを構築することで、変更をより迅速に行うことができ、結果として、より高品質の自動車をより迅速に大量生産できるようになる。

 アンドゥリルは、この同じプロセスを使用して、中国に匹敵するか、中国を上回る大量のドローンやミサイルや他の武器や弾薬を製造することを想定している。アンドゥリルにとっての問題は、ソフトウェア定義の製造が中国の広大で高度な産業基盤で既に広く使用されていることだ。この「利点」が意味をなさなくなったため、アメリカは再び大きな不利な立場に立たされている。中国は、従来の軍事兵器、弾薬、装備をアメリカより遙かに大量に製造できるだけでなく、ドローンやミサイルなどの高度で急速に改良されたソフトウェア定義システムを構築することもできる。

 これは、アメリカが何をしようと、中国はそれを遙かに上回る規模でより良く実行できることを意味する。

 誤った前提、悲惨な結末

 アレスとアンドゥリルの前提は根本的に間違っている。両社は、ウォール街やワシントンで彼らが奉仕する特別利益団体と同様、アメリカはロシアや中国のような敵国より本質的に優れていると信じている。彼らの共通認識では、アメリカが直面する不利は偶発的なもので、それを克服するには十分な政治的意志を喚起するだけでよいのだ。ロシアと中国がより大規模で有能な産業基盤を持っていることは、アメリカ自身の政治的焦点と意志の一時的欠如と見なされており、アメリカの産業基盤を拡大する措置を講じることで、アメリカは必然的に再びトップに立つことになる。

 現実には、ロシアと中国の産業基盤は、アメリカの政治的意志がどんなに強くても克服できない要因を含む様々な要因により、アメリカより大きい。特に中国の人口はアメリカの4倍だ。中国は毎年、科学、技術、工学、数学の分野でアメリカより何百万人も多く卒業しており、その産業基盤(軍事や他のもの)の物理的規模は、この人口統計上の不均衡を反映している。

 たとえアメリカが軍事産業基盤を改革し、利益主導の民間産業を解体して目的志向の国有企業に置き換える政治的意思を持っていたとしても、アメリカが同様に教育制度を改革し、学生から一銭残らず搾り取るのではなく、熟練労働者を育成するようにしたとしても、アメリカが産業基盤拡大の基本的前提条件である国家インフラに投資したとしても、中国が既に、これら全てを実行し、アメリカとG7諸国を合わせたより人口が多い中でそれを実行した現実に直面することになる。

 世界人口の5%未満しかないアメリカが、他の95%に対して優位性を維持すべきだという前提は根本的に間違っている。

 アメリカ人が他の国々より本質的に本当に優れているのでなければ(実際はそうではないが)、世界を支配するには世界の人口の残り95%を分裂させ破壊するしかない。多くの点で、これが何世代にもわたる欧米諸国の世界覇権を特徴づけてきたものであり、今日ワシントンがやろうとしていることなのだ。

 それにもかかわらず、経済力と軍事力の面で世界が追いついてきたのは、まさにアメリカが本質的に優れているわけではないからだ。欧米の覇権は歴史上の例外で、欧米の優位性の証明ではない。経済力と軍事力の面で世界が追いつき、数でも優位に立ったことで、次の世紀は多極化した世界によって決まるだろう。

 この台頭しつつある多極世界では、それを生み出した要因、すなわち紛争より協力に基づく地政学的勢力均衡、利益より目的によって推進される産業やインフラや、闇雲な権力の追求よりも、実践的教育と勤勉によって築かれる進歩が、この新しい世界の基本原則としてしっかり定着されなければならない。

 多極化世界がアメリカの分断と破壊の試みを乗り越え、そもそも多極化した世界を生み出した原理に投資し続ければ、アメリカ製のいかなる超兵器もそれを克服できない。

 ブライアン・バーレティックはバンコクを拠点とする地政学研究者、ライター。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

 記事原文のurl:https://journal-neo.su/2024/09/03/us-seeks-super-weapons-to-reign-as-sole-superpower/

----------

拍手

PR

コメント

コメントを書く