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徽宗皇帝のブログ

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今の時代、「人民のため」になるのは左翼か右翼か
私はフランスとイギリスで「極右」政党が勝たなかったことを残念に思うが、私も「世に倦む日々」氏と同じく「反マルキシズム」の社会主義者である。
今、社会主義者が戦うべき相手は、「グローバリズム」であり、グローバリストだろう。彼らが伸長すれば、その国家は貧困化し、不幸になるのである。そういう意味では、「極右」こそが「人民のための政治」を考えており、左翼政党は、グローバリズムに加担する「反人民政党」となっているわけだから、社会主義者の私が「極右」政党を応援し、左翼政党を批判するのである。
まあ、「左翼・右翼」という言葉自体が無意味化したのが、現代だろう。

(以下「世に倦む日々」から転載)

英国とフランスの議会選挙で左派が勝利 - 経済苦に喘ぐ無産民衆の選択と潮流

世に倦む日日
2024年7月13日 16:15

7/4 に行われた英国の総選挙で労働党が大勝し、14年ぶりの政権交代を実現した。また、その3日後の 7/7 に行われたフランス国民議会選挙の2回目投票で、事前の予想を覆し、メランション率いる左派連合(新人民戦線)が第一党に躍り出た。大番狂わせの快挙を果たした。日本のマスコミ報道やネット記事では、この二つの選挙結果について正しく意義を認める議論はなく、(現在の支配的思想である)右翼ネオリベの視角からの矮小化とミスリードの言説ばかりが溢れている。専門家を名乗る者たちによる佞悪な洗脳工作ばかりでうんざりする。まず、英国の総選挙から見ていこう。最も注目するべきは、首相就任後に官邸前で行った最初の演説で「労働者階級の出身であることを政権運営に生かす」と述べた点である。世界が注目する第一声で、きわめて印象的で象徴的な言葉を残した。




BBCの記事によれば、5/27 の演説で「工場労働者の父と看護師の母の家庭で育った」と自己紹介し、「英国を再び働く者に仕える国にする」と公約したとある。また、BBC記者の「自分を社会主義者と呼ぶか」という質問に対して、「自分を社会主義者と呼ぶ」と即答している。無論、この場合のスターマーの社会主義は、英国伝統のフェビアン協会の社会主義であって、マルクス主義のそれではない。しかし、スターマーは自らを socialist と定義し、自らの存在基盤を working class にあると明言した。この政治的事実の意味は小さくないだろう。新自由主義一色に染まった世界で、特に株価高騰に沸き返って誰もが資本主義者と化してしまった日本で、スターマーの言葉は重く響く。選挙は、英国において価値観の転換が図られた一幕だった。そう総括できる。英国民は"社会主義者"に政権を委ねたのだ。




日本の御用専門家たちは、この選挙結果の「解説」において、必ず、スターマーが左派の政策を修正し払拭したから支持を得たのだという一句を挿入し、かく強調してスターマーを性格づけ、日本の読者に「安心理論」の薬を飲ませる。例外なくその言説工作をしている。たしかに2019年に労働党党首に就任後、鉄道や郵便や水道事業の再国有化の政策を撤回し、脱コービンの右寄り路線を採択して今日に至っている事実はある。が、もともとコービン指導下で「影の内閣」入りした政治家であり、ニューレイバーではなくオールドレイバーであって、コービンに抜擢された経歴の持ち主だ。5/27 の発言も、就任演説の言葉も、その点を意識的にアピールしており、左派向けのアイデンティティ宣言と言えるだろう。スターマーが蝙蝠男のリアリストであったとしても、スターマーを左に引っ張る国民の磁力がある。




英国総選挙の行方が労働党勝利でほぼ見えた時期、6月下旬、英国では病院の受診まで3か月以上かかっている問題をNHKが伝えていた。コロナ禍の時期、英国のNHS(国民保険サービス)が盛んに紹介され、この制度が万全だから英国民は安心だと賛美され喧伝されていたが、そのNHSが人員不足と資金不足で危機に瀕しているらしい。王立救急医学会によると、昨年は150万人以上の患者が12時間以上待たされ、そのうち65%が入院待ちの患者だった。がんの早期発見・早期治療ができなくなっている。ニッセイ基礎研の選挙前の記事では、世論調査(IPSOS)の「英国が今日直面する問題」で、「NHS/病院/健康管理」が第1位の関心事項に上がっている。長く続いた保守党政権下でネオリベ緊縮政策が徹底され、医療予算の抑制が図られた影響だ。サッチャリズムの「小さな政府」の悪弊の帰結だろう。




日本の御用専門家が悪魔視して罵倒するコービンだが、実際には非常に人気のあるカリスマ的闘士だった。ブレアらニューレイバーの「第三の道」を清算し、英労働党を本来の左派政党に復活させたのはコービンである。2015年の出来事だった。ちょうどこの時期、アメリカではサンダースが登場して旋風を起こし、民主党の大統領予備選に立って世界の注目を集めていて、英国と米国で同じ政治的気運と潮流が盛り上がっていた。新自由主義に反対する左派の、社会主義の方向性であり、現状の格差社会を根底から改造しようとする動きである。当時のコービン労働党は世論調査の支持率で保守党を上回っていて、コービンによる政権交代が現実味を帯びていた。コービンが挫折したのは、一にも二にも、あのEU離脱問題の突然の発生に因る。キャメロンが保身のために国民投票の博打に出る愚を犯さなければ、コービンの挫折はなかった。




コービン自身はもともとEU懐疑派の人である。けれども、労働党の支持者は、特にロンドンなど都市部の支持者は圧倒的にEU残留派が多く、一方、移民問題に悩む地方にはEU離脱派の支持者がいて、党内は二つに割れていた。私はコービンとほとんど同じ政治思想の立場なので、コービンに深く同情する。英労働党としてEU離脱に賛成という方針を立てるのはどう考えても無理な判断だ。コービン労働党はこの問題に足をすくわれ、勢いを失って停頓し、代わって離脱強硬派の保守党ジョンソンが台頭、世論の主導権を握って2019年の総選挙に勝利する。この選挙で労働党は惨敗してコービンは失脚した。コービンは自らの政策を争点にできぬまま舞台から去った。アメリカでトランプが出現し、米中対立が露骨になり、G7全体が右傾化して、コービンには不運な局面となった。




フランスに目を転じよう。7/7 の国民議会選挙の第2回投票結果は劇的だった。これほどドラマティックな政治は最近目にする機会がなく、逆転劇の快挙に興奮を覚えさせられた。メランションと左派連合を勝利させたフランス国民に祝福と拍手を送りたい。一週間前の第1回投票結果(6/30)が出た後、毎日のように第2回投票を予想する情勢報道が出て、そのどれもが極右・国民連合が第1党になると告げていた。超短期決戦。しかし、そのマスコミ報道が出るたびに、それを跳ね返すようにパリで巨大デモが開催され、Xの動画拡散で反極右・反マクロンの民意のエネルギーが増幅され、7/7 の投票日に突入して行った。パリ民衆はマスコミが撒いて固める既成事実に屈服せず、ダイナミックでパワフルな政治運動を現出させた。フランスらしい政治であり、パリ民衆の革命的伝統を彷彿させる絵だ。




もともとフランスは左翼(gauche)の国であり、社会主義の生誕の母国である。左翼という言葉そのものが、フランス革命時の立法議会において急進派(ジャコバン派)が議場左側の議席に陣取った史実に由来し、フランス人が作った大いなる近代政治史から派生したものだ。赤旗もまた、フランス革命時に革命派が自らの標章として採用した歴史を起源とする。サンシモン、フーリエ、プルードン、、。フランス人の思考と行動のネイティブなパターンとして資本主義批判があり、市民革命の原点への確信と依拠がある。脱線して、私見ながら、マルクスという思想家もフランスの社会主義者の一人として位置づけて不具合なく、若い時代を描いた映画『マルクス・エンゲルス』を見るとその感を強くする。ドイツ語の台詞よりフランス語の台詞の方が分量が多く、家の中でイェニーとフランス語で会話していた。




そのフランスが、残念ながらこの20-30年、左派と社会主義が全く奮わず、後退に後退を続け、日本と同じく高齢化と少数勢力化の道を辿っていて、嘗ての存在感と影響力をすっかり失っていた。本来、ネオリベラリズムなりグローバリズムに対する対抗軸は、社会主義の母国であるフランスの主導で提示され構築されるべきであって、フランス人こそがその任務と使命を期待される存在だ。ところが、フランスから人が出ず、社会党は右傾化し官僚化し支配層化して軽薄になる一方で、米英に追従して欧州を新自由主義に染める役割ばかり担ってきた。ピケティなどお茶濁しの妥協論にすぎない。サルコジだのマクロンだの噴飯もいいところで、そもそも、世界経済フォーラムの本拠をフランスのお膝元であるジュネーブに置かせて平然としていることが異常で、フランス人にとって恥を知るべき事態だろう。




フランスの左翼がだらしなく衰退し自滅したがために、マリーヌ・ルペンの「脱悪魔化」が成功したのである。ネオリベ政策によって窮乏化し、希望を失った都市弱者や地方農民層が、救済を託する勢力として支持して行ったのだ。ルペンの経済政策は、標語上・表面上は左翼政党のものと違わない。反グローバリズムの性格が顕著で、フランス国内の第一次産業従事者を保護する主張を強く謳っている。実際に政権を取った後、ルペンが公約を実行するかどうかは不明だが、社会党が支配層と一体化しネオリベ化する中で、従来の社会党支持者だった経済的弱者は、極右に期待を抱かざるを得ない状況になったのだろう。フランス社会党と国民連合との関係性は、ネオリベエリート化したアメリカの民主党とブルーカラーが倒錯的に支持するトランプ共和党との関係性を想起させ、いわば相似形のモデルを示している。




何が今回のフランス政治の奇跡を媒介したのか。無論、フランス人口の1割を占める移民の深刻な危機感が大きく、その象徴としてエムバペの発言の効果があるけれど、やはり、リーダーのメランションのカリスマ性を評価するべきではないか。言葉がいい。フランスの庶民の利害と訴えを率直に代弁していて、物価高と高負担で苦しむ民衆の心に染みとおっている。サンダースの演説がアメリカの人々を揺り動かしたときのようだ。私は、英国もフランスも韓国も、左派が勝利した要因は基本的に同じだと思う。経済問題だ。インフレによる資本の収奪の矛盾であり、貧富の格差の急拡大である。インフレ全開下で資本側は貪婪に利益を貪り続け、株価を青天井に上昇させている。富裕層は資産を激増させ、愉悦と享楽と驕慢の極にある。一方、無産の庶民は購入し消費できるものが減り、生活切り詰めに追われるばかりだ。




新自由主義が推進され、大多数が貧しくなり、その大多数がさらに生活水準の低下を強制(経済内強制)されれば、普通は、マジョリティたる無産層は左翼政党に票を入れ、政治革新と政策転換を実現させようと動くだろう。御用学者たちの「解説」は、左派の勢力伸長によってフランス政府がバラ撒きに傾き、財政が悪化してEU経済に悪影響を及ぼすというネガティブな結論で終始している。どれもこれもマクロン与党連合の観点からの「分析」ばかりで、マクロンとEU(フォンデアライエン)のネオリベ路線を正義で標準とする論調ばかりだ。バラ撒きという悪意の政治用語は、新自由主義者が福祉重視の左派を叩くために開発し定着させた言説装置だった。それに対抗する左派の側の言葉が「緊縮」であり、真実を言えば、「小さな政府」によって社会保障予算が削られすぎた背景がある。御用学者の説明は不当で無意味だ。


フランスが市民革命と社会主義の本領を取り戻し、自己のオリジナルな主体性を再自覚し、極限まで至った資本主義(新自由主義)を克服する21世紀の新地平を切り拓くことを希う。




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