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食用コオロギの粉末を学校給食に 全国初、まず徳島で
食用コオロギを養殖するグリラス(徳島県鳴門市)は学校給食事業に参入した。徳島県立小松島西高校(小松島市)が28日、同社から仕入れた乾燥コオロギの粉末を校内調理し、給食として提供した。同校は今夏にコオロギ食材の調理実習などを手がけており、生徒や教師らの間で昆虫食への理解が深まっていた。コオロギの給食導入は全国で初めてという。
グリラスと小松島西高校は同日、報道陣に給食の調理や生徒の食事のようすなどを公開した。調理師を目指す食物科の生徒が、校内の食堂で昼食づくりを担当。グリラスが納入したコオロギ粉末を使い、給食メニューの第1弾となる「カボチャコロッケ」を用意した。ひき肉に代わるたんぱく源として、コオロギ粉末をカボチャに混ぜたのが特徴だ。
小松島西高では食物科の生徒が自ら給食の献立を考え、調理している。全体で500人余りいる生徒・教職員のうち、170人程度が毎日給食を利用しているという。食物科長の多田加奈子教諭は「給食に昆虫メニューを取り入れることで、SDGs(持続可能な開発目標)やエシカル(倫理的)消費を深く考えるきっかけになれば」と期待する。
実際にカボチャコロッケを食べた生徒からは「コオロギと聞くと抵抗があるが、粉末で中に入っている分には気にならない」「何となくエビに似た風味がして、おいしかった」などの声が聞かれた。多田教諭は「メニューは未定だが、年明けにもコオロギ給食の第2弾を予定している」と言い、その後の定番化も検討する。
小松島西高は6月、食用コオロギの粉末を使った調理実習と、昆虫食に関する全校生徒向けの特別授業を行った。調理では皮の生地にコオロギ粉末を練り込んだ肉まんを試作。授業ではグリラスの広報担当が講師となり、人口増に伴う世界的な食糧不足の問題を指摘しつつ、コオロギに代表される「高たんぱくの昆虫食」の有用性を説いた。
「こうした下地が、今回の給食導入につながった。さらに採用校を増やしたい」とグリラスの西郷琢也氏は話す。コオロギなどの昆虫は、牛や豚などの家畜に比べて圧倒的に少ない飼料で短期間に育つ。グリラスは通常は廃棄される小麦残さのフスマなどを餌に使い、環境にやさしい循環型食材としてコオロギの定着を目指している。
グリラスは徳島大学発のスタートアップで、同大助教の渡辺崇人社長が2019年に設立した。翌20年に「無印良品」を手がける良品計画がグリラスのコオロギ粉末を使ったせんべいを商品化して話題を呼んだ。21年からは自社ブランドの「シートリア」で菓子やレトルトカレー、パンなどの販売を始めた。
現在は徳島県西部の美馬市にある廃校などを使って食用コオロギを養殖している。手作業が中心のコオロギ養殖を自動化するための研究や、殻が透明で白い粉末が作れる品種の開発などにも取り組んでいる。
(管野宏哉)
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