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徽宗皇帝のブログ

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効率主義の陥穽
あいば達也の「世相を斬る」から転載。
経営者というものは無駄が嫌いである。だからたとえばトヨタは「カンバン方式」、つまり本社には在庫を一切置かず、「必要な物を必要な時に」納入することを下請会社に要求し、その犠牲の上で無駄の無い合理的経営をし、利益を上げてきた。その他の企業も無駄の無い合理的経営を理想としてきたのは同様である。だが、下記記事にあるように無駄がないということは、滅多に起こらない事故への恒常的支出をしないという危険性をも持っているのである。その事故が起こったらすべてアウトである。
会社の危機に会社を救えるのは、その会社のはみ出し者であるという。これは日産の会社再建の時の話などを見れば、定理としてよいだろう。その理屈は自分で考えればわかるだろうから、今は説明しない。
コストを考えれば、物流回路を直列にして一本線にするのが一番安上がりだ。しかし、並列回路にしないと、いざという時に物流はストップする。車のハンドルにも遊びが無いと、操縦が非常に危険なものになる。
今回の日本の混乱は、そうした効率至上主義の欠陥をも暴露したものだという、あいば氏の指摘は非常に重要なものだと思う。
だが、文中の「合理主義」は、「効率主義」と言うべきだろう。それが本物の合理主義だとは私には思えないからである。
ある車に欠陥が見つかり、販売を中止するかどうかの決断を迫られた自動車メーカーがあった。会社経営陣の判断は、発売を中止しないというものだった。この欠陥で事故が起こり、訴訟が起こされた場合の費用よりも販売を中止した場合のコストが高いという理由によるものだ。この判断には、その事故で失われる人命への考慮は無い。こうした思考はただのコスト主義であり、拝金主義という現代の病の現れにすぎない。


(以下引用)



今回の原発事故は天災というより、市場原理主義に徹した合理性の追求の結果だと思わずにはいられない。東電と云う電力独占企業が新潟と福島県、中越地方?と東北地方に原発を建設し発電をし、東京中心に送電していた。この事自体、筆者は東京の人間として福島の人々に申し訳ない気分である。その気分を棚に上げるわけではないが、東京電力と云う独占企業であるにも拘わらず、彼等が徹底した無駄排除、合理主義に徹した結果、二重三重にすべきリスク回避の建設理念やランニングコスト削減精神が命取りになった現実を見ることになった。

これは市場原理主義、合理主義の負の遺産だと云う事肝に銘ずるべきである。つまり合理主義のカンバン方式(ジャストインタイム生産システム)の脆弱性を見せつけられた思いである。 実は日本の雇用が世界で一番自慢出来ていたのは「終身雇用」「年功序列」の二つだ。

勿論市場原理主義から批判させれば、重大な欠点雇用方式である。しかし、それによって生まれる企業へのロイヤリティーや経営の懐の深さがイザと云う時には糊代として有効に働くシステムは、案外世界一のシステムだったのかもしれない。経済学者の多くは笑うだろうが、糊代のない経営方針は怖くて見ていられない。

つまり、日々切迫経営をしているのだから、市場原理に基づいたシステムは、今回のようなアンビリーバブルな事象が起きると脆くも壊れる。被災地であれ、都会のスーパー、コンビニにであれ、ポスシステムでキチキチの在庫管理ジャストインタイムをしているから、プログラムと異なる購買現象が起きると、一発でパンクする。被災地への物流体制もジャストインタイムシステムの管理体制とトラック運転手の過酷労働に支えられた、薄っぺらな経営理念に裏づけられていることが証明された。このシステムが今後も主流である限り、イザと云う出来事が起きるたびに、同様の人災的問題を惹き起こすのだろう。

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