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徽宗皇帝のブログ

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冷泉彰彦の「日本復興案」
前に予告した冷泉彰彦の「日本復興計画」を転載する。
私はこの復興計画に批判的なのだが、その理由は、ここには理念や倫理がまったく感じられないからである。いろいろと細部の案は出しており、お役所的な意味で復興案の「叩き台」にはなるだろうが、日本の倫理的再生が無いと、復興にも何の意味も無くなるだろう。
下記の記事を読んで、読者一人一人が「俺の、私の、日本復興計画」を考えてはいかがだろうか。


(以下引用)



 以下「大震災+失われた20年からの復興」を目指す場合の問題提起を箇条書きします。緊急事態の下での走り書きですから、空回りしている部分もあるかもしれません。ですが、個々の論点についての発展と修正の中から、幅広いアイディアが出てくることを期待したいと思います。

(前提その1)
 2031年、被災20周年をターゲットとして、そこまでの目標成長率から必要な資金総額を逆算。絶対にゼロイールドにしない。

(前提その2)
 復興が震災前の復元ではなく、より安全性の追求、より省エネ、より快適性、より成長性、より脱産業社会化、より高付加価値になるように。必ず成長性という意味での発展になるように。一つ一つの投資がハコモノに凝固するのではなく、必ず永続性的なリターンがあるように。投資の膨らむ部分は、開発したテクノロジーを全国で、そして外需で回収。

(メインコンセプト1)
 今回の災害の最大の教訓は一極集中の脆弱性。全ての首都機能が東京に集中していたこと、その電源が過度に福島に集中していたことが問題。あらゆる機能をいかに「分散」してゆくか。「分散」がリスク分散だけでなく生産性向上になるように。

(メインコンセプト2)
 一つの組織、一つのシステム、一人の人間が、バックアップを内包した「ハイブリッド」になることで、リスクへの脆弱性を克服し、同時に生産性向上になるように。例えばPHV(プラグインハイブリッド)車が良い例。東北の復興に当たって、EV社会インフラは重要な鍵だが、電力危機の教訓を生かすならPHVがベター。ガソリンでも、コンセントの電源でも走るし、ブレーキをかければ発電して高効率を追求。これが復興にあたって追求する文明のひとつのモデルでは?

(首都機能の分散)
 政治の中心は交通の便の良い内陸へ。官僚機構は意思決定のサポート部門は政治に近接させるが、実務部門の首都機能は分散。地方が首都機能の分散を受け入れつつ、地方の伝統を更に活性化。

(大学と産業の分散)
 東大などを解体して、各部門を地方移転。例えばバイオを仙台に持っていったら、バイオ産業も宮城に持って行く。一流の音大が盛岡に行けば、小岩井や遠野で音楽祭が行われて世界から人が来るように。各国言語各国文化の教育もバラして分散し、その地域で対象国との交流を拡大してビジネスを発展させる。自動車などの裾野産業はフルセットで西日本と中部と東北に分散。機械工学や先端技術の最高レベルの教育機関もそれに近接させる。金融センターは内陸移転し、高度教育機関も。キー局は東京2、大阪2でもいいのでは?映画は北海道、京都、九州。アニメは東北。出版、広告や情報も東西に分散。

(情報インフラの分散)
 金融機関も情報通信も行政も主要なサーバは国内複数+海外に。基幹回線のダブル化。携帯基地局のハイブリッド化(電力+太陽+燃料電池+バッテリー)。情報通信産業も北海道、四国、九州、沖縄に分散。

(ハブ型組織から、ネットワーク型に)
 東京との結びつきを強化することが復興ではない。盛岡と秋田が結びつくことで、福島と宇都宮が結びつくことで、また新幹線で金沢・富山と長野が結びつくことで、そこに首都的な、その分野で日本の中心となる技術+文化+労働マーケットの生まれる仕掛け。

(新産業)
 中型旅客機製造ビジネス(全席エアバッグ+高度な消火システム付き)、世界標準のコンピュータOS、より高機能化したスマートフォン、タブレットでない第四のデバイス、圧縮アルゴリズム、情報セキュリティ技術、治験環境を含めた新薬開発、アメリカ標準より透明性の高い金融工学、食の安全の世界標準認証ビジネス、アニメに加えて実写での映画産業の国際化+ビッグビジネス化、遺伝子組換え植物の安全性認証ビジネス、日本発の全世界ベースのホテルサービス+日本食ビジネス。

(原発長期方針)
 今、福島第一の1号機から4号機を廃炉とするにしても(5号機、6号機の廃炉は東北復興の足を引っ張る危険から今判断すべきでない)、使用済みあるいは使用中断燃料について50年後に安全な再処理を開始するためには巨大な中間貯蔵施設が必要。ならば、今回の事故を契機に、中間貯蔵施設の建設と再処理工場の更なる安全性強化を行うことは、原発推進論、原発廃止論の双方からも不可避。まずこの議論を進め、電力ピーク対策、代替エネルギーなどを積算し、目標成長率と突き合わせることから原発稼働継続の規模を策定。そこで合意がされた場合には第三世代炉に順次置換。

(二酸化炭素排出削減論議)
 この点は、今回の震災ならびに原発事故を受けても、一切の先送りはしない。

(第一次産業)
 農業の高付加価値化、大規模化。震災でもTPPは待ってくれない。漁業の中規模企業化と再建に当たっての安定した資金供給。港湾+物流+食文化+観光開発を意識した水産資源開発インフラの高効率な整備。林業の再活性化。

(人間や組織の機能の多重化)
 家庭人、企業人、地域社会の一員の三重性の追求。文系人間に理数の素養。理系人間に人文の素養。専門職に発信スキルを。ジェネラリストに技術リテラシーを。リーダー、中間リーダーへの情報処理能力+発信能力の水準をアップ。NGOに経済の知識を。営利企業に公益性を。

(トランスポーテーション)
 航空路、鉄道、道路のハイブリッド相乗効果の再設計。新幹線と在来線、高速道と一般国道、ミニハブ空港と鉄道アクセス、港湾と物流アクセス、貨物と人の移動、など「バックアップがあり、それが平時も高効率になっている」復興計画に。青函対策も含めて貨物8両、乗客8両のハイブリッド新幹線車両はどうか?経済成長のリターンを絶対に実現するという前提で、新幹線の札幌延伸、長崎フル規格なども実現。

(エネルギー)
 コミュニティーが止むなく放棄した沿岸地域が出たら、そこを大規模風力発電所に。東北を世界でも最も先進的な、エネルギー多角化生産のモデル地域に。東北電力は、白洲次郎の精神に立ち返って他地域をエネルギー革新で牽引。

(省エネルギー)
 東北の住宅は、LED照明、高度な気密性(一酸化炭素中毒防止システム付き)、各部屋上下2箇所の温度センサー設置などで冷暖房の効率アップ、ソーラーパネルの屋根など、高エネルギー効率の設計で再建。前述の通り、東北をインフラを含めたPHV車の普及モデル地域に。

(防災体制)
 全国全市町村が異なった地域で、相互に「姉妹都市」協定を結び、「全人口の避難先」を用意。ボランティアも、医療体制も相互救援の体制に。衛星回線での安否確認システム+緊急地震速報+緊急津波速報個別伝達システムを緊急用バッテリーと共に、全ての携帯電話にビルトイン。

(ライフスタイル)
 自然の中に最先端がある。大都市に伝統文化とコミュニティの息吹がある。ダブル三重言語国家、つまり「日本語+英語+アジアのもう一ヶ国語」「自分の地方方言+いわゆる標準語+他地域の方言」。沿岸地域、超過疎地、放射性物質汚染地域など物理的に復興の不可能な地域は「移転しつつコミュニティーを維持する」工夫を。地域ごとに残る男尊女卑や男女分業などのカルチャーは徹底的に克服して、分散イコール出生率向上に結びつける。

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