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徽宗皇帝のブログ

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唾棄すべき夢商人ども
 「晴耕雨読」から今野晴貴氏の文章の一部を転載。


「だが、サービス業の店長に「グローバルに思考しろ」と要求したり、居酒屋の店員に「夢を持て」というのは、明らかに不合理。」


という一文に感心した。
こういう、当たり前すぎて(大き過ぎて)見えないもの(ポーの「盗まれた手紙」参照)に気づける人間を私は尊敬する。一流の哲学者や科学者も、そういう人間だろう。たぶん、単に馬車馬的努力で偉大な発見や考察をしたわけではない、と思う。
私は前々から「夢商人」、すなわち他人(特に若者や子供)に「夢を持て」と言うことで他人に無駄な努力をさせ、その一方で自分はそれで金儲けをしている人間を批判してきたのだが、ワタミもそういう夢商人(夢企業)である。
夢を持つことで異常な努力をし、それが偉大な業績につながることは稀にはあるだろう。だが、その一方、無理な夢のために一生を台無しにした人間はその数万倍もいるのである。いや、ほとんどの若者は現実についての正しいパースペクティブなど無いから、非現実的な夢のために無駄な時間を膨大に費やすのが常である。そもそも、「毎日を平和で幸福に暮らす」という程度の生活で、なぜ満足できないのか。
自分の手に及ばないものはあきらめるという当たり前のことが、まるで悪いことであるかのように言われるのが、「夢商人」の世界である。
偏差値30台の学生が東大合格を目指して努力する、馬鹿馬鹿しい姿に、「夢に向かって努力する姿は美しい」とおだて、励ます「教育アドバイザー」や予備校教師などがいるが、まともな教師ならば「まあ、好きなようにしろ。ただし、結果は自己責任だよ」程度で済ますだろう。もっとまともな教師なら「お前の成績なら、大学など行かんで、就職しろ。社会で生きるにはべつに学力は関係ない。学歴は東大くらいしか意味はないが、お前が東大に入れる確率はほぼゼロだ。「ドラゴン桜」みたいなヨタ話を信じて1年間を無駄にするんじゃない。人間、いつ死ぬかも分からんのに、無駄な受験勉強でその貴重な1年を使うくらいなら、毎日遊び暮らすほうがまだマシだぞ」と言うだろう。

居酒屋の店員が持つべき「夢」とは何だろうか。ユニクロの店員が持つべき「グローバル性」とは何だろうか。


言うまでもなく、そんなものはただの口実である。給与以外の幻想的な「夢」のために従業員に滅私奉公をさせ、その努力の成果と給与との差額を最大にすることで企業が儲ける、それだけのことだ。




(以下引用)


ブラック企業の精神改造は、何も「お客様への愛情」というような、感情労働の類だけではない。

そうではなくて、「グローバル人材でなければ必要ない」というように、「このままでいること」の否定なのだ。

人間は組織の中で否定され続けると、よりどころを失い、平静でいられなくなる。

「自己否定」し続けることは、常人には不可能だ。

もちろん、合理的な範囲での進歩あるだろう。

だが、サービス業の店長に「グローバルに思考しろ」と要求したり、居酒屋の店員に「夢を持て」というのは、明らかに不合理。

「自己否定の常態化」は、自尊感情と冷静さを奪い、精神の破壊と思考停止を生む

だから、ブラック企業の問題はただ「サービス業」だから生じる問題なのではない。

「自己否定を永続化」させることで、常に会社に対して従属的なマインドにさせる。

努力の基準は「グローバル」とか「夢」とか無限のもの。

だから、どこまで行っても自己否定は続く。

残業も、過重労働も無限に拡大していく

主体の永続する破壊。

破壊と従属的再構築。

これを繰り返すこと。

どこにも到達点などない。

何度も、何度も破壊する。

固着を許さない。

安定、満足も、許されない。

永遠の選別と、競争の世界。

とどまることは許されない。

もっとも犯罪的な行為は「安定すること」「普通の暮らしを望むこと」。







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