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徽宗皇帝のブログ

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何に熱中しようと、頭は涼しく

小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」から転載。

小田嶋隆は、私がもっとも尊敬する人物の一人で、その頭の良さと判断の的確さ、鋭い表現力、良識は、表マスコミの人間としては最高ではないか、と思っている。その彼が例の週刊朝日の「(気温よ)上がれ、上がれ!」記事についてのコメントを書いている。同じ記事を私も批評したばかりなので面白く読んだ。(彼のコラムはいつも面白いのだが)

趣旨は私の駄文とそう違ってはいないと思う。だが、ちゃんと

 

「原発か熱中症か」
 みたいな択一解を迫るみたいな論陣が張られたら要注意だ。
 うっかり答える前に、まずアタマを冷やさないといけない。

と、オチを付けているのはさすがである。

もっとも、クーラーをつけてアタマを冷やすのもいいが、全国の人間がいっせいにそれをやると電力供給はいっぺんでパンクである。ハインラインの「大当たりの日」というSF短編小説みたいな話だが、猛暑とクーラー使用に関しては、それは容易に現実となり、「だから原発は必要だったのだ」という方向に話が進みかねないのである。

 

 

 

(以下引用)

 

 

 ところで、週刊朝日の今週号が面白い記事を載せている。
 経産省幹部と東京電力の幹部との間でやりとりされたメールの中で、彼らが原発の再稼働への世論の理解を促すために、この夏の猛暑がより苛酷であることを期待する旨を語り合っていたというのだ。

 以下、一部を引用してみる。

『〈今年の夏、気温40度くらいまで猛暑になれば、議会、世論ともに再稼働容認になるだろうとか、つい期待して、毎朝、天気予報を見ています。あがれ、あがれと新聞の天気図に手を合わせていると、ビール飲みながら、笑わせている上司もおります。情けないですが、今のうちには、猛暑頼み、すがるしかありません。株じゃないですが、あがれ、あがれ!(東電幹部)』(こちら)

 思うに、これは、「オッサンのジョーク」で、必ずしも東電の統一見解ではない。
 だから、どういう経緯で入手したのかはわからないが、個人のメールの言葉尻をあげつらって、鬼の首をとったように「驚愕!」などと言ってみせる記者の態度には、あまり賛成できない。

が、記事をよくよく見ると、当該のメールは、CC付き(複数の宛先に同時配信されるもの)で配信されたことになっている。とすると、どこに漏れるかわからない設定のメールで、こんな酒場の内緒話みたいなお話をしていた彼らの認識の甘さには、やはり汗(冷たい方)が流れてしまう。

 私は、東電幹部や経産省の人々が、原発再稼働への道筋を平らかならしめるために、猛暑の到来を祈念しているとまでは思っていない。

 でも、猛暑が来たら来たらで、それを利用して電力需要の逼迫を訴えようというぐらいの思惑は、抱いているはずだと思っている。

 7月にはいって以来、朝昼の時間帯のNHKの総合放送は、番組の変わり目毎に、エアコンの稼働を促す啓蒙情報を流している。
 このいささか過剰に思える冷房喚起アナウンスが、そのまま原発再稼働への布石だと言うつもりはない。
 ただ、この暑さが、再稼働にとってプラスに作用することは間違いないはずだ。

 われわれは、エアコンを動かすために、暑さとは別の言い訳(仕事、健康、赤ん坊のアセモなどなど)を並べ立てないとスイッチを入れられない気の弱い人たちだ。
 とすれば、原発を再稼働させることの言い訳に、そのエアコン(ないしは熱中症で死者が出ていること)が使われることは、当然の流れと言って良い。

「原発か熱中症か」
 みたいな択一解を迫るみたいな論陣が張られたら要注意だ。
 うっかり答える前に、まずアタマを冷やさないといけない。

 

(文・イラスト/小田嶋 隆)

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