三橋貴明という経済評論家のコラムの一部を転載。
要するにユーロという制度は、通貨の裏付けである国家の経済的体力や規模が天と地ほども異なる国家群が同一の通貨を使うという無茶なシステムなのである。大雑把に言って、普通は一つの国の経済政策が失敗すれば、その国の貨幣価値が下がり、その通貨安によって貿易が黒字に転じるものだが、同じユーロを使っている限りはそういう自動調節が利かない。そこで、その国の赤字はどこまでも膨らんでいくのである。それがギリシアで起こり、スペイン、イタリア、フランスその他多くのEU諸国で起こっていることだ。
その一方、貨幣の強引な統一というこの矛盾を利用すればうまく投機ができるわけで、小さな国に投資をしてそこでバブルを起こし、程よいところでそのバブルを潰せば大儲けができる。どこの国のユーロだろうが、ユーロはユーロとして通用する貨幣だからだ。
いや、バブルなど無くても、弱小国家に対して貸付をするだけでいい。IMFなどが、たとえばギリシアに強引に貸し付けて作った債権を利子つきで強引に取り立てれば大儲けができることになる。国家が財政困難になればなるほど借金をするのだから、経済的に赤字の国が存在するのは国際金融家にとっては最高のことなのだ。ギリシアから取り立てたユーロもドイツのユーロもユーロに変わりはない。まあ、EUとはそのために作られたものだろう。もちろん、設立当初は一部の馬鹿な政治家には大欧州共栄圏の夢もあったのだろうが、それを背後で操った金融家はそれが最初からの狙いだったのではないか。
要するに、EUとは国際金融家のためのギャンブル場であったわけだ。そして、その負債を払うのはEU諸国の国民だ。
だから、スイスがEUに加盟しないのは当然であり、国際金融家の金庫であるスイスまでギャンブル場にするわけにはいかないからである。
(以下引用)
ユーロが抱える問題は、まだまだ上記にとどまらない。
『2010年12月31日 ブルームバーグルームバーグ「エストニア:11年からユーロ導入、旧ソ連圏から初-計17カ国に」
エストニアは2011年1月1日に、旧ソ連諸国として初めてユーロを導入する。ソブリン債危機が欧州を揺るがした影響でユーロ圏拡大は一時的に制限される見通しだ。
ラトビアとロシアに挟まれ、バルト海に面したエストニアは1日午前零時に同国通貨をユーロに切り替え、17カ国目のユーロ導入国となる。同国の国内総生産(GDP)は140億ユーロ(約1兆5230億円)で、ユーロ圏ではマルタに次ぎ2番目に経済規模が小さい。
欧州諸国が財政危機に取り組む中、今後数年でユーロ圏に加盟するのはエストニアが最後となる公算が大きい。次の加盟候補国であるリトアニアとラトビアは2014年の加盟を目指しているほか、他の東欧諸国は目標時期の設定を先送りした。(後略)』
個人的に「最後のユーロ加盟国」になると予想しているエストニアが、2011年1月1日からユーロを導入した。
エストニアの09年のGDPは140億ユーロで、ユーロ全体に占めるシェアは1%に満たない。それでもユーロ圏では「一票」を持ってしまうという点も、ユーロの歪みの一つである。
もっとも、それ以上にも危うく思えるのは、PIGS諸国の破綻により、投資先を失った欧州の経済大国(独仏英)の銀行が、短期的な収益を狙ってエストニアにユーロを大規模に流しこんでしまうのではないかという懸念だ。
ユーロ導入前まで「ケルトの虎」として、輸出を中心に経済成長を達成していたアイルランドは、まさにユーロ導入により経済モデルが様変わりしてしまった。
ユーロ導入後のアイルランドは、国内の銀行が低金利のユーロ建てで資金調達が可能になった。結果、アイルランドの銀行は独仏などの銀行から短期で融資を受け、不動産セクターに長期で投資するというモデルで成長していったのである。すなわち、不動産バブルを中心とした成長モデルだ。
アイルランドの不動産バブルは07年に崩壊したが、「外国の銀行」の資金により拡大したバブルの後始末に、「国民の金」が使われる羽目に陥った。何しろ、銀行の不良債権の規模が大きすぎ、政府が資金注入しようにも、やはり「外国からお金を借りる」ことなしでは不可能なのである。
アイルランドの2010年の財政赤字は、対GDP比で32%という途轍もない水準に達すると予想される。そのツケを「外国人へ」払わされるのは、もちろんアイルランド国民だ。アイルランドはユーロという縛りの中、経常収支黒字路線にもなかなか戻れず、国民から「ユーロを搾り取る」形で外国の銀行に債務を返済していくしかない。すなわち、緊縮財政で、国民からユーロを搾り取るのだ。
エストニアに話を戻すが、最新の同国の失業率は16.2%である。当たり前の話として、エストニア政府は「ユーロに加盟した、万歳!」などと言っている状況ではない。
失業率が高く、かつユーロ諸国全体から見ると、経済規模が非常に小さい。独仏などの銀行にとってみれば、これほどお金を投じやすい環境はないようにも思える。独仏の銀行がユーロ建ての対エストニア融資を(彼らにとってみれば)「少しだけ」実行に移せば、比較的容易に何らかの資産バブルが発生してしまうだろう。高失業率に悩むエストニア政府も、むしろそれを望むように思える。
エストニアの人口はわずかに134万人であるが、何しろ人口32万人のアイスランドでさえ、海外マネーに依存したバブルが発生した。欧州各国の銀行の当座の「しのぎ」としては、エストニアは充分な規模であろう。
「なあに。長いこともたせる必要はない。短期的にバブル起こして、当座をしのげればいい」
「そうだな。バブルが崩壊したら、エストニア政府に公的資金を注入させ、エストニア国民の負担にしてしまえばいいしな」
こんな会話が、ユーロ諸国の銀行で交わされていないことを祈らずにいられない。
要するにユーロという制度は、通貨の裏付けである国家の経済的体力や規模が天と地ほども異なる国家群が同一の通貨を使うという無茶なシステムなのである。大雑把に言って、普通は一つの国の経済政策が失敗すれば、その国の貨幣価値が下がり、その通貨安によって貿易が黒字に転じるものだが、同じユーロを使っている限りはそういう自動調節が利かない。そこで、その国の赤字はどこまでも膨らんでいくのである。それがギリシアで起こり、スペイン、イタリア、フランスその他多くのEU諸国で起こっていることだ。
その一方、貨幣の強引な統一というこの矛盾を利用すればうまく投機ができるわけで、小さな国に投資をしてそこでバブルを起こし、程よいところでそのバブルを潰せば大儲けができる。どこの国のユーロだろうが、ユーロはユーロとして通用する貨幣だからだ。
いや、バブルなど無くても、弱小国家に対して貸付をするだけでいい。IMFなどが、たとえばギリシアに強引に貸し付けて作った債権を利子つきで強引に取り立てれば大儲けができることになる。国家が財政困難になればなるほど借金をするのだから、経済的に赤字の国が存在するのは国際金融家にとっては最高のことなのだ。ギリシアから取り立てたユーロもドイツのユーロもユーロに変わりはない。まあ、EUとはそのために作られたものだろう。もちろん、設立当初は一部の馬鹿な政治家には大欧州共栄圏の夢もあったのだろうが、それを背後で操った金融家はそれが最初からの狙いだったのではないか。
要するに、EUとは国際金融家のためのギャンブル場であったわけだ。そして、その負債を払うのはEU諸国の国民だ。
だから、スイスがEUに加盟しないのは当然であり、国際金融家の金庫であるスイスまでギャンブル場にするわけにはいかないからである。
(以下引用)
ユーロが抱える問題は、まだまだ上記にとどまらない。
『2010年12月31日 ブルームバーグルームバーグ「エストニア:11年からユーロ導入、旧ソ連圏から初-計17カ国に」
エストニアは2011年1月1日に、旧ソ連諸国として初めてユーロを導入する。ソブリン債危機が欧州を揺るがした影響でユーロ圏拡大は一時的に制限される見通しだ。
ラトビアとロシアに挟まれ、バルト海に面したエストニアは1日午前零時に同国通貨をユーロに切り替え、17カ国目のユーロ導入国となる。同国の国内総生産(GDP)は140億ユーロ(約1兆5230億円)で、ユーロ圏ではマルタに次ぎ2番目に経済規模が小さい。
欧州諸国が財政危機に取り組む中、今後数年でユーロ圏に加盟するのはエストニアが最後となる公算が大きい。次の加盟候補国であるリトアニアとラトビアは2014年の加盟を目指しているほか、他の東欧諸国は目標時期の設定を先送りした。(後略)』
個人的に「最後のユーロ加盟国」になると予想しているエストニアが、2011年1月1日からユーロを導入した。
エストニアの09年のGDPは140億ユーロで、ユーロ全体に占めるシェアは1%に満たない。それでもユーロ圏では「一票」を持ってしまうという点も、ユーロの歪みの一つである。
もっとも、それ以上にも危うく思えるのは、PIGS諸国の破綻により、投資先を失った欧州の経済大国(独仏英)の銀行が、短期的な収益を狙ってエストニアにユーロを大規模に流しこんでしまうのではないかという懸念だ。
ユーロ導入前まで「ケルトの虎」として、輸出を中心に経済成長を達成していたアイルランドは、まさにユーロ導入により経済モデルが様変わりしてしまった。
ユーロ導入後のアイルランドは、国内の銀行が低金利のユーロ建てで資金調達が可能になった。結果、アイルランドの銀行は独仏などの銀行から短期で融資を受け、不動産セクターに長期で投資するというモデルで成長していったのである。すなわち、不動産バブルを中心とした成長モデルだ。
アイルランドの不動産バブルは07年に崩壊したが、「外国の銀行」の資金により拡大したバブルの後始末に、「国民の金」が使われる羽目に陥った。何しろ、銀行の不良債権の規模が大きすぎ、政府が資金注入しようにも、やはり「外国からお金を借りる」ことなしでは不可能なのである。
アイルランドの2010年の財政赤字は、対GDP比で32%という途轍もない水準に達すると予想される。そのツケを「外国人へ」払わされるのは、もちろんアイルランド国民だ。アイルランドはユーロという縛りの中、経常収支黒字路線にもなかなか戻れず、国民から「ユーロを搾り取る」形で外国の銀行に債務を返済していくしかない。すなわち、緊縮財政で、国民からユーロを搾り取るのだ。
エストニアに話を戻すが、最新の同国の失業率は16.2%である。当たり前の話として、エストニア政府は「ユーロに加盟した、万歳!」などと言っている状況ではない。
失業率が高く、かつユーロ諸国全体から見ると、経済規模が非常に小さい。独仏などの銀行にとってみれば、これほどお金を投じやすい環境はないようにも思える。独仏の銀行がユーロ建ての対エストニア融資を(彼らにとってみれば)「少しだけ」実行に移せば、比較的容易に何らかの資産バブルが発生してしまうだろう。高失業率に悩むエストニア政府も、むしろそれを望むように思える。
エストニアの人口はわずかに134万人であるが、何しろ人口32万人のアイスランドでさえ、海外マネーに依存したバブルが発生した。欧州各国の銀行の当座の「しのぎ」としては、エストニアは充分な規模であろう。
「なあに。長いこともたせる必要はない。短期的にバブル起こして、当座をしのげればいい」
「そうだな。バブルが崩壊したら、エストニア政府に公的資金を注入させ、エストニア国民の負担にしてしまえばいいしな」
こんな会話が、ユーロ諸国の銀行で交わされていないことを祈らずにいられない。
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