マスコミに載らない海外記事さんのサイトより
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2017/04/post-87a3.html
<転載開始>

2017年4月25日
Paul Craig Roberts


資本主義が成功しているのは、主として、経済活動にまつわる大半の費用を、部外者や環境に押しつけることができるせいだという結論に私は至った。言い換えれば、資本家は、連中の費用が外部化され、他者が費用負担しているおかげで、利益を得るのだ。アメリカでは、社会と環境が、資本家の活動で産み出されたもののつけを払わされているのだ。


過去、批判者たちが外部費用に関する問題を提起すると、つまり、企業にとっての外部費用企業の活動によって産み出されたにもかかわらず、経済学者、活動により被害を受ける人々は、彼らが被った被害を補償されるので、実際には問題にならないと答えるものだった。この発言は、資本主義は一般の福祉に役立つという主張を強化することを意図したものだった。ところが、アメリカ財産権の極端に原始的な性格が、被害を被る人々が補償されることが滅多にないことを意味している。資本主義の擁護者たちは、抽象的には、体制を救っているが、現実には救っていない。


私の最近の記事“インレット・ビーチの破壊”で、もし既存の不動産所有者に押しつけられている外部費用を補償することが必要になれば、操業中の不動産開発業者の、あるとしてもごくわずかしか利益がでないことが明らかになった。http://www.paulcraigroberts.org/2017/04/17/destruction-inlet-beach/


いくつか例を検討しよう。高い家が、それより低い家の前に建てられると、後者からの湾の眺望は封じられてしまう。眺望が阻止された家の不動産価値の損害は膨大だ。不利な条件におかれた既存の不動産に対して、価値の下落を補償しなければならなかったら、開発業者は、そのような高い建物を建てるだろうか?


ある家族のバケーション用住宅や、住まいの隣に、20人なり、30人なりが眠れるような家が建てられたら、騒音や混雑で、その家族が自分の所有地を楽しむ可能性は破壊される。もし、その家族に、その損失を補償しなければならなかったら、“シングファミリー用住居”を装ったホテルが建設されていただろうか?



フロリダ州ウォルトン郡は、こうした極めて重要な問題に全く呑気で、30人収容可能ながら、駐車場が三台分しかない建物の建設を許可している。レンタルで止まる客は、どこに駐車するのだろう? 一体何人の住民たちが、自宅の車庫の道がブロックされたり、人の自動車が芝生に駐車されたりという目にあうのだろう?


不動産開発業者が、混雑をもたらしたので、移動時間も長くなった。30-A道路経由のインレット・ビーチから、シーサイドの間は、かつて5分のドライブのだったのに、今や45分かかり、夏や休日には、さらに長時間になる。住民と、訪問者たちが、開発業者の利益のために、時間という犠牲を払わされている。道路は二車線で、拡幅は不可能だ。ところがウォルトン郡の計画局は、起きるであろう渋滞に何の対策もとっていない。


州と連邦の道路のサービス・エリアは二車線だったので、乱開発のために、ハリケーン時の避難が不可能になった。フロリダ州とアメリカ納税者は、ハリケーン時避難の多少の形を作るため、二車線の道路を四車線の道路に変える費用を負担しなければならなかった。十年たっても、南北に走るハイウェイ79の拡幅は、州間道路10の合流点まで、完成していない。幸いにも、ハリケーンに見舞われてはいない。


こうした費用納税者に負担させるのではなく、もし開発業者が支払わなければならないことになったら、それでも彼らのプロジェクトは利益があがるのだろうか?


次に、アップルやナイキのようなアメリカ企業がアメリカ人に販売する商品製造やサービスを海外移転する外部費用を検討しよう。アメリカ国内の製造施設が閉鎖され、雇用が例えば、中国に移転されると、アメリカ労働者は、職、医療保障、出世、年金への備えや、同等の雇用や、いかなる雇用も見つけられない場合には、往々にして、自尊心さえも失う。住宅ローンや自動車ローンを払いそこねた人々は、自宅や自動車を失う。個人所得や売り上げ税が減少して、都市、州や連邦政府は税基盤を失い、放棄されたコミュニティーの住宅や商業用不動産価格の下落で、不動産税も減る。給与税積立金が減って、社会保障やメディケアの資金調達も損なわれる 。州や地方のインフラが劣化する。犯罪が増加する可能性もある。セーフティーネット政策の強化が必要だが、税収が減少しているため、支出は削減される。都市や州の公務員たちは、年金が危険にさらされていることに気がつく。教育も影響を受ける。これらの全ての費用は、アメリカ労働力を、より安価な外国の労働力に代えることによる、アップルやナイキの利益を遥かに上回る。ネオリベラルの主張とは矛盾して、企業が得る労賃の急減にもかかわらず、アップルやナイキの価格は下がっていない。


聡明に統治されている国なら、こういうことを許すまい。アメリカの統治が余りにまずいので、連中の利益のもとになる費用を外部の第三者に押しつけることが可能であるがゆえに、グローバル企業の重役や株主は大いに儲けている。


アメリカ資本主義は、ごく少数の人々の利益のために、多数の人々から略奪する仕組みだというのが明白な事実だ。ネオリベラル経済学は、この略奪を支持するために、作り上げられたのだ。言い換えれば、ネオリベラル経済学者は、欧米の印刷・TVメディア同様の無節操な連中に過ぎない。


ところが、アメリカ人は実に無頓着なので、略奪されている人々が“自由市場資本主義”の利点を賞賛するのを聞かされることになる。


これまでの所、我々は資本主義が押しつける外部費用の表面を引っかいただけにすぎない。営利活動の結果による空気、土壌、運河や大洋の汚染を想起願いたい。2011年3月以来、太平洋にあふれでている福島の放射能汚染水を想起願いたい。農業用化学肥料の流出によるメキシコ湾の酸欠海域を想起願いたい。上流での乱開発による、湾に注ぐ川の水量が減ったことによる、フロリダ州アパラチコーラ湾の牡蠣養殖場の破壊を想起願いたい。こうしたものの例はキリがない。こうした破壊の責任を負う大企業は、費用を全く負担していない。


地球温暖化や大洋の酸性化が、資本主義の炭素を基本とするエネルギー体制の結果だというこになれば、資本主義の外部費用のおかげで、世界丸ごと死に絶えかねない。


自由市場の擁護者連中は、経済計画を笑い物にするのが好きで、アラン・グリーンスパンとラリー・サマーズは実際“市場は自動調整する”と述べた。この自動調整の兆しはどこにも皆無だ。それどころか、外部費用が外部費用の上に積み重なる。計画の不在こそが、乱開発で、道路30-Aが機能不全に陥った理由で、乱開発で、ジョージア州アトランタなどの都市地域が、機能不全に陥った理由なのだ。計画は、市場と置き換わることを意味していない。開発の費用を第三者に転嫁する代わりに、合理的な結果を生みだす規則を作ることを意味しているのだ。


もし資本主義が、その活動の費用を負担しなければならなくなったら、一体どれだけの活動が引き合うのだろう?


資本家連中は連中の外部費用を負担する必要が無いのだから、一体何が費用を抑制するのだろう?


外部費用が、外部費用にまつわる廃棄物を処理する生物圏の能力を越えてしまえば、生命は終わる。


原始的財産権制度では、我々は規制されていない資本主義を生き抜けない。ハーマン・デイリーなどのエコロジー経済学者たちはこれを理解しているが、ネオリベラル経済学者連中は、資本家による略奪の擁護者だ。地球上での、人類の存在が軽微だった時代の遙か昔、ダリが“からっぽの世界”と呼ぶ世界では、生産活動は、地球が浄化できる以上の廃棄物を産み出さなかった。ところが現在の人間の存在が大きい、デイリーが“いっぱいの世界”と呼ぶ場所では、徹底的な規制が必要なのだ。例えば、トランプ政権の環境保護の後退計画は、外部費用を何倍にもするだろう。これが経済成長を増大するなどと主張するのは愚かなことだ。デイリー(とマイケル・ハドソン)が強調しているように、国内総生産(GDP)として知られている尺度はきわめて欠陥があり、生産の増加が、その価値より、製造により多くの費用がかかっているのかどうかが分からないのだ。GDPは、実際は、略奪による費用を考慮しない、略奪されたものの尺度だ。環境規制緩和とは、資本家が、環境を、ごみ捨て場として扱えることを意味する。地球が極めて有毒となり、回復できなくなる可能性がある。


アメリカ合州国と、欧米世界全般において、財産権は、ごく狭い、切り詰められた形でしか存在していない。開発業者は、人の眺望を永久に奪い取り、連中の建設に必要な期間、人の孤独を奪うことができる。もし日本では、眺望に所有権や、騒音の緩和を必要とする静けさや、所有地の日照権があるのなら、どうして、アメリカ人がそれを得られないわけがあろう? 結局“例外的国民”だとされるではないか。


しかし、事の真実は、アメリカ人は、人類史上もっとも例外的ではない人々だ。アメリカ人には何の権利もないのだ。不運でとるに足りない生き物である我々は、何であれ、資本家連中や、その傀儡政権が我々に押しつけるものを受け入れるしかないのだ。しかも、我々は余りにも愚かで、それを“自由と民主主義のアメリカ”と呼んでいる。


Paul Craig  Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリプス・ハワード・ニュー ズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼 の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Order.が購入可能。


記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2017/04/25/looting-machine-called-capitalism/
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文中で、ご本人があげておられる前の記事、“インレット・ビーチの破壊”は翻訳していない。この文にもある日本に関する言及に納得できなかったのが理由。該当部分は以下の通り。


世界中で活動してきた建築家である友人たちが、日本では、もし眺望が良くて、それを登録すれば、眺望が自分のものになると教えてくれた。誰も、その眺望を妨げるような建物を建てることはできない。


しかも、友人たちは、人の所有地に日影を生じるような建物を建設することは誰にも許されないと教えてくれた。


開発業者が、既存の住民を騒音で悩ませることも許されない。日本では、騒音規制の結果、ほとんどがプレハブ建築なのだ。住宅は建設されるのではなく、組み立てられる。


Friends of mine who are architects who have operated all over the world tell me that in Japan, if you have a view and register it, that is your view. No one can build a structure that cancels your view.


Moreover, my friends inform me that no one is permitted to build a structure that casts a shadow over your property.


As for developers inflicting noise on established residents, it is not permitted. Noise regulations have resulted in largely pre-fabricated construction in Japan. Houses are assembled, not constructed.


今回の記事の日本に関係する部分は、同じ理由で賛成同意できないが、「弘法にも筆の誤り」例として、翻訳させて頂いている。日本に関する記述以外は、もちろん異議はない。


この話題、先にご紹介したIWJの岩上安身氏による関良基氏インタビューと直結している。


食い物にされる水道民営化・ダム・治水――国富を売り渡す安倍政権の水政策の裏を暴く!岩上安身による拓殖大学准教授・関良基氏インタビュー 2017.4.25


関良基氏はインタビューのテーマ「社会的共通資本としての水」も書いておられる。
関良基氏はあの宇沢弘文氏とともに「社会的共通資本としての森」の編者でもある。
宇沢弘文氏が編者である「社会的共通資本としての川」にも書いておられる。


社会的共通資本としての森、水、川、当然、田中正造を連想する。


大本営広報部の連日の北朝鮮脅威報道の中、与党高官がこぞって外遊。すでにロシアにでかけた人物もいる。つまりは、愚民を戦争の恐怖であおり、軍国化を支持させる策略に過ぎないのは明白だ。北朝鮮脅威報道すべて治安維持法・共謀罪隠し工作。侵略戦争に日本を引き込むため宗主国が押しつける法律なのだから、宗主国は躍起になって、北朝鮮との紛争をあおりたてている。


今日の日刊IWJガイドの一部を流用させていただこう。


 昨日、参議院議員会館で「ジャーナリスト・表現者による共謀罪法案(「テロ等準備罪」)に関する記者会見」が開かれ、IWJは中継に入りました。


 会見に臨んだのは、岸井成格氏、大谷昭宏氏、金平茂紀氏など、政権に批判的な「大御所」ジャーナリスト。さらにインターネットメディア・ポリタス編集長の津田大介氏、差別や貧困問題に取り組む安田浩一氏も出席しました。意外(?)なところでは、小林よしのり氏も参加しました。


 会見にはIWJ代表として岩上さんも参加し、「共謀罪の対象になるのは、メディアや表現活動に関係している人間だけではない。SNSをはじめ、一般の人の日常のコミュニケーションの自由が侵害される」と、共謀罪に対する危機感を表明しました。


 会見の模様は以下の記事に掲載しています。


※「共謀罪は自由な情報発信を殺す」――ジャーナリストら14人が共謀罪に反対する共同声明を発表!岩上安身「密告の横行で個人的な人間関係も破壊される」
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/375780




もう一つの紛争、シリアでのアサド攻撃も宗主国が中心になっておあっている。


今日のIWJ岩上氏による高橋和夫氏インタビューも必見。


【IWJ_YouTube Live】15:00~「岩上安身による放送大学教授 高橋和夫氏インタビュー」
YouTube視聴URL: https://www.youtube.com/user/IWJMovie/videos?shelf_id=4&view=2&sort=dd&live_view=501
ツイキャス視聴URL: http://twitcasting.tv/iwakamiyasumi
※岩上安身による放送大学教授 高橋和夫氏インタビューを中継します。